1月24日、『FORSPOKEN(フォースポークン)』が発売となった。

参考:【画像】魔法を駆使した迫力の戦闘や爽快な移動も

 壮大な世界観や美しいグラフィックなどが初出時から注目されてきた同タイトル。その構成要素を紐解いていくと、課題を抱えたままリリースされたいくつかの話題作との共通点が見えてきた。

■現行機のスペックをフル活用した待望のAAAタイトル『FORSPOKEN

 『FORSPOKEN』は、Google・Stadia版『FINAL FANTASY XV』の開発に携わった新興のディベロッパーLuminous Productionsが手がける、オープンワールド・アクションRPGだ。舞台となるのは、ファンタジーが現実になったかのような異世界「アーシア」。プレイヤーはある日突然そこへ飛ばされてしまった主人公・フレイとなり、魔法の力を駆使しながら、元の世界へ戻る方法を探す。最新ハードのスペックを活かしたスタイリッシュなアクションが特長で、発売元のスクウェア・エニックスによると、「物語主導のアドベンチャーになっている」とのこと。壮大な世界観を余すところなく表現するため、脚本や音楽、出演陣には、各界の第一線で活躍する面々が集まった。

 同タイトルは2020年6月、PlayStation 5(以下、PS5)向けの新作情報番組において、『PROJECT ATHIA(プロジェクト アーシア)』の名で発表された。当初、2022年内にリリースとされていたが、2度にわたり、発売日を延期。存在が明らかとなってから2年半という長い期間を経て、ようやく発売へとこぎつけている。また、ソニー・インタラクティブエンタテインメントは2020年12月、コンソール版の独占期間が2年となることを公言している。2023年1月24日の発売時点では数少ない、PS5単独リリース(※)のタイトルとなった。

※独占はコンソールにおいてのみ。同日付でPC(Steam/Epic Games Store/Microsoft Store)向けにもリリースされている。

■『FORSPOKEN』は悪しき伝統をはねのけられるか

 先に述べたように、『FORSPOKEN』は2度の延期を経て、ようやくリリースにこぎつけている。スクウェア・エニックスはこうした発売日の変更について、「さらなるクオリティアップ」「最終調整」と説明。当初の予定から8か月遅れで、ようやく世に送り出されることとなった。

 一見すると、「ユーザーの体験に対し、誠実に向き合った結果」のようにも感じられる制作側の対応だが、近年のゲーム業界では、同様の理由による発売延期が相次いでいる。満を持してリリースを迎えたものの、「クオリティアップ」とは名ばかりでバグだらけだったというケースも少なくない。ありがちな公式からのアナウンスは実質的に、表面だけをとりつくろった“美辞麗句”となってしまっている現状だ。背景にはおそらく、ハードの能力を最大限活用しようとすることによる要求スペックの肥大化と、それによる開発陣への負担の増加があるのだろう。「先進的な要素を盛り込めば盛り込むほど、バグなしのゲームは開発できない」という実態が、ひとつの業界課題となっている。AAAタイトルならではのジレンマが、そこにはあるのかもしれない。

 注目作のバグ問題をめぐっては、2020年発売のCD ProjektによるアクションRPG『サイバーパンク2077』の失敗が記憶に新しいところ。当時、屈指の注目作として話題をほしいままにしてきた同タイトルは、リリースまでの過程のなかで、3度にわたり発売を延期。当初の予定から8か月後にやっとプレイヤーの手に届けられた。しかしながら、いたるところに致命的なバグが見つかり、各プラットフォームのストアを巻き込んだ返金騒動に発展した。その後、幾度もの修正アップデートを経て、ようやく本来の評価を受け取れるだけの状況が整いつつある。

 『サイバーパンク2077』に比肩するほどの例にはなり得ないが、カナダディベロッパー・BioWareが手掛けた協力・対戦型のアクションRPG『ANTHEM』(2019年発売)や、アメリカのディベロッパーBethesda Softworksが手掛けた「The Elder Scrolls」「Fallout」の両シリーズなどもバグの多い(もしくは多かった)作品として有名である。

 『FORSPOKEN』を含めたすべてに共通するのは、AAAタイトルであり、オープンワールドの要素を取り入れている点だ。特に『サイバーパンク2077』とは、度重なる発売延期を経験してきたという共通項もある。悲しいかな、8か月という延期期間もぴたりと一致してしまっている(もちろんこれは作品のクオリティに関係のない数字だが)。最近では、初のオープンワールド化を盛り込んだ「ポケットモンスター」シリーズの最新ナンバリング『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』もリリースとなったが、これまでのシリーズ作品(少なくとも前作『ポケットモンスター ソード・シールド』)にはあまり見られなかったバグ・処理落ちなどが散見され、話題となった。

 『FORSPOKEN』は、AAAタイトル、オープンワールド、発売延期といった構成要素の悪しき伝統をくつがえし、注目度に見合った結果を残せるか。同タイトルが潮目を変えてくれることを期待したい。
(結木千尋)

『FORSPOKEN』より