コロナ禍以降、すっかり日常化した「マスク生活」ですが、マスクをつけていることで、「自分の口臭をダイレクトに感じるようになった」「口が臭いことに気付いてショックだった」など口臭を強く自覚するようになった人や、「マスクをするようになって、口臭が強くなったかも…」「口呼吸のせい?」と感じる人もいるようです。

 マスクの着用が原因で、口臭が強くなることは実際にあるのでしょうか。吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事で歯科医師の園田茉莉子さんに聞きました。

口の中が乾燥すると、細菌が繁殖し…

Q.そもそも、口臭の正体とは何でしょうか。

園田さん「口臭の正体は、ガスです。主には揮発性の硫黄化合物で、代表的なものは硫化水素やメチルメルカプタンなどです。重度の歯周病の人に口臭があるといわれるのは、歯周病の原因菌がメチルメルカプタンを多く発生させるためです。

『舌苔(ぜったい)』と呼ばれる舌の上の汚れ(細菌)も、大きな原因といわれます。舌苔は、口の中の古くなった粘膜や食べ物のカスなどの汚れに、細菌が集まって腐敗したものです。舌の上を掃除しないと厚くたまり、より強い臭いを発します。細菌が多いほど、悪臭の程度も強くなります。

口臭の原因のほとんどは口の中にありますが、内臓からのガスによるものもあります。ニンニクを食べると、アリル化合物セレニウム化合物などのガスが発生し、血液に乗って体内を回り、肺で呼気に混じって口臭となります。また、内臓の病気でも臭いが出ることがあります。健康な人でも内臓から出るガスは多くありますが、口臭の原因となるほどの濃度ではありません」

Q.マスクをしていると、自分の口臭を自覚しやすいのは事実ですか。

園田さん「実際にあることだと思います。自分で口臭を確認する方法として、両手やカップの中に息を吐き出して臭う方法がありますが、吐いた息がある程度とどまっている状態でないと、自分では臭いを確認しにくいのです。つまり、マスクをすることで、自分が吐いた息がマスクの中にとどまり、臭いを自覚しやすくなるといえます。口臭チェックの一つの方法となるかもしれません。

自分の体から発する臭いには次第に慣れ、臭いを感じなくなってしまいます。口臭は、会話などで外に吐き出されてもすぐに外気と混ざるので、本人が感じ取ることは難しいでしょう。しかし、他人からすれば、日常的に感じる臭いでなければ“異臭”として感じ取れます。そのため、口臭は通常、他人に指摘されることが多いのも事実です」

Q.マスクの着用によって、「口臭が強くなる」ことは実際にあるのでしょうか。

園田さん「マスクが直接、口臭に影響を与えることはありませんが、もし、口呼吸になっているなら影響が出るかもしれません。口呼吸鼻呼吸と比較して、口の中が乾燥しやすいからです。

唾液には、口の中の潤いを保つ他、抗菌作用もあります。口の中が乾燥すると唾液の作用が低下し、細菌が繁殖してしまいます。舌苔も厚くなりやすく、口臭は強くなるでしょう。

ずっとマスクをしていると、普段と比べて呼吸がしづらいと感じることがあるようです。口呼吸鼻呼吸よりも、一度に出入りする空気の量が多いので、つい口呼吸になってしまうのかもしれませんが、できる限り、鼻呼吸を意識することで口臭を予防できます」

Q.自宅でできる口臭のセルフケア方法を教えてください。

園田さん「お口の清掃方法をいま一度、見直してみましょう。重度の歯周病や大きな虫歯など、歯科医院でないと治療できない場合もありますが、歯肉炎や舌苔はセルフケアでも改善できます。歯肉炎対策には、歯と歯茎の境目を磨くこと、また、デンタルフロスや歯間ブラシの併用も大切です。補助的に洗口液を使うのもよいと思います。

舌苔は『舌ブラシ』を使用して清掃しましょう。歯ブラシで舌を磨くと、毛の性質上、舌を傷つけてしまう場合があります。最も汚れのたまりやすい舌の奥の方を掃除できると理想的ですが、初めは嘔吐(おうと)反射が出やすいので、少しずつ慣らしながら奥の方も磨きましょう。

口臭はもちろん、口の中の健康を維持するために、歯科の定期検診はとても重要です。ぜひ習慣化してください」

オトナンサー編集部

マスク着用で「口臭」が強くなる…?