2023年1月26日は、『モンスターハンター:ワールド(以下、モンハンワールド)』の発売5周年記念日だ。本作は、それまでの「モンスターハンター(以下、モンハン)」から一部のシステムを刷新し、シリーズの新基準となったタイトルでもある。今回は5周年を機に、本作がどのようなタイトルだったのかを振り返る。

参考:【画像】従来シリーズと比べ、グラフィックが大きく進歩した『モンハンワールド』

■マップのシームレス化や、自動調合など……現代にあわせたゲームシステム

 『モンハンワールド』は、2018年1月26日CAPCOMから発売されたハンティングアクションゲームだ。2021年には、世界での販売本数が2,000万本(『モンスターハンターワールド:アイスボーン マスターエディション』を含む)を突破。これはCAPCOM史上の最高記録である。

 そんな大人気タイトルとなった本作は、PlayStation 4/Xbox One向けタイトルとして開発され、その性能を最大限に活かしてゲームシステムやグラフィックの刷新が図られた。

 システムの変化で印象深いのが、フィールドのシームレス化である。従来のシリーズではマップがいくつかのエリアに区分けされており、エリア移動のたびにロードを挟む必要があった。しかし、本作ではフィールドがシームレス化し、エリア移動にともなうロードがなくなった。また、フィールドの大きさも従来のものに比べて2倍から3倍ほどに広がっている。

 また、従来のシリーズでは「回復薬を飲むたびにガッツポーズを取る」といった硬直が発生し、プレイヤーにとってのストレスになっていたが、本作では歩きながらの回復が可能に。ほかにも、素材となるアイテムを採取した際に自動で回復薬などのアイテムを調合するようになるなど、ユーザーフレンドリーなシステム面での改善が図られていた。

 『モンハンワールド』は、このように時代遅れなイメージがあったシステムを見直すことで、「モンハン」シリーズの新たな基準を作ったタイトルといえる。

■進化したグラフィックで描かれる大自然

 「モンハン」シリーズがグラフィック面でもっとも目覚ましい進化を遂げたのは、本作からだろう。

 というのも、本作発売以前の「モンハン」シリーズは携帯機向けに開発されたタイトルが多く、グラフィックについてユーザーが不満を漏らすケースも少なくなかった。しかし、本作は据え置き機専用タイトルとして発売されたことで、グラフィック性能が大幅に向上。シリーズの看板モンスターであるリオレウスなどもグラフィックが刷新され、鱗や翼膜などの質感が細部までわかるようになった。

 また、本作では自然や生態系の表現に力を入れていたのも印象的だ。たとえば、本作のフィールドには自生するツタや天然のダムなど、自然環境を活かしたギミックが配置されている。これらを活用すれば、モンスターを罠にはめたり、大きなダメージを与えたりすることが可能なのだ。

 さらに、2体のモンスターが遭遇すると発生する「縄張り争い」も生態系の表現に一役買っていた。縄張り争いではモンスター同士がお互いを攻撃する様子が描かれるが、ここでは生態系のパワーバランスが表現されており、たとえばリオレウスドスジャグラス縄張り争いでは、空を飛んでいるリオレウスの方が優位にたつ。

 このような自然や生態系の表現に加え、高精細に描かれたモンスターやフィールドが相まって、没入感の高い狩猟体験を実現しているのも『モンハンワールド』の魅力のひとつだ。

■『アイスボーン』によって改善したボリューム不足と、新たな問題

 2019年9月6日には、本作の大型拡張コンテンツである『モンスターハンターワールド:アイスボーン(以下、アイスボーン)』が発売された。『アイスボーン』では多数のモンスターが追加され、『モンハンワールド』の課題だったボリューム不足も解消。「ジンオウガ」「ナルガクルガ」など歴代タイトルの看板モンスターも登場し、追加モンスターの名前がよくSNSでトレンド入りしていたことも記憶に新しい。

 しかしながらユーザーによっては、「『アイスボーン』の登場以降、遊びづらくなった」という意見も。その理由は、『アイスボーン』で導入された「クラッチクロー」というシステムが狩猟の自由度を下げてしまっていたからだ。

 「クラッチクロー」はモンスターの身体に張り付き、傷を付けてダメージを与えやすくしたり、吹き飛ばして壁にぶつけることで大ダメージを与えたりする新たなアクション要素だ。有効活用すれば戦闘を有利に運べる一方、『アイスボーン』ではクラッチクローを使わせるために、モンスターに露骨なひるみモーションが追加されたり、モンスターの体力が大幅に増加されたりなど、そもそもクラッチクローの使用が前提であるかのような調整が行われた。にもかかわらず、クラッチクローの張り付きは判定が曖昧で、頭部に張り付くつもりで狙っても翼に張り付いてしまうなど、使いづらさが際立っていた。

 また、エンドコンテンツである「導きの地」に関しても、リリース直後は特に問題が多く、ファンのあいだで賛否があった。「導きの地」は複数の地帯からなる新フィールドで、各地帯のモンスターを倒すと「地帯レベル」が上昇し、より強力なモンスターと戦ったり、珍しい素材を集めたりできる場所だ。

 しかし、リリース直後の導きの地では「地帯レベルを上げるために大量のモンスターを倒さなければならない」「ほかの地帯のモンスターを倒すと目当ての地帯レベルがすぐ下がってしまう」「地帯レベルがすぐ下降してしまう影響でマルチプレイがしづらい」など、数々の問題があった。

 とはいえ、『アイスボーン』ではこのような問題点に対して、運営側が積極的に対応していたことも印象深い。前述した「導きの地」に関する問題においても、ユーザーから不満の声が多数寄せられていることを、リリースから間もない段階で運営が発表。「今後のアップデートで改善していく」とし、実際に仕様変更が施されたことで、「導きの地」に関しては格段に遊びやすくなった。ほかにも、今後のアップデートスケジュールをあらかじめ公開するなど、ユーザーに寄り沿った運営姿勢には好感を覚えた。

 『モンハンワールド』は、現代向けにアップデートされたシステムとグラフィックで、「モンハン」シリーズの新たな可能性を切り拓いた一方、一部システムの調整が不十分だったことが非常に惜しかった。しかし、その後の運営のカバーによって、末永く遊べるタイトルとして完成された作品ともいえるだろう。だからこそ、全世界2,000万本というCAPCOM史上最高の販売本数を記録できたのかもしれない。

 最近は『モンスターハンター サンブレイク』などで遊んでいるという方も、5周年を機に、もう一度『モンハンワールド』の世界に足を踏み入れてはいかがだろうか。
(坂田憲亮)

『モンスターハンター:ワールド』より