その銀河の光は136億年かけて地球までやってきた。最果ての銀河「GLASS-z12(GHZ2)」は、これまで発見された銀河の中で最遠かつ最古のものだ。
チリのアルマ望遠鏡でこの銀河を調べたところ、その光がビッグバンからわずか3億6700万年後のものであることがわかったという。
まだ宇宙最初の光が灯っており、まさに宇宙全体へ広がろうとしていた時期のことだ。
これによってジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測が裏付けられた。これは宇宙黎明期にあった元素の起源を知る重要なヒントになるそうだ。
最果ての銀河「GLASS-z12(GHZ2)」は、昨年7月に稼働から間もないジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)によって発見された。
遠方から届く光は、電磁波の波長がドップラー効果により長くなり、宇宙の膨張の影響で、波長が赤へ偏って見える。これを「赤方偏移」という。
これをヒントにGLASS-z12の距離を推測すると、ビッグバンからほんの3億5000万年しか経っていない、宇宙黎明期の銀河だろうと考えられた。
だが、赤方偏移だけでは銀河の年齢の決定的証拠にはならない。それが本当に正しいのか確信するには、「スペクトル線」というもっと直接的な証拠が欲しい。
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そこで、名古屋大学のトム・バックス氏や国立天文台のジョージ・ザバラ氏らは、チリにあるアルマ望遠鏡でGLASS-z12を観測してみることにした。
アルマ望遠鏡が検出したスペクトルを分析した結果、GLASS-z12はビッグバンからほんの3億6700万年後に誕生しただろうことがわかった/NASA/ESA/CSA/T. Treu, UCLA/NAOJ/T. Bakx, Nagoya U
酸素の特有のスペクトル線で銀河の距離を算出
研究チームが探したのは酸素のスペクトル線だ。
酸素に光が進入すると特定の波長を放出し、酸素特有の明るい線を残す。これが銀河の距離を知る決定的な手がかりなのだ。
また酸素は比較的短時間で作られるので、初期宇宙の銀河を知る手がかりとしてよく使われるものだ。
そしてアルマ望遠鏡の観測では、確かにGLASS-z12の近くで酸素のスペクトル線が見つかった。その分析によると、GLASS-z12が誕生したのはビッグバンからほんの3億6700万年後のことだと考えられるという。
奇妙なことに、アルマ望遠鏡がとらえた酸素の痕跡と、JWSTがとらえたものは、わずかに位置がズレていたそうだ。
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バックス氏によると、このズレのために当初アルマ望遠鏡の観測結果の正しさが疑われたが、詳しく検証したところ、それが確かなものであることがわかったとのことだ
位置がズレている原因は、激しい爆発などによって、銀河から大量のガスが吹き飛ばされたからではと考えられている。
宇宙黎明期の星の進化を知るヒント
もう1つ明らかになったのは、この銀河では水素やヘリウムよりも重い元素が比較的早く作られていたただろうことだ。
まだ星が誕生していないごく最初の宇宙は、ほとんどが水素と少量のヘリウムでできていた。だがやがて星が形成されると、高温・高密度の核で原子がぶつかり合い、もっと重たい元素が作られた。
ただしそうした元素は星に閉じ込められており、宇宙に広まるようになったのは、星が寿命を終え、超新星爆発を起こしてからのことだと考えられている。
ところが、誕生間もない宇宙にすでに酸素があったのだ。この事実は、宇宙に初めて星が誕生した時期や、その後の進化について知る新しいヒントになることだろう。
今回、JWSTが見つけた宇宙で一番遠く古い銀河の存在が、アルマ望遠鏡によって裏付けられた。
研究チームによれば、2つの望遠鏡を組み合わせることで、誕生まもない宇宙にもっと近づけるだろうとのことだ。
この研究は学術誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2022年12月23日付)に掲載された。
References:Astronomers confirm age of most distant galaxy with oxygen | The Royal Astronomical Society / Scientists Reveal The Most Distant Galaxy We've Ever Found : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
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