秋元康総合プロデュースのもと、Sony Music、ANIPLEXタッグを組んだ“デジタル声優アイドル"22/7(ナナブンノニジュウニ)が、10枚目シングル『神様だって決められない』をリリースし、1/11付けオリコンデイリーシングルランキングでは、キャリア初となる1位を獲得。現在の22/7に向けられているかのようだという同曲に込められたメッセージや、同シングルに収録される紅白ユニット曲の注目ポイントなどをメンバーの天城サリー、麻丘真央、椎名桜月に語ってもらうと共に、8人の新メンバーが加入した2022年の振り返りと2023年以降に掲げる展望を聞いた。


──10枚目のシングルということですが、今回はどんな曲ですか。

天城

9枚目シングルの『曇り空の向こうは晴れている』が、思い悩んでいた子が希望を見つけて、その希望を次の世代に伝えるという曲なんですが、そのアフターストーリーになんじゃないかなと思っています。今作の歌詞では、色々と悩んだりしても、結局は自分の進む道は自分でしか決めることができないから、とりあえずやってしまおう!という、とても前向きな曲です。


──そうなると、歌詞の主人公は同じ人物なんですかね。

天城

私の個人的な意見としては、1stシングルから主人公は変わっていないと思うんです。グループの色が変わっていくのにつれて、主人公の「僕」も成長しているなと感じています。特に、新メンバーが入ってきてくれた9枚目シングルからは、表題曲がとても明るくなったんですよね。それに続く10枚目シングルは、内に秘めている気持ちというよりも、表にメッセージを伝えるような曲。自分自身しか決められないことなんだから、誰に何を言われようと、君はどうしたいの、というように、すごく勇気をくれる曲なんじゃないかなと思います。

麻丘

私もサリーさんと同じように、9枚目の続きの曲なんじゃないかなと思います。それから、22/7の置かれている立ち位置を決めるのはメンバー自身なんだよということを、作詞してくださった秋元康先生からのメッセージにも感じました。自分たちで何かアクションをしないと変わらないよと言われているのかなという気持ちになりました。


──秋元先生は他のグループでもそうですが、メンバーの心境にリンクする詞を当てていらっしゃる印象があります。これまでも秋元先生の詞が刺さったタイミングはありましたか。

天城

そうですね。私がそれを一番感じたのは6枚目の『風は吹いてるか?』です。グループを結成した当初は、メンバーみんな人見知りをしたりして、自分の意見をあまり言い合うことができなかったんですが、6枚目シングルの頃からは、自分の意思をメンバーやスタッフさんに言えるようになってきたんです。この曲を聴いた時には「秋元さんってすごくグループのことを見てくださっているんだ」と改めて感じました。

椎名

前回の9枚目もそうだったんですが、今作は今までのシングルに出てきた歌詞が、より明るく描かれているように感じるんです。『曇り空の向こうは晴れている』で出てきた「空」とか、『風は吹いてるか?』の「風」とか、今までの表題曲に出てきた歌詞が、10枚目で再登場する、みたいな。それはたまたまかもしれませんが、私は秋元先生が意図的に入れてくださったのかなと思っていて。

例えば、以前は「どっちに向かって進めばいいの?」と言っていた22/7の主人公が、「どっちの道を進めばいいか、そんな大事なことは人に聞かないで自分で決めろ」ということを言っていたりして、心境の変化を感じます。

9枚目は、私たち新メンバーが入ってきたことも含め、グループとして変わった部分もあったと思います。先輩たちについていく、という感じだった新メンバーも、この一年ほどで、だんだんとお互いを知っていって、最近は先輩後輩関係なくしゃべれるようになってきました。そんな中での10枚目という節目で、こういう歌詞の表題曲をいただけたことは、すごく意味があるのではないかなと思って歌わせていただきました。


──最初から歌っている天城さんの立場でも、わかりますか?

天城

「どっちに向かって進めばいいの?」って5枚目シングルの『ムズイ』のセリフなんですが、たしかに繋がっているなと思いました。それに、『地下鉄抵抗主義』では「Yes, no 答えは二つ」と言っているんですが、今回の歌詞では「YES or NO 正解は一つじゃない」と言うんです。頑固だった過去の自分を卒業して、視野を広げた感じの曲になっているなと思います。「協調性って言葉は お互いの意見があってこそだ」という歌詞もありますが、今までは「僕の意見なんて」とか、「誰にも打ち明けられない」「友達は欲しくない」「自分の言葉なんて誰も聞きたくない」という感じの曲だったので、「どんなに小さい意見でも大切なんだよ」というような、自己肯定感が少しずつ出てきているのかなとも思います。


──麻丘さんはブログで考察も披露していますね。

麻丘

自己流なので、解釈はみんなそれぞれでいいと思うんです。自分はこう思いますということを書きました。私、ブログにはちょっとおこがましくて書けなかったんですけど、この曲を受けて、これからのグループをどんどんメンバーの力で切り開いていきたいし、もっともっと自分たちで決めた未来に期待したい、ということをすごく言いたいです。


──椎名さんの考案した紅白ユニット曲も収録されます。

椎名

まず白組については、隣に白組の方(天城)がいる手前、すごく言いづらいんですが...(笑)。どうしても私は「これぞダンス曲」みたいなものを見てみたかったので、今回、白組に選ばせていただいたメンバーはすごくダンスが上手な方々なんです。ライブの映像などを見て、表情だったり、ダンスの見せ方がすごく格好良いなと思う方を特に選ばせていただきました。少人数のユニットだからできるフォーメーションとか、全員ではできない内容に挑戦していただきたいなと思いまして。ただ、白組の皆さんからは「よくこんなテンポの早い曲を...」みたいな(苦笑)。

天城

そうなんですよ。つっきー(椎名)は紅組なので白組のリハーサルにはいなかったんですが、振り入れの初日からみんな悲鳴を上げていたんです。「恨むなら椎名桜月だ」ってみんなで言っていました(笑)。難しすぎて、初めて振付師さんから「振り、変える?」って言われたんですよ。けど、「変える?」なんて言われたら、「変えませんけど」みたいな(笑)。とは言ったものの、本当に難しくて。でも曲も格好良いし、白組に選んでいただいたことはとても光栄だなと思っています。ダンスが好きとも得意とも自分からは言ったことなかったので、第三者から見てこういう組に入れてもらえて、すごくうれしいし、頑張っていて良かったなと思います。ただ、恨んではいます。感謝と恨みの狭間です(笑)。

椎名

絶対に格好良いので、すごく楽しみにしていただきたいなと思っています...!振りを変えるかと言われた時に、「変えません」と言えるのが白組の皆さんなんですよね。紅組だったら、もちろん人によりますけど、「変えないです」と即答はできない気がするんですよね。白組の方々は、客観的に見て、負けず嫌いな方がすごく多いイメージもあって、たぶんきついだろうけど、きっとやってくださるのではないかなという期待を込めています。あと、歌詞が届いた後に、歌詞に合わせて曲にピアノの音を足してもらったり、ピアノをイメージした振り付けを入れたり。ダンスを重視したいと言って、そのために長い間奏を作っていただいたりと、スタッフの皆さんにもすごく頑張っていただきました。


──紅組はどういうコンセプトなんですか?

椎名

紅組は、自分が普段好んで聴くような切ないバラードのようなピアノ曲をやってみたいなという思いを込めています。ピアノの音に加えて、電子音のようなピアノとは違う音が入っている雰囲気の曲が好きなので、自分自身がそういう雰囲気の曲を歌ってみたかったんです。そういった、切ない雰囲気に合いそうなメンバーを選んだので、白組とは対照的な曲になっていると思います。白組とは比べにくいですが、紅組もダンスは結構難しいんです。「こんな難しいなんて思ってなかった」と言いながら励まし合っていました。「紅組がこんな難しかったら、白組はどうなっちゃうんだろう」と言いながら(笑)。

天城

白組も、紅組の子たちのリハーサルを見て、「紅組難しくない?」「ということは私たちどうなるの」と言っていました(笑)。

椎名

ジャンルは違いますが、今回の紅白曲は両方ともダンスが難しいので、そこも見どころになるんじゃないかなと思っています。私、体が硬いのでウェーブを使ったダンスがすごく苦手なんです。以前、ユニットシャッフルの企画で、蛍光灯再生計画の曲に参加した時にウェーブが下手すぎて「一生ウェーブはやらない」と思っていたほどなんですが、その数ヶ月後に紅組の曲でウェーブが出てきたんです(苦笑)。キッズレッスンでの教え方らしいんですが、「ウェーブは壁を舐めるように」と教わって。振付師さんに「(壁を)舐められてるよー!」と言われながら練習していました(笑)。


──ライブなどで、壁を舐められているかに注目すればいいんですね。

椎名

いや、でもそれは初歩らしいんです。そこから「壁を舐めてる感」をなくしていかなきゃいけないんですよ。


──なるほど。完成版では舐めていたらいけないんですね(笑)。

椎名

そうなんです。だから「壁を舐めて練習したんだな」と思ってもらえればいいかなと思っています(笑)。


──2022年についても振り返ってもらいたいと思います。まず、2月に新メンバーとして加入した麻丘さん、椎名さんにとってはどんな年でしたか。

麻丘

本当に1年が短くて短くて。これで1年なら、あっという間に5年とか経っちゃうんじゃないかと思うほど、体感では短い期間でした。ありがたいことに休む時がないほど、ツアー、シングル、ライブと様々な活動をさせてもらったので、良い意味で他のことを考える暇がないくらい充実していました。1年間楽しかったです。


──特に印象に残っている出来事を挙げるとすれば、どんなことですか。

麻丘

個人的には、夏のツアー「ナナニジ夏祭り2022」が一番記憶に残っています。記憶がないくらい余裕がなかった春先の「14」のツアーと比べて少し余裕も出てきていたので、ツアーでの景色も記憶に残っているんですよね。メンバーと北海道や福岡に行けたことも楽しかったですし、ライブ自体も自分なりに楽しめました。


──2023年に向けての課題はありますか。

麻丘

2022年の1年間で活動について学ぶことができたので、2023年は自分らしさを今以上に見出せるような年にしていきたいです。ただ楽しむだけじゃなく、どうやったらもっと楽しんでもらえるかというように、ファンの方のことも考えながら活動したいと思っています。


──椎名さんはいかがですか。

椎名

私にとってもあっという間の1年でした。先日、私たち新メンバーが最終オーディションを受けてから1年が経った時に、「もう1年経ったんだ」とメンバー同士で話題になって、思い出を話しました。オーディションを受けた時には自分が受かるとも思っていなかったですし、ダンスも未経験だった私が、ナナニジの全曲を踊れるようになっているだなんて思ってもみませんでした。本当に目まぐるしい1年間でした。今までは先輩たちにぶら下がっていた私たちも、これからグループのために、先輩たちのために力になれたらいいなとすごく思っています。


──新メンバーはこれまでのグループの曲すべてを一気に覚えなければならないというところが大変なところなのではないかなと想像します。

麻丘

私も桜月ちゃんもダンス未経験だったんですが、初めてのダンスレッスンで「1.5で」とか「0.5で」って言われたんですよね。私たち以外のダンスをやっている子は、それでパッと動くんです。でも私たちはステージ上の番号で位置が決まっていることすら知らなかったな、と今、思い出しました。そんなレベルだった私たちが、50何曲も踊れるようになったんですよね...。


──そんな椎名さんも今では先輩たちに難しい曲を当てて悲鳴をあげさせているという...。

椎名

それはそういう意味ではないんですよ(笑)。ただ私がやってみたいなと思っていた紅白ユニットがそれで、ファンの方が見てみたかったという投票で決まったので...。ファンの皆さんも連帯責任です。白組の皆さんに恨まれてください(笑)。


──(笑)。天城さんにとっての2022年はいかがでしたか。

天城

今まで毎年、私はメンバーとのお別れの涙をずっと流してきていたんです。特に2021年はおよそ半分のメンバーとお別れをして、誰かの卒業公演とか、誰かにとっての最後のライブのリハーサルばかりしていたので、リハーサルが好きになれなかったんですよ。けど新メンバーたちが入ってきてくれて、「リハーサルってこんなに明るいムードなんだ」と初めて実感しました。初期からのメンバーたちは人見知りの子が多かったこともあって、卒業公演じゃなくても、最初からテンションの高いリハーサルはなかったんですよね。だから新メンバーが加入した2022年からはリハーサルをすごく楽しめました。みんなが振りをイチから覚えてくれたことで、私も「この振りなんだっけ」という今更聞けないようなことを確認できた、ということもありました(笑)。


──特に記憶に残っているのはどんなことですか。

天城

一番は「ナナニジ夏祭り2022」のライブです。私はコロナの影響で半分くらい出られなかったんですが、私のパートをいろんなメンバーが補って歌ってくれていたのを映像で見て、「すごく頼もしいな」と思ったのと同時に、「私のパートをまだ誰にも渡したくない」という気持ちが浮かんだんです。そこで、「私ってまだナナニジにいたいんだ」と再認識しました。私はもともと声優志望で日本に来たので、アイドルになりたいとは1ミリも思っていなかったんです。だから自分が表舞台に立つことにはずっと抵抗があったんですが、私がいないライブ映像を見て、「歌いたいな」と思えたことがすごく記憶に残っています。


──新メンバーが加入したことで、グループ全体の雰囲気にも変化はありましたか。

天城

先輩メンバーで残っているのが今6人で、新メンバーが8人なんですよ。しかも最初からめちゃくちゃ明るかったんです。先輩メンバーたちは人見知りすぎて、私も名前を覚えるのに5ヶ月もかかるほどだったんですが(苦笑)、新メンバーたちは最初からあだ名を作ったりしていたんですよね。一気にグループの色が変わったな、とすごく感じます。


──もともといたメンバーの中にも、新メンバーから影響を受けて、変わったような人はいますか。

天城

西條和ちゃんは見たことないような笑顔を見せるようになりました(笑)。私、なごみんって人と食事に行かないような人だと思っていたんですが、聞いた話によると、新メンバーと食事に行ったりもしているらしくて。「待って、なごみん食事行けたの!?」って驚きました。

麻丘

(椎名と)3人で行きました。洋食屋さん。

椎名

和さんが、コーンスープ飲みたいって。

麻丘

じゃあコーンスープのお店探しましょう!って。


──おふたりのようにぐいぐい予定を決めていくタイプの方が今まではいなかったんですかね。

天城

そうなんですよ。本当に今までみんな人見知りだったし、なごみん人見知りなので、お互いにお互いを誘えない感じだったんですけど、想像の10倍ぐらい強引にいったら行けたんだって(笑)。お互いの意見を言い合うようなことも今まではなくて、争い事が起きるくらいなら自分の意見を飲み込もうというように、何事もなく、みんな仲良く生きていきたい感じだったんです。けど新メンバーは、最初のリハーサルからお互いに「そこ違うよ」というようにズバズバと言い合っていて、「こんなに言っていいんだ」という驚きがありました。なんなら先輩メンバーにも間違えを指摘してくれるので、私たちも言えるようになってきました。


──新メンバーに言われてムッとすることもなく?

天城

ならないです。それくらい来てくれたほうがうれしいんです。私たちも後輩ができることに慣れていないので、距離感もどうすればいいのかわからない子が多かったんです。逆にみんなから来てくれたので、すっごくやりやすいです。


──今後の22/7がさらに楽しみですね。最後に改めて、読者へのメッセージと2023年の抱負を聞かせてください。

天城

人間、誰しも悩むことはあると思いますが、まずは人の意見よりも自分の心の意見を聞いてみよう、という強いメッセージが『神様だって決められない』には込められています。皆さんを勇気づけられる曲になったらいいなと思っています。22/7としては、もっともっといろんな方々に魅力を知っていただきたいです。後輩メンバーたちも2年目になるということで、これからは初期メンバーとか新メンバーとかということでなく、同じ22/7のメンバーとして、もっともっと大きいステージで皆さんに会いたいなと思っています。楽しい景色が見られると思いますので、ついてきてくださるとうれしいです!



取材・文・撮影=山田健史

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