2月に東京・帝国劇場で上演される舞台『キングダム』の追加キャストとして、壤晴彦が昭王と竭氏(王弟・成蟜と共に政に対して謀反を起こす)の二役を演じることが発表された。劇団四季時代の後輩で、本作では王騎役を演じる山口祐一郎とは、約35年ぶりの共演となる。2人の2ショットと稽古場写真も解禁された。

【写真】舞台『キングダム』熱気みなぎる稽古場ショットも一挙公開

 本作は原泰久の人気漫画を初舞台化。中華統一を夢見る少年・信役の三浦宏規・高野洸、えい政/漂役の小関裕太・牧島輝、王騎役の山口祐一郎をはじめ、各ジャンルからの多彩なキャストが集結し、2025年の建て替えに向けての一時休館を発表している帝国劇場での野心的な挑戦作として注目を集めている。

 山口演じる王騎が「中華の唯一の王」となる夢を口にした政の姿に重ねたのが、約55年間、戦争に明け暮れ中華に夢を追い求め、秦の戦神として名高い昭王。政にとっての曽祖父にあたる。その昭王を、演劇界のレジェンドで帝劇とも縁の深い壤晴彦が演じる。

 壤晴彦は狂言大蔵流、茂山千五郎(四世・茂山千作・人間国宝)に師事。その後劇団四季を経てフリー。1990年、英エディンバラ国際演劇祭批評家賞を受賞した、蜷川幸雄演出・三島由紀夫作の『近代能楽集・卒塔婆小町』や、92年ロンドン・バービカンセンターで上演された『テンペスト』に主演した国際的に評価される俳優で、帝国劇場でも1987年風と共に去りぬ』『NINAGAWA マクベス』、1991年に蜷川幸雄演出『仮名手本忠臣蔵』、2008年に宮本亜門演出のミュージカルルドルフ ‐ザ・ラスト・キス‐』に出演している。

 本作では、死期の迫る昭王(壤)が、昭王に忠を尽くす王騎(山口)に対して中華への熱き夢を語るという、劇団四季在籍時の先輩後輩にあたる壤と山口にどこか重なるような、演劇ファンにとっては奇跡の邂逅(かいこう)といえる名場面が用意されている。

 壤は山口との共演について、「僕は先輩・後輩を問わず『いい!』と思う人には常に敬意を感じます。劇団四季では大先輩の日下武史さん、同期の鹿賀丈史、そして後輩の山口祐一郎君がそうでしたね。俳優としての演技に“清潔感がある”というのが共通項でしょうか?彼が抜擢された『オンディーヌ』では水界の王の僕と彼のハンスはやりとりがなかった。彼とは『ジーザス・クライストスーパースター』でイエスとピラトで歌の応酬をしたのみ・・今回初めて台詞を交わす事になります。それもこんなに壮大な物語の中で・・昭王と王騎としては信頼と敬意を。竭氏としては不穏な腹の探り合い・・ゾクゾクしますね。楽しみです」とコメント。

 一方、山口は壤に、「キングダム稽古場でお姿を拝見したとき、突然、1970年代後半にタイムスリップしました。私が研究生で朝の掃除を終えテラスで水を飲もうとすると、そこには既に、ケーツーさん(劇団では麦草平さんだったのですが、みなさん本名のケーツーさんと呼んでいらした)が、木洩れ日の中でベンチに腰掛け台本を読んでいらっしゃる。『あっ、麦さん(心はケーツーさんでした)』『…』『あっ、お邪魔してすみません。あっ、おはようございます。私、17期山口祐一郎と申します』『嗚呼、君か。次のジーザス。頑張れよ』と白い歯を見せた。格好良いなケーツーさん、と思った。後年、ジロドゥーの『オンディーヌ』のハンスに抜擢されたとき、壤さんがぼくのチューター(個人指導教師)に専任された。そのとき演出家が呟いた。『ホントは、ケーツーみたいに出来る奴が演じるべきなんだけどなぁ』(その通りだよな)とぼくも素直に得心していた。だって、壤さんが紡ぎ出す科白には誰もが感動するのだから。壤さん。2023年、不肖な弟子との共演。どうぞよろしくお願いいたします」とメッセージを寄せた。

 舞台『キングダム』は、東京・帝国劇場にて2月5日~27日上演。その後、大阪、福岡、札幌にて上演。

舞台『キングダム』で共演する(左から)壤晴彦、山口祐一郎  写真提供:東宝演劇部