「顔の赤みが何年たっても取れない」「顔の火照ったような感じがずっと続いている」。こうした症状に心当たりがあったら、それは「酒さ(しゅさ)」と呼ばれる皮膚疾患かもしれません。顔の赤みや火照りに悩まされている人は少なくないようで、「頬やおでこが常に赤いのがすごく嫌」「ファンデーションでカバーできないくらい、赤みがひどくなることがある」「体質の問題?」「治せるなら治したい」といった声もあります。

 顔の赤みや火照りが長期間にわたって続く「酒さ」とは、どのような病気なのでしょうか。アヴェニュー表参道クリニック院長で、皮膚科医・形成外科医の佐藤卓士さんに聞きました。

はっきりとした原因は「不明」

Q.「酒さ」とは何ですか。

佐藤さん「『酒さ』は、赤ら顔を特徴とする慢性炎症性の皮膚疾患です。何らかの原因で皮膚に炎症が起きて、皮膚の毛細血管が拡張し、顔の広い範囲が赤くなって、ニキビのようなブツブツができていきます。鼻や頬など、顔に赤みが広がっている状態が、まるで酒に酔っているように見えることが名称の由来とする説があります。

酒さの原因は、はっきりとは分かっていません。日光や精神的ストレス、ニキビダニ、毛包虫感染症が発症に関与しているようです。ステロイド外用剤を長期に使用することによる副作用で、同様の症状が出た場合は『酒さ様皮膚炎』と呼びます。

酒さは、症状によって次の3段階に分類されます」

【第1度】

鼻先や頬、眉間、顎などに一時的な赤みが出てきます。次第に肌の赤みが持続して出るようになり、毛細血管が拡張して皮脂が増えるようになります。また、かゆみや火照り感が生じ、敏感肌になります。

【第2度】

赤いブツブツや、膿(うみ)をもったブツブツが生じます。

【第3度】

ブツブツが密集し、腫瘤(コブ状)になったり、鼻が凸凹に盛り上がって「鼻瘤(びりゅう)」になったりします。また、毛穴が拡大し、ミカンの皮のような厚みのあるゴツゴツした肌になります。

Q.酒さになりやすい人の特徴はありますか。

佐藤さん「30代以降、中高年の人が発症しやすい傾向にあります。男性よりも女性に多いです。酒さを悪化させる要因として、紫外線▽ストレス▽温度差睡眠不足▽飲酒▽カフェインや香辛料など刺激物の摂取―などがあります。また、ニキビダニやアクネ菌といった皮膚の常在菌も原因と考えられています。肌質としては、脂性肌でありつつ、敏感肌の要素をもつ肌が、酒さになりやすいです。

酒さになる人の血縁者に、同じく酒さの人がいる確率が、そうでない場合に比べて有意に高かったことから遺伝性は認められるのですが、原因となる遺伝子はまだ解明されていません。なお、酒さの人には高脂血症や心臓病、炎症性腸疾患、パーキンソン病、リウマチなどの膠原(こうげん)病といった持病がある人が多いことが報告されています」

Q.酒さによる顔の赤みを放置すると、どうなるのでしょうか。

佐藤さん「酒さは慢性的な皮膚疾患なので、経過はゆっくりとしており、症状も急激に悪化することはありません。そのため、酒さの要因が回避できれば改善する可能性はありますが、放置していると少しずつ症状が悪化することが考えられます。

酒さの人は敏感肌になっているので、肌に過度の刺激を与えることや、悪影響を及ぼす生活習慣を続けることは避けなければなりません」

Q.酒さは治すことができますか。また、皮膚科ではどんな治療を行うのでしょうか。

佐藤さん「まず、『酒さ様皮膚炎』はステロイド副作用が原因であるため、ステロイドの使用を中止することで、時間はかかりますが改善していきます。

一方、酒さの場合は難治性で、慢性の経過となることが多く、なかなか治癒には至りません。まずは要因となるものを回避し、適切なスキンケアを行うことが求められますが、それでも改善の見込みがない場合は皮膚科での治療が必要です。テトラサイクリン系の抗生物質や、漢方薬の内服を行い、『メトロニダゾール』という抗真菌外用薬を塗布します。ステロイドの入っていない抗炎症効果のある外用薬を使用することもあります。また、毛細血管の拡張や赤ら顔の症状軽減には、レーザー照射を行います」

Q.酒さの発症を予防することはできるのでしょうか。

佐藤さん「生活習慣の改善は、酒さの治療や予防に効果的です。まずは先述した、紫外線▽ストレス▽温度差睡眠不足▽飲酒▽カフェインや香辛料など刺激物の摂取―といった要因を、可能な限り回避することです。

また、自身の肌質や体質を理解し、不適切なスキンケアや皮膚への摩擦を避けるとともに、紫外線対策を徹底しましょう。繰り返しになりますが、酒さの皮膚は非常に敏感になっているため、できるだけ刺激を避けることが大事です。洗顔の際は、こすり過ぎで皮膚に刺激を与えないよう、洗顔料をよく泡立てて優しく洗うこと、そして拭き取る際はタオルでゴシゴシせず、肌に優しく押し当てて丁寧に拭き取るようにしてください。外出時は直射日光を避け、日焼け止めクリームをつけて紫外線を浴びないようにしましょう」

オトナンサー編集部

赤みや火照りが特徴の「酒さ」、どんな病気?