映画「オールド・ボーイ」で主演を務めた韓国を代表する名優・チェ・ミンシクの約25年ぶりのドラマ出演作「カジノ」。同作は、「私の解放日誌」などへの出演で2022年に大ブレイクしたソン・ソックが出演することでも注目が集まっていた。そんな「カジノ」のシーズン1終盤でついに、ソン・ソックが本格的に登場しファンから喜びの声があがった。

【写真】普段のソフトな雰囲気も素敵!製作発表時のソン・ソック

フィリピンで孤軍奮闘することになる警官・スンフン

「カジノ」は、お金もコネも無いところからフィリピンでカジノ王となり君臨したチャ・ムシク(チェ・ミンシク)が、殺人事件に巻き込まれて全てを失い、一転、人生の崖っぷちに追い込まれた後、命がけの最後の賭けを始めることになる物語。ディズニープラス「スター」で、シーズン1の最終話となる8話目が1月に配信された。シーズン2も2023年に配信予定だ。

ソン・ソックは、フィリピンに初代韓国人デスクとして派遣された警官、オ・スンフンを演じている。スンフンは、最優秀警察官賞を2度も受賞したエリートだが、韓国では本庁外事課でデスクワークをしており現場での捜査経験は無かった。しかし、フィリピン韓国人の犯罪率が上がってきた為、韓国人の警官が必要だ、ということで、たった1人で赴任してきたのだった。

■待ち焦がれたソン・ソックの登場

5話のラストで、フィリピンの空港に降り立った彼の姿に、ソック目当てのファンたちは「やっと出てきた!」と歓喜。シーズン1は中盤までムシクの半生記が中心だった為、スンフンの登場まで時間がかかってしまったのだ。

「カジノ」の撮影後半の時期にソン・ソックが映画「犯罪都市 THE ROUNDUP」と、ドラマ「私の解放日誌」でブレイク

監督も彼の人気を把握していたが、「興行面を考えれば、序盤で彼を出しただろうけど、この作品は単純に犯罪者を捕まえる刑事モノではないし、カジノで起きるハプニングの話でもない。1人の人物(=ムシク)を通して、こんな世界があるということを描きたかったんです。だから、視聴者の望みに応えるために編集を変えて彼を早く登場させようとは思わなかった」と、あくまでも内容重視の措置だったことを語っている。

■捜査権無し、拳銃無し、エアコン無しで「損した気分」のスンフン

フィリピンにやってきたばかりのスンフンは、「来させられちゃった」感満載で、暑すぎる気候や異国にたった1人で放り込まれた状況にとまどいを隠せない。社交的ではないようで、現地の韓国人会の集まりや、領事たちとのゴルフの誘いなども負担な様子。

フィリピンの中でも犯罪率が高い地域に赴任させられ、銃犯罪も多く、現地の警官は寝る時も防弾ベストを着ている、などと聞かされるが、韓国から来たスンフンには捜査権が無く、拳銃の支給も無い。おまけに、猛暑の警察署には扇風機しか無く、自腹でエアコンを買うハメとなり、「町も思ったより危険そうだし、損した気分」と愚痴る場面も。

スンフンは作中で「僕の仕事はパトロールじゃなくて、フィリピンの警察と協力して韓国人が絡む犯罪の防止や管理をすることなんです」と説明しているように、本人的には現場に赴くことはあるにしても、捜査権も無いしデスクワークの延長と捉えていたのではないだろうか。赴任当初の彼には緊張感は無く、どこかしらお気楽そうな雰囲気だ。

だが、現地の警察は全く協力する気はなく、事件が起きても後回し。スンフンは、文字通り孤軍奮闘せざるを得ず、“犯罪の防止や管理”では済まなくなっていく。

■英語のセリフはソック自身が翻訳

スンフンを演じるにあたり、一番大変だったのは「セリフの70%が英語だった事」と語ったソン・ソック。中学の途中から大学までアメリカで過ごし、兵役中はイラクのザイトゥーン部隊で半年従事、除隊後もカナダで数年暮らしていて、英語はベラベラの彼でも苦労したようだ。彼の英語のセリフは、韓国語で書かれたモノを自分で英訳したんだとか。翻訳家のセリフでは不自然な部分も多かった為、スンフンのキャラに合った言い回しをソック自身が考えたそうだ。彼の英語が存分に聴けるのも、このドラマの見どころの1つだろう。

本作の監督は、俳優・ソン・ソックについて「自然な演技に卓越した才能がある」と絶賛している。彼が演じる役は「私の解放日誌」の寡黙で影がある“ク氏”も、「最高の離婚」の母性本能を刺激する“ジャンヒョン”も、「マザー~無償の愛~」の最悪なDV男も、「どこかに居そう…」と思わせる。どれもが「自分の中にあったけど一度も表に出してこなかった感情」だからだろうか。そんな部分を演技で出しながら自分自身を知っていくそうだ。今回のスンフンも、当初はスーパーコップのような設定だったが、監督と相談しながら、視聴者が共感できる現実的な人物に変えたんだとか。

シーズン1でのスンフンは、感情の揺れもほぼ無く、淡々と仕事をこなしている感じだったが、「僕も今、それなりに覚醒して成長しているところ」と言うソックが、同じく覚醒して成長していくスンフンをリアルに演じ、新たな魅力で私たちの心を揺さぶってくれそうで、シーズン2が待ち遠しい。

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

ソン・ソック演じるオ・スンフン/(C)2023 Disney and its related entities