◆10年間禁止された宣伝活動

 パチンコホールの広告宣伝に関するルールが10年振りに更新され、この10年間禁止されていた宣伝活動が出来るようになった。

 パチンコホールの広告宣伝は風営法で厳しく規制されており、青少年の健全育成に害する広告宣伝や、客の射幸心を著しく煽る広告宣伝等は、平成24年警察庁が定めたルールによって強く禁じられていたのだが、本年1月25日警察庁HPに公開された当該通達内容が大きく変わり、パチンコホールの広告宣伝の幅が大きく広がった。

 警察庁は、「風営適正化法等に違反する態様の広告・宣伝が認められないことは従来と変わりませんが、これまで様々な事情から生じていた地域差をできる限り解消するとともに、他業種では行われているような一般的な広告・宣伝ができなくなることのないようにしたいと考えています」(全日遊連1月度理事会での警察庁保安課長の講話より)と、事前に広告宣伝ルールの変更を示唆しており、今回その内容が正式に公開された。

◆新たに実施できるホールの広告宣伝

今回、風営法に抵触しないと新たに実施を許可されたパチンコホールの広告宣伝は6つ。

①国民的行事、地域の行事及び創業記念に関する広告及び宣伝

②遊技機に関する広告及び宣伝
・機種に応じて遊技機のサイズ等に差異を設けて表示すること
・設置している遊技機の一部機種のみを表示すること
・7図柄が揃っている状態等の遊技機を表示すること

③遊技機性能に関する広告及び宣伝

④遊技結果に関する広告及び宣伝

⑤営業時間に関する広告及び宣伝

駐車場における行事に関する

 今回特に注目されたのが、④の遊技結果に関する広告宣伝である。

 大阪などの一部地域では認められてきたものの、多くの地域では射幸心を煽ると禁止されていた「出玉ランキング」の掲示掲載が認められた。これによりそのパチンコホールがどの機種に力を入れているのかが分かりやすくなり、客側も狙い台を絞りやすくなる。このランキングLINE@等のスマホを利用した宣伝にも転用でき、今後、近隣店舗間で出玉アピール合戦が行われることも予想される。

 ④以外にも、①のお正月クリスマスハロウィンや地元のお祭りにかこつけた営業広告も展開出来るほか、「本日10000発突破」等、その日の出玉量を刺し札にしてアピールすることも可能になった。

パチンコホールからは歓迎の声

 パチンコホールはこの10年間、広告宣伝を厳しく規制され続けてきた。遊技人口の減少、ホール数の半減、売上の低下。見事なまでの下降線を描くパチンコ業界。その下降線の理由は多々あれど、広告宣伝の厳しい規制は、間違いなくパチンコホールの首を絞めた。

 神奈川県ホールの店長の言葉。「今回のルール変更の内容を見た時、始めは信じられなかった。ここまで許されるんだ。これならお客さんに十分にアピールが出来るし、まだもっと頑張れる気がする」。

 パチンコをしない人にはなかなか伝わらない言葉であるが、他のお店が普通に出来る宣伝を、風営法という法律にがんじがらめにされていたパチンコホールは何一つ出来なかった。しかしこれからは「おすすめ機種」や「創業記念日」などの宣伝も許される。客離れが深刻なパチンコホール関係者にとっては、まさに起死回生のルール変更である。

◆逸脱するホールに懸念する声も

 一方で、急激なルール変更に危機感を露わにする業界関係者もいる。

「間違いなく今回のルール変更はパチンコホールを救うと思う。でも変更されたルールが許す範囲を勝手に拡大解釈したり逸脱したりして、脱法広告やグレーな表現、コアなファンにしか分からない隠語の使用なんかをやるホールも出てくる。それがパチンコ業界の常だと言われれば確かにそうかも知れないけれど、なんでもありのような状態になると、すぐにまた警察から締め付けられる」

 客の射幸心を煽ってこそのパチンコ。しかし客の射幸心を煽り過ぎれば元の木阿弥。

 全国のパチンコホールがどれだけ足並みを揃えて新ルールを運用できるのかが業界の未来を左右する。

<文・安達 夕

【安達夕】
フリーライター twitter:@yuu_adachi

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