阪急が全駅でホーム柵設置を進める方針を打ち出しました。ただ、阪急の駅にはホーム幅が極めて狭く、ホーム柵設置が困難なところも。どう対応するのでしょうか。

阪急有数の「超狭隘ホーム」の2駅

阪急は2023年4月から、運賃に「鉄道駅バリアフリー料金」を上乗せし、その料金収入で全駅にホーム柵を設置すると発表しています。

そのなかで、阪急自身も「課題が多く最も整備が困難な駅」と位置付けている2駅があります。ホームが極端に狭い、神戸線春日野道駅、および神戸線宝塚線中津駅です。

春日野道駅は1936(昭和11)年に開業。国鉄と並行する高架上にあって、高架外へホームを張り出すのが困難だったことから、狭い島式ホームとして開業し、今に至ります。中津駅も同様で、神戸線宝塚線京都線の3路線が並行し空きスペースがほとんどないことから狭隘な島式ホームとなっており、京都線に至ってはホーム自体が無く通過扱いです。

中津駅は両側のりばの黄色い点字ブロックと点字ブロックの間が、そのブロック1枚分もありません。春日野道駅のホーム先端では、点字ブロックが1本しか引かれておらず、「黄色いブロックの内側」が存在しない状態でした。

工夫と発想で「車いすも利用できる」狭隘ホーム駅に

そんな春日野道駅も、バリアフリー化工事はすでに大詰め。今年度中に完了見込みとなっています。「整備困難」な狭さをどう克服したのでしょうか。

2023年1月にホームへ降り立つと、すでに両側の先端部にホーム柵取りつけ位置が示され、設置準備万端となっていました。またホーム床面もリニューアルされており、印象は「意外と広いな」というものでした。その理由は、ホーム中央にあった安全柵やベンチが撤去され、歩行可能面積が大幅に増えたからです。

とはいえ中央部に並ぶホーム屋根の支柱はどうしようもなく、支柱とホーム柵の間を車いすが通り抜けるのは困難そうです。

それに対する課題克服は逆転の発想でした。もともと何もなかった神戸三宮側のホーム先端にエレベーターを新設し、同じく新設した屋根は「柱を門型に配置する」ことで、ホーム中央を車いすが通り抜けられるようにしています。ホーム端のエレベーターから、既存の屋根柱に当たるまでの神戸三宮側の1、2両分で乗降可能にし、バリアフリーの導線を確保しているのです。

こうして目立った大改修もなくバリアフリー化・ホーム柵設置を実現した春日野道駅。同じく方法が中津駅でも可能なのでしょうか。現時点で中津駅は、何もない神戸三宮側のホーム先端まで屋根があるため、一部を取り払って「門型屋根柱」に置き換えるのかもしれません。

阪急は「鉄道駅バリアフリー料金」発表時の取材に対し「春日野道駅で工事が進んでいることから、中津駅でも設置を進めていくこととしました」とし、ある程度の”手ごたえ”は感じているようでした。しかし具体的な設置方法については「検討を進めています」と話しました。

ちなみに一昔前は、もうひとつの「極狭ホームの春日野道駅」がありました。近隣にある阪神本線の地下駅で同じく島式ホームでしたが、中央の支柱をのぞけば歩ける幅は数十センチ程度。危険なため、電車が来るタイミングでコンコースからホームへ降りるのが一般的でした。2004年に相対式ホームに改修されましたが、今でも線路と線路のあいだに狭隘ホームの名残を見ることができます。

バリアフリー化工事前の阪急春日野道駅(乗りものニュース編集部撮影)。