日本の「1人当たりGDP」はアメリカの半分以下

 世界的な人口増加が続いている。国連の発表によると、世界人口は2022年11月に80億人に達した。今年中にはインドが中国を抜いて人口世界一に躍り出ることが確実視されている。最新の国別ランキング(国連の『世界人口白書2022』より)は次の通りだ。

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(1)中国/14億4850万人
(2)インド/14億660万人
(3)アメリカ/3億3480万人
(4)インドネシア/2億7910万人
(5)パキスタン/2億2950万人
(6)ナイジェリア/2億1670万人
(7)ブラジル/2億1540万人
(8)バングラデシュ/1億6790万人
(9)ロシア/1億4580万人
(10)メキシコ/1億3160万人
(11)日本/1億2560万人

 G7でトップ10に入っているのはアメリカのみである。アジアが5カ国を占め、中国とインドの2国で世界全体の36%を占めている。世界中に展開している中華系、インド系住民を加えたらその比率はさらに高まる。

 また、日本を含む11カ国のうち、この5年間の人口変動で減少しているのは日本とロシアの2カ国だが、最新情報では、1月17日に中国国家統計局が2022年末の中国の総人口(香港やマカオを除く)が前年比で85万人減少したと発表。1961年以来61年ぶりの人口減少が明らかとなった。

 中国とインドは人口だけでなく国土面積も広大で、経済成長率も8%台(2021年)とG7各国を大きく上回り、GDPで見れば中国は世界第2位、インドは世界第5位になっている。人口、国土、経済、そして軍事面でも世界有数の大国である。

 一方、日本はというと2008年をピークに人口減少が続き、GDPは30年前から500兆円台のままで、実質賃金は下落し続けている。

 当然ながら、日本の国際的影響力はどんどん低下している。日本はGDPこそ依然として世界3位をキープしているが、1人当たりGDPはアメリカの半分以下の水準で、イタリアと並んでG7の中で最低水準にある。

「失われた30年」を象徴する国際競争力の低下

 日本の地盤沈下を象徴的するのは「国際競争力」だ。スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)作成の『世界競争力年鑑』(2022年版、63カ国・地域)によると、日本の順位は34位。1989年から1992年までトップを維持し、1996年までは5位以内だった。それが1996年の4位を最後に2ケタ順位に定着。2022年は過去最低(2020年と同位)の34位まで低下した。

ちなみに2022年版のトップ10は以下の通りだ。

(1)デンマーク
(2)スイス
(3)シンガポール
(4)スウェーデン
(5)香港
(6)オランダ
(7)台湾
(8)フィンランド
(9)ノルウェー
(10)アメリカ

 ちなみに、中国は前年よりランクを1つ落として17位、インドは6つ順位を上げて37位となっており、日本を逆転するのも時間の問題かもしれない。日本は、韓国27位、マレーシア32位、タイ33位よりも下位となっている。

 この国際競争力は4つのカテゴリー(経済状況、政府効率性、ビジネス効率性、インフラ)における各5つの競争力指標(合計20)の順位を総合判定したものである。

 たとえば、日本の指標ランクでひと桁順位となっているのは、「経済状況」雇用2位が最高で、あとは「インフラ」科学インフラ8位、健康・環境9位、この3指標のみである。逆に「経済状況」物価は60位、「ビジネス効率性」経営プラクティスは63位で最下位、「政府効率性」財政は62位と厳しい評価だ。24指標中、9指標が40位以下という惨憺たる状況だ。

 まさに「失われた30年」を象徴するデータといえよう。では、この先、日本の挽回はあるのだろうか。

このままでは日本のジリ貧化は止まらない

 注目したいのは、国際競争力トップ10のうち、アメリカ以外がすべて人口1000万人以下の小国である点だ。

 トップのデンマークは580万人(人口114位)、2位のスイスは880万人(99位)、3位のシンガポールは590万人(113位)である。話は別だが、昨年暮れに世界中が熱狂したサッカーW杯で3位になったクロアチア(国際競争力46位)は410万人(129位)である。

 たしかに人口、マンパワーは競争力強化に欠かせないが、必ずしも絶対的な要素ではないということだ。国の規模に見合った国家ビジョンを打ち立て、それに沿って実効性のある政策、経済運営を徹底していけば、どんな時代でも世界に存在感を示すことができるということをこれらの小国は証明している。

 だが、「失われた30年」からの脱却がままならない日本には、簡単には崩せない、乗り越えられない壁が立ちはだかっている。

・人口減少、少子・高齢化加速による社会保障コストの肥大化
財務省主導政府のダイナミズム欠如/増税路線
・労働環境の後進性/実質賃金低下/「移民」頼みの生産現場
・資源、食料自給力の絶対不足/エネルギー、食糧とも輸入依存
・教育・研究開発投資の遅れ/大学の基礎研究体制の脆弱さ/有能な研究者の海外流出

 挙げればキリがないが、残念なことにこの30年間で壁はどんどん“強固”になってしまった。

「なぜ、日本の国際競争力、経済力がここまで落ちてしまったのか、その検証をきちんと行い、原因となっている壁をひとつずつ壊していくしかない」と指摘するのは、エコノミストの齋藤満氏だ。

「国際競争力トップだった時代の豊かさに甘えて、あぐらをかいてきた結果がいまの凋落ぶりです。1980年代までは官民共同で技術開発を行い、革新的企業に金融支援を行って成長を助けたものです。

 歴史的に見ると、時代の流れとともに1950年代は繊維、60年代は造船、70年代は鉄鋼、そして80年代は自動車がリーディング産業になるというように世界の潮流に順応してきたのが、80年代トヨタを最後にリーダー産業が出てこなくなり、いまではGAFAに対抗できるような企業が生まれない国になってしまったのです。

 この10年は、成長戦略と称して金融緩和と財政バラマキを行ってきたものの、資金が効率よく回らず、結局、政府に近い企業群が儲かる仕組みだけが残り、非正規の従業員が世に溢れる状況になってしまいました。政権交代も含めたドラスチックな改革を実現させて壁をひとつずつ壊していかなければ、日本のジリ貧化、地盤沈下は止まらないでしょう」(齋藤氏)

 もちろん、国際競争力を高めることだけに意味があるわけではない。世界のなかで日本という国家の存在意義が高められるかどうかがポイントだ。人口1億レベルの国家で「脱成長」の先端モデルを構築できれば、それはそれで価値がある。

 しかし、現状を見る限り閉塞感はぬぐい切れない。脱炭素では結局「原発」頼みだし、食料自給力向上体制も構築できない。今ごろになって言い出した少子化対策にしても「異次元」といった言葉先行で、説得力のある施策もビジョンも何も語られていない。

 政府は昨年12月、「デジタル田園都市国家構想」の5カ年総合戦略を閣議決定した。このなかで2027年度に東京圏から地方への移住者を1万人にすることを目指し、デジタル化に取り組む自治体を全国で1500に増やすことなどを柱にしている。

 だが、東京圏からの移住者1万人というが、2021年の東京圏への年間の転入超過者は8万1699人である。まったく話にならないではないか。東京一極集中は変わらず、地方の人口減少に歯止めはかからない。

 このままでは、日本は「縮小」と「衰退」の坂道を転げ落ちていくばかりだ。

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