実務経験なしで独立開業する場合は何でも相談できる人を持つ必要があります。独立して数年以内の生活できる程度に稼いでいる先輩が最適です。46歳で社労士試験に挑戦し、50代から実務を経験した佐藤敦規氏が著書『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

ハローワークなど行政で働いた経験はあるか

■師匠にするならこんな人

実務未経験で独立する際、不明点があれば聞ける質問できる人を持つ必要があります。

新入社員として会社で働き始めたときの状況を思い出してください。研修を受けたり、仕事を始める前に上司からレクチャーを受けたりしても想定外のできごとが起こりえます。そんなときに頼りになったのは、2~3年上の先輩ではないでしょうか。メンター制度といって2~3年先輩が新入社員の面倒を見るようにしている会社もあります。

どの仕事もそうですが、士業の仕事はより失敗が許されないシビアな面がありますので、相談できる先輩士業を見つける必要があります。ベテランの先生や短期間で収入的に成功を収めている先生に教わるのもよいですが、独立して数年以内の生活できる程度に稼いでいる先輩が最適かと思われます。

ベテランの先生ですと時代や状況が異なるケースもありますし、短期間で売り上げを上げている先生の場合、独立前から人脈があったとか、並みはずれた営業力があるなど、他人が簡単に真似できないなにかを持っている可能性が高いからです。

もう一つ押さえておきたいのは、労働局、ハローワークなどの行政で働いていた経験がある人です。特に士業の仕事は役所とのやりとりも多いので、役所がどのような視点でチェックしているかが分かるからです。

どこで師匠と知り合いになるのか? 士業の人であれば入会した支部会の懇親会などに顔を出すのがよいのではないでしょうか。元々勉強するのが好きな人が多いので有志による勉強会に参加するのもよいでしょう。また士業別の同窓会の活動が活発な大学もあります。

教えて貰った場合はお礼をするようにしましょう。お金を払うのは、そうした目的でアドバイスしているわけでないと考える人もいるので難しいところですが、食事代をだしたり、雑用的なお手伝いをしたりするのもよいと思います。

パソコンやスマホなどのIT知識が豊富な人や語学が得意な人は、こうした分野で必要なときにサポートしてあげるのも喜ばれます。

ホームページを作ったほうがいい理由

■ホームページやSNSをどう活用する

ホームページは作ったほうがよいです。紹介を中心に仕事を獲得することが多いので不要という人もいますし、実際にホームページを作らないで成功している先生もいないわけではありません。

集客という観点ではあまり期待できなくても、信用度をアップするためには必要です。今の時代、ホームページがない会社は「?」となるのではないでしょうか。

レストランやホテルを予約する際にも、ホームページの印象を重視する人が多いと思われます。士業にも同じことがあてはまります。個人企業ならともかく、ある程度の規模の会社であれば、担当者の判断で発給先が決まるのではなく、社内稟議を経た上で決まります。その際の判断材料となるのがホームページなのです。

また、ホームページを開設するのであれば、顔写真は載せたほうがよいでしょう。

抵抗を示す人もいるでしょうが、独立するとなるとある程度の自分をさらけ出す覚悟を決めなければなりません。

学歴や経歴については、個人情報の関係もあり、あまり出さない人も多いようです。履歴書のようにすべて記載する必要はありませんが、最終学歴や直近または長く在籍した会社名は書いたほうがよいかと個人的には考えております。同窓生というだけで親密感を抱いてくれる人は多いからです。

SNSは毎日のように発信している人と、アカウントだけ開設している人、ほとんど発信もしていない人に二極化しているように思われます。無理して発信する必要はありませんが、可能であれば始めたほうがよいでしょう。人となりを知って貰えるというメリットがありますし、発信した内容から仕事につながる可能性があるからです。

ただしホームページやSNSに関して過大な期待を抱くのはやめましょう。

検索上位になるようにSEO対策に力を入れる、SNSのフォロワーを増やすために毎日、何時間も割くなどは本末転倒です。

Webによる成功事例についての書籍や記事も目にしますが、人それぞれであり再現性が高いとはいえないからです。士業であれば、地道に営業活動をして実務能力を磨いていくのが成功の近道であると思われます。

プラスアルファとして考えるのはよいですが、それだけで顧客を増やせるほど簡単ではないと考えます。またホームページを開設すると、SEO対策会社など様々な業者から営業をかけられる可能性があります。すべて話を聞くなというわけではありませんが、あっさりと承諾するとあっという間に貯金が減ってしまうので留意してください。

佐藤 敦規 社会保険労務士

(※写真はイメージです/PIXTA)