俳優、声優、YouTuberとして幅広いフィールドで活躍中の染谷俊之の魅力に迫るWEBザテレビジョンの連載「月刊染谷WEBマガジン」。毎月、深掘りインタビューを敢行し、仕事の近況からプライベートまで、事務所NGギリギリの質問をぶつけて“染様(染谷俊之の愛称)”を丸裸にします。第10回は、2022年の活動を振り返ってもらいました。※本記事の取材は2022年10月に実施したものです

【写真】2022年を振り返る染谷俊之

■濃密な時間を過ごした舞台「A3!」でかけがえのない仲間たちと出会う

──年の瀬ということで、今回は2022年の活動を総括していただこうと思います。まずは1・2月。どんなお仕事をされましたか?

1月は朗読劇「いつもポケットにショパン」をやらせていただいて、映画の撮影も行っていました。「アンコンシャス」というオンライン公開の作品で、中村優一くんとのW主演でした。2月は「REAL⇔FAKE」(ドラマ・映画)のイベントや、「世界遺産劇場」というイベントでリーディングシアター(読み語り)をやらせていただきました。あとは「FLAIR BARTENDER'Z」(ドラマ)の撮影が2月の後半からちょっとずつ始まっていて、こっそりと(カクテルを作る競技の)フレアバーティングの練習もしていましたね。

──その後、舞台「MANKAI STAGE『A3!ACT2!~SPRING 2022~」がありました。春はそれが中心でしたか?

そうですね。他にも「演劇ドラフト会議」(3月)があって、「演劇ドラフトグランプリ」(6月)のメンバーを決めたり、まだ情報解禁はされていないんですが、映画の撮影をしたりもしていました。でも一番ウエイトを占めたのはやはり「A3!」ですね。3月から稽古が始まって、4月に本番を迎えました。

──以前お話を伺った際、「A3!」はすでに出来上がっている世界観に、「途中から参加するということで難しさがある」とおっしゃっていました。実際はどうでしたか?

(出演した公演の)春組のメンバーはとてもいい方ばかりで、すんなり受け入れてくれました。そのあと「月刊染谷マガジン」のゲストにすでに3人を呼んでいます。(立石)俊樹と(前川)優希、(横田)龍儀です。逆に残りの2人(高橋怜也と古谷大和)は、なぜ呼ばないねんって話ですけど(苦笑)。いや、これから2人も呼ぼうと思っています。劇中ではみんなと距離を取っている役だったんですが、普段は全員ガンガンに距離を縮めてくるので、そのバランスが難しかったです。でもそれでよかったとも思っています。仲良くなるのは簡単という状況を作ってくれたので、すごくありがたかったです。

──「A3!」の共演者は年下ばかりでしたが、逆に染谷さんの方からはどのようなコミュニケーションを取ったんですか?

スイーツの差し入れをしました。男性が多い現場だったんですが、それとなくリサーチをしたらみんな甘いものが好きだったんで。みんなでスイーツを食べて、親睦を深めました。舞台が終わったあとも、みんなとちょくちょく連絡を取っています。

──「A3!」を終えて、改めて感じたことはありますか?

台本をもらって最初に思ったのが、セリフが多いなということでした。実際、本番になったら、出番のときはずっと喋っていて、出ていないときは衣装を着替えているか、移動しているかで、休む時間がなくて大変でした。でもだからこそ、やりがいがありましたし、充実した時間を過ごせました。あと、僕が「A3!」に加わる前から、他のキャストがA3!は楽しいと口をそろえて言っていたんですが、参加してみて本当にその通りだと思いました。毎回、「MANKAIカンパニーをぶっ壊す」という負の感情から入って、エンディングに向けて、みんなと家族になっていくというストーリーだったんですけど、(東京、兵庫、香川公演、そして東京凱旋公演とその度ごとに)感情の波を繰り返すのがけっこう大変でした。なので全部終わって、もうやっとみんなと家族のままでいていいんだという思いになって、肩の力が抜けてほっとしました。

■「演劇ドラフトグランプリ」で優勝。新しい経験がまだできると実感した1年

──「A3!」の長期公演(4~5月)が終わり、6月には「演劇ドラフトグランプリ」がありました。染谷さんをはじめ、4人の俳優が座長を務め、4チームで優勝を争うという画期的なイベントでした。染谷さん率いる劇団「ズッ友」はどんな劇を演じたんですか?

3月の「演劇ドラフト会議」でメンバーと共にテーマも決めました。僕のチームは「地図」がテーマになったんですけど、それを聞いて、伊能忠敬がすぐに浮かびました。彼の話を演劇にしたらおもしろいんじゃないかと思ったんです。江戸時代に測量で日本地図を作った偉人なんですけど、それを始めたのが55歳で、そのチャレンジ精神もすごいなと感銘を受けました。それで実際に(会場の)日本武道館で測量をやって、最後に大きな布に日本地図を描いて掲げたら感動するんじゃないかと。僕は無責任にアイデアを出しただけなんですけど、それを演出家の松崎史也さんがすごくステキなストーリーにまとめてくれました。そしてメンバー(赤澤燈、唐橋充、野口準、松井勇歩)にも恵まれて、ありがたいことに優勝させていただきました。すごくうれしかったですね。

──「演劇ドラフトグランプリ」は、来年以降も開催される予定はあるんですか?

そういう話もあるみたいですが、実際はどうなんですかね。もしやるならディフェンディングチャンピオンとして、今回と同じメンバーでやりたいですね。「ズッ友(ずっと友たち)」なんで(笑)。

──7月はドラマ「FLAIR BARTENDER'Z」が放送されました。撮影は2~3月だったそうですが、実際に仕上がった作品を見て、ご自身のカクテルパフォーマンスの出来はどうでしたか?

難しかったので無事に出来て、一番はほっとしました。本番で失敗して、何度もNGを出すのが嫌だったので。緊張はすごくしたんですけど、一度もNGは出さなかったです。出来上がった映像を見ても「思ったよりいいじゃん。数日間の稽古で、よくここまで頑張った!」と自分で自分を褒めてあげたくなりました(笑)。指導していただいたプロの方にも「3~4カ月みっちり練習すれば、プロになれますよ」と言っていただき、うれしかったです。

──続く8月には舞台「クアンタム-TIMESLIP 黄金丸-」がありました。

7月から稽古が始まって、8月に開幕したんですが、新型コロナの影響で東京公演の初日が休演になりました。2日目以降は上演したんですが、続く大阪公演でさらに感染が広がっちゃって、結局そちらは全休に。それに関しては不完全燃焼というか、とても残念でした。

■戯曲音劇に始まり、主演映画の撮影や舞台出演などが続くハードな日々

──その後、9月以降はどんな活動がありましたか?

9月は戯曲音劇「銀河鉄道の夜」をやらせていただいて、あとは映画「パラダイス/半島」(2023年順次ロードショー予定)の撮影です。オール静岡ロケでまだ暑かったんですけど、山もあって海もあって、日本のよき田舎という感じの場所でとても癒やされました。今月(取材当時の10月)から“カミシモ”(舞台「あいつが上手で下手が僕で」シーズン2)の稽古が始まる予定です。

──2022年をざっと振り返っていただきました。どんな1年でしたか?

映像と舞台のお仕事をバランスよくやらせていただいたんですが、波が激しくて怒涛の一年という感じでした。調子としては変わらず、1年間ずっと楽しかったです。あと、今年は例年以上に、俳優をやっていてよかったと思えた年でもありました。例えば「演劇ドラフトグランプリ」でグランプリをいただいたりして、まだこういう新しい経験ができるんだと実感できました。来年はまだどうなるか分かりませんが、変わらずお仕事ができたらいいなと思っています。

取材・文=河合哲治郎

今年1年の振り返りについて語る染谷俊之/撮影=岩堀和彦/スタイリスト=岩田友裕/ヘア&メーク=中元美佳