50代は、仕事もプライベートも将来もいろいろ悩み出す時期──数々のベストセラーを世に生み出してきた著作家兼俳優の中谷彰宏氏は、毎日ゴキゲンに過ごすキーワードは「色気」だと話す。本連載では、50代がさまざまな場面で「色気を出す」中谷彰宏流の方法を、『色気は、50歳から。』(中谷彰宏著、春陽堂書店)より抜粋転載でお届けする。

過去を、懐かしがらない。

中谷塾の名古屋校では、授業の最初にみんなで俳句を作ります。私は高校時代に短歌部でした。俳句を書くと、その人の個性が出ます。

ある人が「草刈りや故郷の香りを思い出す」と書きました。このパターンは色気のない人に多いです。

色気のない人の歌は、「昔はよかった」と過去へ向かうのです。これは現実逃避です。

「故郷」は、添削で直す必要があるベタな言葉です。「故郷」と「思い出す」は、「ふわふわオムライス」と同じで決まり文句です。「故郷」という言葉が抽象的すぎます。

抽象的な言葉は、何かの意味を隠しています。「故郷」は、隠している「母親」を意味します。

受け身のマザコン、自発のマザコン

マザコンと思われるのがイヤな人は、「母親」とは書けません。

マザコンには、

①受け身のマザコン

②自発のマザコン

の二通りがあります。

「母親」と書ける人は、お母さんを大切にしています。受け身のマザコンではありません。受け身のマザコンの人は、女性に常に母親を求めて頼ります。

自発のマザコンの人は、魔性の女が好きです。振りまわされるのもけっこう好きです。

北野武さんも、デューク更家さんも、「自分はマザコンだから」と言います。自分で言える時点で、自発のマザコンです。

「魔性の女は、好きですね」と言える人は、女性に母親がわりを求めていません。

母親は、色気から最も離れたところにいます。

私は、逆に母親から色気を教わりました。

私の実家は、昼間は染物屋で、夜はスナックをしていました。夕方5時からはお風呂、6時からは食事、7時からはスナックの営業です。

食事を終えた後、母親は鏡台で化粧をします。その時、「彰宏、背中とめて」と言われるのです。母親は、背中のファスナーを上げてホックをとめる作業を私にさせました。

「将来、大人になった時に女性にこういうことをしてあげなさいね」ということを教えていたのです。

色気のない人の「一番つまらない話」

常に目が将来に向かっているか、過去に戻っているかで差が生まれます。

色気のない人の「昔ね……」から始まる話が一番つまらないです。「今度〇〇しよう」という話ではなく、昔話をする人は夢がないのです。

色気は、夢から出ます。夢がないと、「ここではないどこかに行きたい」と考えます。

会社を辞めて次の就職先が見つからない人は、

「ここ以外のどこかに行きたい」

と言うわりに、

「そこはちょっと」「あそこはダメ」

と言います。それは単なる現実逃避です。大切なのは、現実逃避ではなく、夢に近づくことなのです。

(画像はイメージです/PIXTA)