着用基準が緩和されたら、6割がマスクをはずす意思を見せているけど......
着用基準が緩和されたら、6割がマスクをはずす意思を見せているけど......

コロナの5類への移行に伴って、マスクの着用基準も緩和されそうだけど、みんなははずす予定? そして、周りのみんなははずせると思う? 世の声を聞いてみた!

【図】20代~50代の男性会社員600人アンケート結果

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■現状のマスク生活どんな感じ?

5月上旬予定でコロナの感染症法上の位置づけが5類に移行され、それに伴ってマスクの着用基準も緩和されるようだけど、本当にこのタイミングでマスクをはずせそう? アンケートでみんなのリアルな声を聞いてみた!

まずは、マスク着用の現状について。マスクをはずしたい?の質問には、65%程度の人がはずしたいと回答。ちなみに、週プレが同じアンケートを昨年7月に実施したところ、80%程度の人がはずしたいと答え、当時より減っていることが判明。ただ、こんな理由が。

「今はマスクをしていると暖を取れるから、はずさなくてもいい」(34歳・東京都)と、季節的な影響も少なからずあるようだ。

では、マスク着用率はというと、電車など公共交通機関では、つけている人が95%超え、職場内でも9割を超える人が着用。マスクの着用が不要とされている条件下の屋外でも、場面を見てはずしている人は多いものの、つけていると答えた人が9割に上った。マスクをはずさない理由として1位は「みんなつけているから」。

こうした状況を分析してくれたのは、明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井 靖先生。

「コロナ禍初期では、同調圧力によってマスクが着用されていた面もありましたが、今は少し心理的なフェーズは変わっていて、個人の習慣化が理由だと思います。

心理学的に習慣化には、

①手軽。

②日常に大きく影響しない。

③行動にメリットが伴う。

という要件が必要ですが、マスク着用はこれらを満たしています。①手軽=今やどこでも手に入る。②日常に大きく影響しない=慣れたので、マスクをしていても日常のコミュニケーションや仕事ができるようになった。③行動にメリットが伴う=感染予防の安心感や、髭、メイクが適当でもいいなど。

一度習慣化した行動は無意識の作業になるので、『やめたい』と意識的に思っても、なかなかやめられるものではありません。健康に悪いな、無駄だな、と思っても暴飲暴食や無駄遣いをやめられないのと同じです。

ちなみに『みんなつけているから』というのは『もはや理由なんてない』と同義。ルーティンに特別な理由はないですよね」

続いて、マスクをはずしている人を見るとどう思うか?の質問に対しては、何も思わないと答えた人が1位だったものの、距離を置きたいと思う人がほぼ同数の2位という結果に。藤井先生が続けて分析してくれた。

「マスクをはずしている人に忌避的になるのは、『きっと変な人だ』『関わると面倒なことが起きそう』という、その人に対するアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が原因だと思います。

これはSNSの影響も大きいでしょう。反マスク・反ワクチンの人がSNSで過激な言説を展開していたり、肯定派と日々ケンカをしていますよね。人は基本、親和欲求があります。日常では安心や共感を求めたいので、こうした感情が湧くのでしょう」

ここまでの話をまとめると、この春、急にみんなマスクを一斉にはずすことはかなり難しそう......。

着用基準が緩和されたらはずすか?と聞いてみたところ、はずす、はずせると思うと答えた人は6割程度。周囲の人ははずすと思うか?の質問には、はずすと思う、はずさないと思うが半々という結果に。こんな感じで割れた場合、どちらが優勢になる? 藤井先生に話を聞いた。

「おおよそ半数同士になれば、メディアやSNSを含め、論争は起こると思います。ただ、その論争は割と見せかけで、実際にはコーシャスシフト(安全志向が強まる)が起こる可能性が高いと考えます。 

やはり、日常では安心や共感を求めたいですから、ローリスクな行動を取る選択をするでしょう。つまり、マスクをつけるほうがマジョリティのままでいそう。

ただ、それはあくまで5:5の場合で、つけない:つけるが6:4にでもなれば潮目が変わる可能性があります。理論上は、6のほうへの同調性が起こります。しかし、ここまで習慣化されていると、8:2もしくは9:1くらいという情報や実感がないと難しいのではと思います。それくらいマスクは意識とは別に生活に根づいています」

そして、気になるのは、政府からの通達にどれだけ影響があるのかということ。マスク着用基準の変更通達に意味はあると思うか?の問いに、意味がある、意味がないがこちらも半々に割れる結果に。こんな声が届いた。

「いくら政府に言われたところで、会社から通達がないと、会議でみんながマスクをはずしている状況が想像できない」(39歳・東京都

では、心理学的にどうすれば、マスクをはずしやすい状況が生まれる? 藤井先生に聞いた。

「この方のおっしゃるとおり、まずは、会社や学校など小さなコミュニティの中でルール化して一斉にやることが大事。

やはり、人が気にするのは、多くの他人ではなく、身近な人の評価です。そのほかに、変化が段階的であること。マスク以外の代替行動を用意すること。が必要。その上で一番大事なのは、マスクをはずしたときに〝プチハッピー〟があること。以上を踏まえ、会社だと、

①まずは無言で作業する時間にノーマスクタイムを一斉に実施し、徐々に長くしていく。

②新しい空気清浄機を導入したり、抵抗力を上げるサプリメントを配布する。初めは口が見える透明マスクでもいいことにする。

③マスクをはずしたときはとにかく楽しい話をして場が盛り上がるようにする。

というような具体例が考えられます。

あとは、脱マスクについて率直に考えを共有する機会があってもいいと思います。直接話すと『なんだみんな、はずしたい気持ちがあったんだ』ということが共有できて、安心してはずせることにつながることもあるでしょう」

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果たして、世の中の動きはどうなるのか? 今年の真夏はさすがにマスクをはずしたいよなぁ......。

取材/渡辺ありさ 写真/PIXTA 時事通信社

着用基準が緩和されたら、6割がマスクをはずす意思を見せているけど……