日常がニューノーマルへと変化していくなか、韓国芸能界もレッドカーペットや授賞式を有観客で開催するなど、久々に華やいだムードが戻りつつあった。今年はどんな姿を見せてくれるのか期待がかかるが、2022年に開催されたレッドカーペットと授賞式を沸かせたファッショニスタの競演を振り返ってみたい。

【写真を見る】青龍映画賞では梨泰院圧死事故の被害者へ連帯したキム・ヘス

■あなたのお気に入りは誰?ゴージャス&センシュアルなドレスコレクション

惚れ惚れするようなスタイルの良さと、ゴージャスな衣装を誇るキム・ヘス。ベテラン俳優ホ・ジュノをして「青龍映画賞はキム・ヘスと共にある」と言わしめ、“青龍の女神”とも呼ばれる彼女は、1993年の第14回からただ1回を除いて2022年に至るまでMCを務めている。 昨年はエメラルドグリーンで気高さを感じさせるドレスと、透け感のある繊細な素材にスパンコールをちりばめた桜色のドレスを用意。どちらもケープスリーブを翻す姿がスタイリッシュだった。

5月の百想芸術大賞では、ピンクのワンショルダードレスでレッドカーペットに登場し、レジェンド級の美貌と大女優の貫禄を振りまいていた。

映画賞に絢爛な衣装で登場し、私たちの目を喜ばせてくれるキム・ヘスは、韓国芸能界における女優のドレスアップバトルの火付け役だという声もあるが、ルックスだけを誇る俳優ではない。MCとしての当意即妙なコメントや社会への連帯といった知性が、彼女の美貌をより輝かせている。

若手たちも負けず劣らず、授賞式に華を添えた。百想芸術大賞の主役だったのは、「二十五、二十一」でTikTok人気賞とTV部門最優秀演技賞をダブル受賞したキム・テリ。ウエストでセパレートするドレスで大胆に肌を見せながらも上品なムードが漂うのは、いつも清潔感を失わない彼女だからこそではないだろうか。

また、少女時代の復活に加え、映画『ハッピーニューイヤー』(21)、『共助2:インターナショナル(原題)』など精力的な姿を見せてくれたイム・ユナ。百想芸術大賞では柔らかそうなスリーブで可憐さ溢れる着こなし。青龍映画賞でも、透ける素材が花のように咲くドレスにビジューで高貴さをプラスした女神ルックでファンを虜にしていた。

そして12月30日に行われた2022 MBC演技大賞では、美しいデコルテを見せるデザインのオフショルダードレスで観客を魅了。詐欺師に疑われる夫チャンホ(イ・ジョンソク)の濡れ衣を晴らすために奮闘する妻ミホを演じた「ビッグマウス」で、ミニシリーズ部門最優秀女性演技賞を獲得し、笑顔を見せた。

また、昨年のドラマ最高傑作と称される「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」のパク・ウンビンも、百想芸術大賞のレッドカーペットを彩った一人。落ち着いたグレーの色合いのドレスを、シルバーのチェーンでウエストマーク。役柄で様々な表情を見せてくれた彼女も、この日は持ち前の柔らかな可愛らしさが溢れていた。

マーメイドスタイルのドレスは、スターたちに人気のあるシルエット。チョン・ウヒは、黒いスリムなドレスの胸元を白いリボンで切り替えたデザインがキュート。現在日本でも公開中のミステリー作品『死を告げる女』(22)のように重みのある役柄をこなすことの多い彼女だが、普段は愛らしい声と笑顔がチャームポイント。この日もドレスも、人柄と見事にマッチしていた。

『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』が公開されたばかりのパク・ソダムは、今年療養生活から復帰。映画賞授賞式では元気な姿を見せてくれた。百想芸術大賞ではシンプルで清楚な魅力満載のレーシーなドレスだったが、大鐘賞ではボリューム感のあるスリーブで出来た水色のマーメイドドレスが印象的だった。

■純白が眩しい!白を着こなす名優たち

共に百想芸術大賞へ純白のジャケットで参加したのは、兵役からの復帰作「赤い袖先」がすぐさま話題沸騰となったジュノと、最新ドラマ「コネクト」も好調で出演作も目白押しなチョン・ヘイン。

黒いボウタイがアクセントとなり、ファッショナブルな印象だ。

イカゲーム」シーズン2も待ち遠しいイ・ジョンジェは、2022年の韓国エンタメを輝かせた一人だ。5月の百想映画賞には、アンバサダーを務めるGUCCIのスーツで登場。ブランドロゴが全面にあしらわれていても品良く見えるのは、イ・ジョンジェ本人の持つエレガンスがなせる技なのかもしれない。初監督作品『ハント(原題)』が批評的にも興行でも成功した昨年は、11月の青龍映画賞で新人監督賞を受賞。ドラマシリーズ「スター・ウォーズ:ザ・アコライト(原題)」撮影のため、残念ながら授賞式は欠席したものの、代理受賞者のチョン・ウソンとの生電話で声を聞かせてくれた。

同じく2022年を象徴する俳優と言えば、パク・ヘイルの名が挙げられる。『ハンサン ―龍の出現―』(2023年3月17日公開)、『別れる決心』(2023年2月17日公開)と主演作が相次いで公開され、人気と実力を兼ね備えた中堅俳優の面目躍如となった。韓国映画界の総決算となる大鐘賞には、凍てついた空気に映える白いジャケットのスーツで姿を現し、存在感を示した。

ハンサン ―龍の出現―』ではパク・ヘイル扮する李舜臣将軍と敵対する日本の武将を力強く演じたピョン・ヨハンも白いジャケットで登場した。パク・ヘイルは青龍映画祭同様にボウタイ、ピョン・ヨハンネクタイと、それぞれ自分らしいセンスが表れていた。

■タキシード、マニッシュスタイル…王道と個性派の競演に釘付け

青龍映画賞に出席したソル・ギョング、イ・ビョンホン、チョン・ウソンといった韓国映画界屈指のビッグネームたちは、正統派のタキシードでドレスアップ。シンプルにフォーマルを追求した出で立ちも、スターを一層輝かせる。

その一方、イム・シワンが百想芸術大賞で見せた、力の抜けたファッションも印象的だった。ゆるく結んだネクタイに艶のあるベロアのジャケットは、ヘアスタイルも相まって彼のジェンダーレスな魅力をより引き立てていた。

また、女優陣のドレス以外のマニッシュなファッションも目を引いた。百想芸術大賞にプレゼンターとしても参加したチョン・ジョンソは、レッドカーペットで見せたブラックのパンツスタイルが抜群にクールだった。

ドラマ「未成年裁判」で凶悪な未成年犯罪者を強烈に演じたイ・ヨンも、ウエストが見えるタイトなジャケットにパラシュートパンツでワイルドに決めて登場した。

■世紀のビッグカップルのファッションにも注目

年末の話題をすべてさらっていったとも言えるのが、IUとイ・ジョンソクというビッグカップルの誕生だろう。昨年、IUは3年ぶりのソロコンサートが大成功。また『ベイビー・ブローカー』(22)では未婚の母を演じ、キャラクターの心の機微をディティール豊かに表現することで役者としても飛躍した。彼女は青龍映画賞のレッドカーペットでレースのような儚げな素材の白いワンピースを着用し、演技同様の繊細な魅力でファンの視線を釘付けにしていた。

一方、イ・ジョンソクも除隊後の主演ドラマ「ビッグマウス」が高く評価され、MBC2022年演技大賞授賞式に登場。光沢のあるベルベットのタキシードに身を包み、肌の美しい白さが一段と映える装いがとても眩しかった。そしてファッション以上に、大賞を獲得した際の感想がファンを中心に話題を呼んでいた。「兵役を終えて、たくさんの苦悩と恐怖、苦痛がありましたが、人として良い方向性とポジティブな考え方が出来るよう導いてくださった方がいました。その方に、この場を通じて必ず伝えたいです。いつも素敵でいてくださってとてもありがたいですし、長い間本当に好きでした。とても尊敬しています」という言葉に、彼の誠意がにじみ出ていた。彼が“その方”をどれほど大切に思っているかが感じ取れるスピーチであり、その後本人たちから直接伝えられた言葉も含め、深い愛情と敬意で結ばれている2人に心から祝福とエールを送りたい。

華やかさと個性、そして感動的な言葉で私たちの心を掴んだ、韓国芸能界のトップスターたち。2023年も、その活躍に注目したい。

文/荒井 南

ファンの心をときめかせたトップスターのベストルック/[c]MBC、[c]SplashNews.com