ゼロコロナ政策撤廃後の中国で、新型コロナウイルスの新規感染者が急増。中国疾病予防コントロールセンターの発表によると、ピークだった昨年末には1日の感染者数が700万人に達したが、その後は減少に転じた。

一方、中国と国境を接する北朝鮮の両江道(リャンガンド)では、今月に入ってからコロナを疑わせる症状を見せる人が急増していると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

両江道の恵山(ヘサン)など一部地域では今月中旬から、高熱、咳、痰、節々の痛みなどを訴える人が急増している。食糧不足に寒波まで加わって、免疫力のない人々が体調を崩しているようだと、情報筋は伝えている。

しかし、医師たちは一様に「インフルエンザの症状だ」として、風邪薬を続けて服用せよという処方を下している。患者は、コロナなのかインフルエンザなのかわからないまま、病気と闘い続けているという。

コロナとの診断を下すのは、「コロナとの闘いに勝利した」という金正恩総書記の宣言に真っ向から反することになる。政治的にリスクが高いため、医師はコロナを疑ったとしても、正直に診断を下せないのだ。

患者の急増に伴い、市場では医薬品が品薄になり、ようやく手に入れた薬を服用しても、病状が好転することはないという。

恵山市内の恵灘洞(ヘタンドン)に住む40代のチェさんは、今月19日から高熱、咳、節々の痛みを感じ、アスピリン3日分を購入、服用した。しかし、全部飲みきっても何の効果もなく、依然として高熱にうなされ続けている。

また、三水(サムス)郡に住む50代のパクさんは、今月18日から高熱が出て郡の病院に行ったが、正確な診断も、医薬品の処方もしてくれず、「1日3回、時間を守って風邪薬と解熱剤を服用せよ」と言われるだけだった。パクさんは「薬を飲まなければならないのは、病院に行かなくてもわかる。家に薬はなく、買うカネもないから病院に来たのに、医者から薬をもらえないとはどういうことか」と不満を吐き出したという。

恵興洞(ヘフンドン)、恵新洞(へシンドン)など市内中心部に住む住民の間では、風邪薬と解熱剤を服用しても効果がないため、「本物の薬はなく、ニセ薬ばかり流通しているのではないか」「カネがあっても本当の薬を手に入れるのは至難の業」という噂が立っている。

そんな噂が広がるにつれ、市民は「高熱が出たとしても病院に行ったところでどうせ何もしてくれない」と、診療を避けるようになってしまった。金持ちも貧乏人も、皆一様に治療が受けられない。国民個人の健康よりも、最高指導者の体面が重要視されるのが、実に北朝鮮らしい。

北朝鮮の防疫活動(2022年6月2日付労働新聞)