パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」(編集長:大浦 征也)は、「ビジネスパーソン」と「企業」間の“転職や仕事に対する意識の差”などをはじめとした実情を明らかにする「doda ビジネスパーソンと企業の転職意識ギャップ調査」を継続的に発表しています。
第4回は、今注目の「リスキリング(学び直し)」に関するビジネスパーソンと企業とのギャップを調査しましたので、その結果をお知らせいたします。
ビジネスパーソンは、転職を検討している又は興味があってリスキリングを知っている200名(以下、「個人」)、企業はリスキリングを認知している人事担当者200名(以下、「企業」)を対象とし、計400名に調査を実施しました。
※1:技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために新しい知識やスキルを学ぶこと


<調査背景>

■「リスキリング(学び直し)」への注目の高まり
リスキリング(学び直し)」は、世界的にみると、2020年に世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で「2030年までに全世界の10億人をリスキリングする」と宣言されたことを契機に機運が高まりはじめました。
日本においては、2022年10月の第210回臨時国会 所信表明で、岸田首相が5年で1兆円を投じ「リスキリング(学び直し)」を支援すると表明したことを受け、いまさらに注目が高まっています。
さらに政府は「リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への雇用の円滑な移動を進める」と表明、労働移動を円滑にするための指針を2023年6月までに策定するとしています。2023年、ビジネスパーソンと企業ともに、ますます着目せざるを得ないテーマとなることが予想されます。
転職サービス「doda」が扱う約17万件※3の求人票を確認したところ、「リスキリング(学び直し)」関連の支援体制を記載している求人票数※4が2021年1月から約2.7倍の伸長を見せており、企業も採用における「リスキリング(学び直し)」関連支援制度の重要性を認識し始めていることがうかがえます(【図1】参照)。
そこで今回は、現在と今後の実施状況・推奨制度の整備状況、実施の目的や学びたい/学ばせたいスキル、そして転職時への影響度などについて、ビジネスパーソンと企業に意識調査をおこない、「リスキリング(学び直し)」をどのように捉えているか、その実態に迫りました。
※2:ロジカルシンキング・クリティカルシンキング・クリエイティブシンキングなど
※3:2022年12月27日時点
※4:求人票内に「リスキリング、リカレント、学び直し、教育支援、資格取得支援、自己啓発支援」のいずれかの文言を含む求人

調査結果
リスキリングに対する企業の実態と今後の動きについて
個人の9割近く(89.5%)がリスキリングを実践、または実践予定と回答
現状、社内でリスキリング推奨できていると回答した企業は4割(38.0%に留まるが、
今後推奨予定の企業を含めると8割以上(82.5%
個人に対してリスキリングに取り組んでいるかを尋ねたところ、取り組んでいる(60.0%)または今後取り組む予定(29.5%)と回答した人が89.5%にも上り、改めてリスキリングへの関心の高まりがわかる結果となりました(【図2】参照)。一方、企業に対して現状の社内でのリスキリング推奨※5状況を聞いたところ、「取り組んでいる」と回答したのは38.0%に留まる結果となりました。(【図2】・【図3】参照)
なお、個人の取り組んでいる(60.0%)の回答内訳をみると、「現在自発的に個人で取り組んでいる(40.0%)」「現在勤務先の指示/推奨で取り組んでいる(20.0%)」となり、個人の学びたい意向と企業の体制整備にズレがあることがうかがえます。
しかし、今後リスキリングを推奨していく予定の企業は約半数(44.5%)に上り、取り組んでいる企業と合算すると8割以上(82.5%)になるため、今後企業の制度整備が整うことでよりリスキリングを行いやすい環境が生まれていくと推測されます。
※5:セミナー受講、大学など教育機関への通学、オンラインコンテンツを使った学習、個人学習などを通して新しい知識やスキルを
学ぶことに対し、教育支援・資格取得支援・自己啓発支援などの社内制度を通じて推奨すること
リスキリング実施の目的について
リスキリングに取り組んでいる理由で最も多いのは個人・企業ともに「スキル向上」がトップ
個人は転職を優位に進める方法の一つとしてリスキリングを行っている可能性
次にリスキリングに取り組んでいる個人と、リスキリング推奨に取り組んいるそれぞれにその理由を尋ねると、共に一番多かったのは「スキル向上」という結果になりました。2位以下は異なる結果となり、特に個人においては2位が「転職活動を見越した自身の市場価値向上のため」(36.7%)と、リスキリングを、業務効率を上げる方法のみではなく、“転職を優位に進めるための方法”の一つとしても捉えていることが推測できます。(【図4】・【図5】参照)
■リスキングにおける課題について
課題は、個人・企業ともに「時間の捻出」「モチベーション維持」が上位に
さらに、同じくリスキリングに取り組んでいる個人と、リスキリング推奨に取り組んでいる企業へ、リスキリングにおける課題を尋ねたところ、「時間の捻出(個人:37.5%、企業:36.8%)」や「モチベーション維持(個人:30.0%、企業:42.1%)が上位に挙がりました。また、個人の1位に挙がった「費用の捻出が難しい(38.3%)」は、企業では5位に留まり、ギャップがみられました。【図2】の調査結果から、個人リスキリング実施者の3分の2が自発的に実施している様子が見えたとおり、費用捻出の負担は個人の方が強く感じていると考えられます。(【図6】・【図7】参照)
次いで上位に挙がった「社内制度の未整備(個人:24.2%、企業:30.3%)」や、個人の「自分が取り組むべきことが何か分からない」「スキルを習得する方法が見つからない」(ともに22.5%)という回答からは、リスキリングへの機運は高まっているものの準備や制度が整っていない状況が推測できます。
■転職先選定におけるリスキリング制度の充実と志望度合いの関係
リスキリング制度の充実で転職先の志望度合いが上がると回答した個人は8割以上(81.0%)、
企業も約7割(69.0%)が転職希望者に影響を与えると考えている
転職活動を行う上で、リスキリング制度の充実具合により、企業への志望度合いがどう変化するかを尋ねたところ、個人では8割以上(81.0%が「志望度合いが上がる」と回答し、企業も約7割(69.0%が転職希望者の「志望度合いが上がると思うと回答しています。改めてリスキリングへの関心の高まりがわかるとともに、転職先選定にまで影響を与えていることが見て取れる結果となりました。(【図8】参照)
個人にとって企業のリスキリング制度の充実度は、入社後スキルアップへの適切なサポートを受けられる安心感や、企業の市場変化への対応力として信頼性を示す指標になりえるといえるでしょう。
リスキリングで学びたいこと/学ばせたいことについて
最もリスキリングで学びたいことは、個人が「語学関連」(17.5%)、
企業は「思考プロセス関連※2(22.5%)と異なる結果に
最後に個人にはリスキリングで学びたいこと、企業には学ばせたいことを尋ねたところ、個人は「語学関連」(17.5%)が最も多かったのに対し、企業は「思考プロセス※2関連(22.5%)と異なる結果になりました。(【図9】・【図10】参照)
それぞれの内訳を見ると、個人は「語学関連」(17.5%)「思考プロセス関連」(16.5%)、「マネジメントスキル関連」(12.5%)と汎用性の高いビジネス力が並ぶ一方、後続には第4位第5位に「IT・DX・AI関連」(11.0%)「プログラミング関連」(10.0%)が並びテクノロジー活用力への関心の高さが表れていました。企業の回答は「思考プロセス関連」(22.5%)、「マネジメントスキル関連」(18.5%)、「IT・DX・AI関連」(15.0%)と続きました。業種を問わず進んでいるDX化から、これまでになかった新しい仕事が生まれるなど産業構造が大きく変化していることを受けて、価値創造し続けるたに必要なスキルが上位に並んだと推察されます。
※2:ロジカルシンキング・クリティカルシンキング・クリエイティブシンキングなど
dodaキャリアアドバイザー*7 解説>
今回の調査から、個人・企業双方から「リスキリング(学び直し)」への高い関心が伺え、【図9】からは個人が学びたいと考えるスキルは、汎用性の高いビジネス力からテクノロジー活用力まで、幅広く広がっていることが分かります
一方で、キャリアドバイザー業務で転職希望者の方々のカウンセリングを行う際には、「どのようなリスキリングが転職に有効だろうか」と相談を受けることも少なくありません。リスキリングの課題として「リスキリングすべき内容や方法が分からない」と回答した個人は2割を超えており、同様の課題を抱える人がいることがうかがえます。【図6】参照)。
リスキリングは、“目的”と捉えられがちですが、“手段”です。何を学ぶべきかの前に「3年や5年10年の近い将来どうありたいか」のキャリアプランを描くことが重要になります。そのキャリアプランと現在との差を埋めるための手段と考えると、おのずから必要なリスキリング対象がみえるでしょう。すでに持っているスキルと掛け合わせ又は積み上げで市場価値を高めることがリスキリングの利点です。
平行して、定期的に自身のキャリアプランに対して“振り返る、見立てる、リスキリングを行う”という習慣をつけておくと良いでしょう。
※7:業界、職種、エリア別の動向などに精通し、キャリアカウンセリングを経て求人のご紹介~転職先決定までトータルにサポートする専任担当。

■総括(doda編集長 大浦 征也
今回「dodaビジネスパーソンと企業の転職意識ギャップ調査」で着目したテーマ「リスキリング(学び直し)」は、調査結果にも表れたように、現在大変注目度の高い社会的関心事です。
なぜここまで関心を集めているのか、背景を日本にフォーカスしてみると、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に加速した産業構造の大きな変化が、その一つに挙げられるでしょう。これは、働き方を含む業務形態にまで及びます。この変化に対応しようと個人・企業ともにリスキリングに注目しています。

他方で、産業構造の変化により成長分野への労働移動が活発化すると見込まれることも一つです。業界を限らずDX化が進むなか、DXを推進させられる人材へのニーズは高まり続けています。個人は業務で求められるスキル向上や自身の市場価値向上のため、企業も育成を通じ事業課題へ対応するため、また求める人材を採用するためにリスキリングの推進制度を整えようとしています。
しかし、【図2】のとおり、6割に上る個人リスキリング実施者の内訳をみると、3分の2が勤務先の制度のもとではなく自発的に実施していると回答しています。個人のリスキリング実施実態と比較すると企業の制度整備が遅れを取っているともいえる状況です。企業は、自社にどのような変革が必要かから逆算して、社員に求めるリスキリングを選定し、実践できる場の設定を含めた教育プログラムを用意できるとよいでしょう。
転職先選定におけるリスキリング制度の充実と志望度合いの関係【図8】からも分かるように、今後リスキリング推奨制度の充実は、求める人材の採用に有効にはたらくと考えられます。

今後の転職市場は、ますます成長分野への労働移動が活発化すると見込まれます。個人・企業ともに、急速な社会変化のなかで価値創造し続けるために必要なスキルは何かを考える必要があるでしょう。
特に20代・30代のビジネスパーソンは、前述のdodaキャリアアドバイザーのアドバイスのとおり、定期的に自身のキャリアプランに対して“振り返る、見立てる、リスキリングを行う”の習慣を身に着けることが重要と考えます。どのように「リスキリング(学び直し)」を取り入れたらよいか等に悩まれたときは、前述のdodaキャリアアドバイザーまでご相談ください。

解説者プロフィール doda編集長 大浦 征也(おおうら せいや)
2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。
その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年より約3年間、doda編集長を務め、2019年10月には執行役員に。2022年7月、doda編集長に再就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC) 理事、一般社団法人日本人材紹介事業協会 理事にも名を連ねる。

■調査概要:リスキリング(学び直し)」に関する調査
<個人向け調査>
対象者:全国に住む、転職を検討している、または興味がありリスキリングを知っている20~30代男女会社員
正社員契約社員) ※人事担当を除く
集計対象数:200名
調査手法:インターネット調査
調査期間:2022年12月10日12月14日

<企業向け調査>
対象者:全国に住む、リスキリングを知っている20代~60代男女中途採用・人事担当者 
集計対象数:200名
調査手法:インターネット調査
調査期間:調査期間:2022年12月10日12月14日

doda ビジネスパーソンと企業の転職意識ギャップ調査
新型コロナウイルス感染症対策を背景としたテレワークの増加、育児休暇の義務化、営業スタイルの変化など、ここ数年で日本が“働き方”の大きな転換期を迎えていることを受け始動させた調査シリーズです。
第1回:ハイブリッドワーク https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2022/20220804_01/
第2回:男性育休 https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2022/20220912_01/
第3回:新営業職 https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2022/20221129_01/

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