性犯罪に関係する刑法の改正について、国で議論が続いている中、法務省の法制審議会が示した新たな改正の試案に対して、性被害の当事者や支援団体は1月26日、東京・永田町で記者会見を開いて「試案では救われない被害者が多い」と懸念を示した。

現在、強制性交罪の公訴時効は10年となっているが、幼い子どもの場合は被害を認識することに時間がかかる。そのため、試案では公訴時効を5年延長しているが、当事者や支援団体は「被害実態にあっていない」として、公訴時効の撤廃やさらなる延長を求めた。

法制審議会では、2月にも答申をまとめるとみられている。

●「被害者を1人でも取りこぼすことのない法律を」

性被害の当事者と支援者でつくる一般社団法人「Spring」が2020年に実施した性暴力についての調査によると、被害者5899人が「被害の記憶を喪失していた年数」は、平均で10年を超えていた。中には性被害だと認識するまでに、最長で31年かかったという人もいた。

このため、Spring公訴時効の撤廃を訴えてきたが、新たな試案では反映されなかった。

Spring代表理事の佐藤由紀子さんは会見で「法制審議会に被害者の声が届かず、実態調査の結果も反映されなかったことを大変残念に思っています。5年という試案はあまりに短く、被害実態にあっていません。被害者を1人でも取りこぼすことのないような法律を求めたいです」と述べた。

Springによると、イギリスでは性犯罪公訴時効がないほか、ドイツでも被害者が30歳になるまで時効が停止され、51歳まで公訴が可能という。

●「被害を認識するのにすごく時間がかかる」

この日の会見には、15歳から19歳まで、教師から性的虐待を受けていた石田郁子さんも出席し、公訴時効の撤廃をあらためて訴えた。

石田さんは「法律のロジックやスキルを重視して、被害実態にあっていない公訴時効となるのは非常に問題だと考えています。実態にみあった法律にしてほしいです」と話し、子ども時代に受けた被害について理解を求めた。

「たとえば、子ども時代の性被害は、戦争や大地震と同じような被害が起きていることを理解してほしいです。私は医師から、子どもは受け止める力が小さいので、大人になってから被害を思い出すと言われました。とても怖い目にあってるので、無意識に考えることを避けてしまい、思い出せない。被害を認識するのにすごく時間がかかります」

この日、自民党の有志議員でつくる「性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟」の検討会も開かれて、Springや石田さんはそこでも公訴時効の撤廃などを求めた。

「性暴力の実態にあった刑法改正を」 被害当事者や支援団体、公訴時効の撤廃うったえ