コロナ禍に入ってから、“近隣トラブル”はますます増えているそう。


 今回は、そんなご近所トラブルで身の毛がよだつ思いをした女性から話を聞きました。


◆マンションから戸建て生活へ
 原田愛美さん(仮名・38歳)は、夫と小学5年生の息子との3人暮らし。


「子育てがひと段落して余裕ができたのもあって、犬を飼い始めたんです。それで、当時住んでいたマンションでは狭く感じるようになったので、思い切って戸建てを探し始めました」


 新しい家族と快適に暮らせる戸建て物件を探していたところ、ちょうど2階にベランダのある築浅の中古の一軒家を見つけたそう。


「築1年10ヶ月の新古の注文住宅で、息子の学区内。2階リビングに広めのベランダがあったので内覧した瞬間にビビビッときて。私たち家族が希望していた条件がすべて揃っていたので即決しました」


◆匿名で届いた謎の手



 晴れやかな気持ちで新しい家での生活をスタートさせた愛美さん。特に2階のリビングは想像以上に過ごしやすく、ベランダを開放して愛犬との生活を楽しむことが多かったそう。


 しかしその1年後、新生活の気分を一転、暗くする出来事が起きることに……。


「新しい家での生活に慣れてきたのもあって、週3日のランチタイムだけ、個人でやっている洋食屋さんへパートに出るようになったんです」


 そんなある日、愛美さんがパートから帰ってくると、ポストに差出人の記名のない手紙が届いたといいます。愛美さんは「誰からの手紙かな?」と軽い気持ちで封を開けました。


「名前の書き忘れだと思っていました。印刷された宛先は私宛てだったので、あの時はあまり深く考えずに、開けてしまいましたね」


 愛美さんが手紙を開くと、ちょうど手紙の真ん中部分に『犬が、うるさい』と印刷された文字が貼り付けてあったそう。


「印刷した文字を切り貼りしたような感じの手紙でした。よくテレビで誘拐犯が送るような……。文字は白黒でしたが、あんな感じの切り貼りで。見た瞬間、鳥肌が立ちました」


◆近所に住んでいるであろう差出人に怯える日々
 愛美さんは、仕事から帰ってきた夫に相談します。


「そしたら夫が、『これさぁ、なんかおかしくない?』って。よく見たらその手紙の封にある切手の消印がね、うちの近所の郵便局のものだったんですよ。確かによく考えてみたら、犬がうるさいってそんな苦情、近所の人に決まっていますよね」


 手紙の差出人が近所の誰かがだと確信した愛美さんは、怖くて家から出られなくなりました。家から出るのはゴミ出しくらいで、週3のパートも休ませてもらっていたそうです。


「引っ越して1年経っていましたが、近所付き合いはほとんどしていませんでした。会った時に挨拶を交わす程度でしたね」


◆差出人の正体が判明!ある女性が来て…



 「その手紙が届いてから2週間くらい経った頃ですかね、隣の家の奥さんが来て『変な手紙が届いていませんか?』って聞いてきたんです」


 隣に住んでいたのは、子どもが大きくなり家を出て2人で暮らしている老夫婦。


「『なぜですか?』って私が言ったら、夫の部屋に “犬がうるさい” と文字印刷した紙が何枚もあったこと、普段からうちがベランダで犬を遊ばせていることをよく思っていなかったことを話してきて。


 もう、『えー!』って感じでした。手紙の件があってからも、何度かゴミ出しのときに挨拶をしていたので……まさか、あの人だとは」


 手紙が届いたことを伝えると、隣の家の奥さんは動揺してその場で泣き崩れてしまいます。愛美さんは自分の親よりも年上の女性が泣き崩れている姿を見て、どうしていいか分からなくなったそうです。
 
 それからしばらくして、隣の老夫婦は引っ越していきました。


 気になっても直接言えないのが近所の住民への苦情かもしれません。だからと言って、匿名で手紙を出して相手に大きな不安と恐怖を与えるのは、良い方法とは言えません。


 犬の鳴き声などの騒音については都道府県市区町村などの自治体が苦情の窓口を設けていることもあるよう。また、町内会などの自治会に相談し、回覧板などを回してもらうなどの方法もあるようなので、まずは第三者に相談することを検討してみるといいかもしれません。


<取材・文/maki イラスト/ズズズ@zzz_illust