銃乱射事件の被害者家族と加害者家族による緊迫の対話を描く映画『対峙』より、4人による<人生のすべてをかけた対話>のはじまりを収めた本編映像が解禁。併せて本作に寄せられた、映画監督の白石和彌や瀬々敬久らを含む14名の著名人による絶賛コメントも到着した。

【動画】映画『対峙』本編映像解禁

 高校銃乱射事件でともに息子を失った被害者と加害者の両親の再会を描いた本作は、ほぼ全編にわたって主要キャスト4人よる密室の会話劇というチャレンジングな設定ながら、英国アカデミー賞をはじめ各国の映画賞81部門でノミネート、釜山国際映画祭フラッシュフォワード部門観客賞をはじめ各国の映画賞43部門で受賞。Rotten Tomatoesでは、批評家95%・観客90%FRESH(1月16日時点)という最高級の評価を獲得している。

 米国のある高校で生徒による銃乱射事件が発生し、多くの同級生が死亡。犯人の少年もそのまま校内で自ら命を絶った。それから6年、事件で息子を殺された“被害者”の両親と、事件を起こした“加害者”の両親が、セラピストの勧めで対面することになる―。

 監督を務めるのは、映画『キャビン』などで知られる俳優出身のフラン・クランツ。初監督・初脚本作品とは思えない緻密な脚本と演出により、密室4人の限られた設定ながら、どんなスリラーにも勝る衝撃的なほどの緊迫感に満ちた物語に仕上げている。

 このたび、銃乱射事件の被害者両親と加害者両親という4人による、<人生のすべてをかけた対話>のはじまりを捉えた約4分の本編映編が解禁。

 舞台は、アメリカのある田舎町の美しい並木通り沿いに建つ小さな教会。その奥にある個室で、ある会合が開かれようとしており、その目的を知る者が念入りに部屋の細部や装飾までチェックし、椅子の位置や、飲み物を置く場所に至るまで細心の注意を払っていた。

 その部屋に少しだけ早く到着したのは、この会合に参加する“被害者家族”のジェイジェイソンアイザックス)とゲイル(マーサ・プリンプトン)夫妻。続いて、“加害者家族”のリチャード(リード・バーニー)とリンダ(アン・ダウド)が到着する。あいさつをした後、リンダゲイルに花を渡そうとするが、ゲイルはお礼を言うもののぎこちない態度。

 そして4人はテーブル席に。会合実現のために仲介をしてきたカウンセラーが「ついにみなさんが同じ席に。今日ここを出る時に、話してよかったと思えますように」などと言葉をかけ、部屋を後にする。リンダゲイルに渡すために用意した花はテーブルの中央に置かれていたが、ジェイはそれをテーブルからどかすことを提案。そしてぎこちなく会話を始めるが、なかなか核心に触れようとしない。そんな中、「我々は弁護士に頼りすぎたが、息子を守るためだった」というリチャードの言葉に、ジェイゲイルは凍り付く―。

 観る者は、ここから始まる4人の会話のみを通じて、会合の目的や4人の関係、過去と現在、事件によって人生を断裂された彼らのことなどについて少しずつ知っていくことになる。リチャード役のトニー賞俳優リード・バーニーは、脚本を読んだ当時を振り返り「ものすごくパワフルだった。ディテール、態度や仕草のニュアンス、人間関係の複雑さに驚かされた。ベテランの脚本家ですらなかなか書けないような見事な脚本を、フランはデビュー作でいきなり書いたんだ」と、そのクオリティを称えている。

 本編映像と併せて、7名の映画監督を含む総勢14名の著名人による絶賛コメントも到着。「映画が何のために存在するのか、その一端を教えてくれた気がします」(白石和彌)、「シンプルは力強い。本物の映画だ」(瀬々敬久)、「事件の後も生きなければならない彼らの心に触れてほしい」(岸善幸)、「罪と罰とは何か。ここに今の世界の多くの問題が凝縮されている」(森達也)など社会派として知られる監督たちのほか、俳優・映画監督の奥田瑛二、ドキュメンタリー映画監督の坂上香、映画監督の吉田恵輔がそれぞれの視点でコメントを寄せた。

 そのほか、精神科医の香山リカは「心の専門家であるはずの私も魂を揺さぶられた」と語り、ジャーナリストの浜田敬子は「対峙することの苦しさと、それでもその先にしか一筋の光がないことを知らしめてくれる作品」とコメント。演出家の宮本亞門は「これは演劇であり映画であり新たなドキュメンタリー、この時代が産んだ秀作だ」、精神科医の名越康文は「絶望的な問いに真正面から挑んだ映画がここに出現した」と、それぞれ絶賛している。

 映画『対峙』は、2月10日より全国公開。

 ※著名人コメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■白石和彌(映画監督)

映画を見て数日経つが、紡ぐ言葉が見つからない。とにかく凄まじいものを見た。

映画が何のために存在するのか、その一端を教えてくれた気がします。多くの悲しみと憎悪の溢れる世の中に、静かな光を差し込む映画です。

■奥田瑛二(俳優/映画監督)

自身が生きてきた経験や準備された言葉では言い表すことができず、自問自答を繰り返している。大切な人の手を握りしめることしかできない。

■瀬々敬久(映画監督)

シンプルは力強い。対話のみで加害者と被害者の心の葛藤を描き切った。人生の残酷と生きることの美しさ。何度となく出てくる「赦し」という言葉の重さ。本物の映画だ。

■坂上香(ドキュメンタリー映画監督)

埋めようのない喪失を味わった2組の夫婦が、問いかける。その先を、私たちはどう生き続けることができるのか?

■デーブ・スペクター(放送プロデューサー)

教会の密室、6年の経過を経て許すか許さないかのサスペンス。彼らが望む「完結」は得られるのか、最後まで目が離せない。

■岸善幸(映画監督/ディレクター)

罪と罰と、許し。突きつけられる問いに向きあい続けた親たち。事件の後も生きなければならない彼らの心に触れてほしい。

香山リカ(精神科医)

人間の心はとてももろい。でも、とても深い。そして、何度でも再生する。心の専門家であるはずの私も魂を揺さぶられた。

吉田恵輔(映画監督)

他者への想像力。少し広がるだけでも世界は暖かい。しかし簡単に出来ないのが人間。もどかしさが痛く切ない。

■浜田敬子(ジャーナリスト)

どんなに憎んでいても、赦せなくても、向き合わなければ知ることすらできない。対峙することの苦しさと、それでもその先にしか一筋の光がないことを知らしめてくれる作品。

■宮本亞門(演出家)

映像は一見、何の問題もない暮らしから始まる。だが4人の親によって子供たちの様子が炙り出される。社会や個人、加害者や被害者の気持ち、残された者、親や子とは?誰もが持ちうる混乱、疑惑、不安、恐れを炙り出す。実にシンプルだ、シンプルゆえに語られてこなかったことを語る彼らの言葉が心に響く。

不安が人を自己的にさせ、分断を生みだす今、対峙し話し合うことは可能か否か?これは演劇であり映画であり新たなドキュメンタリー、この時代が産んだ秀作だ。

■上西充子(法政大学教授)

耳を傾ける者がいて初めて、胸のうちに押し込められた思いは言葉となって姿をあらわす。

■森達也(映画監督/作家)

まさしく密室劇。対峙するのは加害者の家族と被害者の遺族。言葉をぶつけ、憎悪や絶望に身を焦がし、そして慰め合う。言葉にすればひりひり。罪と罰とは何か。ここに今の世界の多くの問題が凝縮されている。

■猿渡由紀(L.A.在住映画ジャーナリスト)

現代のアメリカで多発する学校での乱射事件を、限りなく近い距離から人間的に見つめる感動の傑作。4人の役者の演技に大絶賛を送りたい。

名越康文(精神科医)

赦しだけが魂の救いだとしても、どうして凍てつく心の扉を、開けることなどできるだろうか。その絶望的な問いに真正面から挑んだ映画がここに出現した。この作品を通じて、あらゆる意味での人間の勇気を、我々は知ることになるだろう。

映画『対峙』場面写真 (C)2020 7 ECCLES STREET LLC