不在時でも、宅配業者が玄関先や宅配ボックスなどに荷物を置いて配達する「置き配」が定着してきました。受け取り側は自宅で配達を待つ必要性がなくなる一方、玄関先に荷物を置くことで、盗難など新たなリスクも生じると思います。配達業者と「置き配」での配達に合意して、届いた荷物が盗まれた場合、法的責任はどうなるのでしょうか。長時間、荷物を玄関先に置いていたことで、受け取り側に責任が生じるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

基本的に賠償は求められない

Q.「置き配」に合意して、届いた荷物が盗まれた場合、法的責任はどうなるのでしょうか。長時間、荷物を玄関先に置いていたことで、受け取り側に責任が生じるのでしょうか。

牧野さん「『置き配』されることと、そのリスクを受け取り側が負担することについて、利用規約で合意している場合、長時間、荷物を玄関先に置いていたか否かを問わず、受け取り側に責任があります。そのため、宅配業者や売り主へ損害賠償を求めることはできないでしょう。

例えば、利用規約に『置き配を指定した場合、在宅状況にかかわらず、指定された場所に商品を置いた時点で配送が完了となり、商品のお届け義務を果たしたものとする。指定された場所への配送が完了した後、商品の紛失、盗難、汚損、破損、荷札に記載された情報の漏えい等による損害について、一切の責任を負わない』と規定されていて、その規約に受け取り側が合意している場合です。

一方で、利用規約が明示されていない場合でも、受け取り側が置き配を指定した段階で、商品を置いた時点以降の盗難などのリスクを、受け取り側が引き受ける意思があったと原則的には解釈されるでしょう」

Q.置き配の荷物が盗まれた場合、賠償してもらうことはできないということですか。

牧野さん「先述したように、利用規約で受け取り側に盗難リスクの負担責任があるとされる場合、宅配業者や売り主へ損害賠償を求めることはできません。

しかし、例えば、『個人用火災総合保険』の補償対象に、置き配された商品の盗難被害を追加するなど、損害保険に加入していれば、保険会社へ荷物の購入金額の保険金を請求することができます」

Q.置き配で配達業者が全面的に責任を問われるケースはあるのですか。ある場合、どのようなケースですか。

牧野さん「受け取り側が、置き配の盗難リスクを負担する利用規約に同意している場合でも、配達業者が、商品を引き渡すまでの間に必要な注意を怠ったとして、責任を負うケースがあります例えば、間違った指定場所に置いて盗難にあったり、悪天候の中、雨風にさらされる場所に置いてしまい、商品がぬれて使えなくなったりした場合などです。

配達業者は、商品を引き渡すまでの間に商品がなくなってしまった場合、受取・運送・保管・引き渡しのすべてについて、注意を怠らなかったことを証明しなければ、損害賠償責任を負うからです(商法575条)。

また、配達業者が受け取り側の合意がないのに、勝手に置き配をして荷物が盗まれた場合、配達業者が責任を負う場合があります。合意していない方法で配達された債務不履行で損害(盗難)が発生したとされ、配達業者は、商品を引き渡すまでの間に必要な注意を怠ったとして、責任を負う可能性があるからです」

Q.もし、置き配を依頼していた荷物の配達履歴が届いたのに荷物がない場合、どのような対応をすればよいですか。

牧野さん「まずは配達業者へ連絡します。荷物の配達状況を聞き、盗まれた可能性があると確認したら、警察に被害届を提出すると同時に、配達業者へ補償を求めてみます。防犯カメラの映像から、犯人が特定できる可能性があり、保険金の請求で被害届が必要となる場合もあるからです。顧客サービスの一環として、置き配の盗難の場合に、売り主や販売会社が再配達や返金をしてくれる場合がありますので、利用規約を確認してみましょう」

オトナンサー編集部

「置き配」の荷物が盗まれたら?