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なぜ氷上で試乗? 滑らせてわかること

毎年冬に開催されている試乗会、ニッサン・インテリジェント・ウインター・ドライブ。今年は長野県の標高1540mの山の上、カチカチに凍り付いた女神湖の湖面で開催された。

【画像】アリア、サクラ、エクストレイルにフェアレディZ【氷上に咲く「技術の日産」】 全82枚

この試乗会は近年さまざまなパワートレイン、そして駆動方式のモデルをラインナップしている日産車の本質を知るまたとない機会といえる。

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長野県の女神湖の湖上で開催されたニッサン・インテリジェント・ウインター・ドライブ。路面のミューが極端に低くなる氷上では、クルマの素性の部分がドライバビリティに如実に反映されるという。

路面のミューが極端に低くなる氷上では、スタッドレス・タイヤをもってしても大したグリップは期待できない。

その代わりにパワートレインや駆動方式、駆動力制御、前後重量配分といった素性の部分がドライバビリティに如実に反映される。

これは普段、一般路の試乗では体感できないものである。

今回の試乗車はeパワー(発電用エンジンを積むシリーズハイブリッド)の電動AWDモデルであるノートとキックス

同じくeパワーのオーラはAWDとFFの両方が用意されていた。

さらにはBEVの軽自動車であるサクラと話題の後輪駆動スポーツカーフェアレディZも顔を揃える。

だが中でも注目の1台は、昨年6月にデビューしたBEVのクロスオーバーであるアリアのAWDモデル、アリアe-4ORCE(eフォース)である。

車体の前後に駆動用モーターを備え、ブレーキとともに四輪の駆動を統合制御するe-4ORCE。最新の駆動システムの真価を体感するには氷上が最適というわけだ。

またBEVのアリアに対し、同じく前後モーターのe-4ORCEを備えるが、パワートレイン自体はeパワーの新型エクストレイルとの比較も興味深い。

巧みな姿勢制御 実力を示したアリア

アリアB9 eフォース・リミテッドが最初の試乗車だった。

スラロームや定常円でアリアをドライブしてみて最初に感じたのは、氷上らしからぬ安定感の高さだ。

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EVの日産アリアにも試乗。

ゆっくりとドライ路面を走っている感じで挙動も穏やか。パワートレインブレーキのシームレスな制御はその仕事ぶりをほとんど感知させない。

一方、定常円のコーナリングではとにかくよく曲がる。

直径15mくらいまではステアリングで旋回している感覚が強いが、さらに円が小さくなるとベクタリングが効果を発揮し、まるでコマのように小回りできるようになる。

このようなeフォースの仕事ぶりが体感できるのは、まさに氷上ならではといえるだろう。

一般路でもeフォースはドライバーが狙った走行ラインを忠実にトレースするため、綿密な仕事をこなしているに違いないのだ。

また運転が意のままになるということは、氷上におけるドリフトコントロールが容易ということを意味する。

前51:後49という優れた前後重量配分も手伝ってほぼ真横にスライドするような圧巻のドリフトも楽しめた。

エクストレイルのeフォースはやはり滑りやすい路面でベクタリング機能が効率よく働き、直進したいor曲げたいという乗り手の意思を上手く汲み取ってくれる。

だがエクストレイルに乗って最も感心させられたのは、ハンドリングの制御や乗り心地に関して、アリアがどれだけ優れているかという部分だった。

やはり滑りやすい路面はクルマの素性を浮き彫りにするものなのである。

氷上に咲く個性 痛感するFR車の難しさ

車重が2t前後になるアリアやエクストレイルに比べ、まるでライトウェイトスポーツカーのように積極的なドライブが楽しめたのは車重1.5tを切るノートとキックスのX FOUR(4WD)兄弟だった。

モーターの出力はフロント116ps(キックス136ps)、リア68psといえばFF的な挙動を見せそうなもの。

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新型日産フェアレディZも用意されていた。

ところがそこは前後の駆動力に機構的な関連がない電動駆動車の強みで、コーナーで前輪が限界となればリアモーターが存在感を増しハンドリングを助けてくれる。

車重も軽いのでスライドも比較的短い距離で収まり、自信をもってドライブできるという点も頼もしい。

サクラはBEVで駆動方式はFF。

ところが氷上で感じる質感は骨太な感じがして、普通車と同じタイミングで軽自動車を試乗した時に感じやすい薄っぺらさがない。

エンジンの振動や音がないのはもちろんだが、スロットルを踏んだ瞬間からリニアに溢れ出す64psとミューが低い路面の相性もいいのだと思う。

個人的に初めて触れるフェアレディZは写真で見るより鋭く、カッコ良かった。

氷上におけるドライバビリティは、FR車らしくまさに針の穴に糸を通すような難しさ。

とはいえ見方を変えれば、スポーツカーはドライバーの仕事が多くて当然、それを楽しむものという局面もある。

またZの6速MTを操っていると、電動のAWDがいかに滑らかで、滑りやすい路面の走りを助けてくれているかを思い知らされる結果になった。

年を追うごとに「技術の日産」の面白味が再び増してきていることがわかる氷上試乗会。

今年も目いっぱい汗をかき、日産車の本質を実感できたのだった。


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