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パワートレインはA110 Sと同じ

サーキットを前提とするハードコアなスポーツモデルの場合、スペック表にはCO2の排出量が記載されない場合も多い。しかし、アルピーヌA110 Rの場合は隠す必要がないようだ。

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その実、154-156g/kmに留めている。環境への配慮が不可欠な時代にあって、このモデルの存在価値は大きい。

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アルピーヌA110 R(欧州仕様)

アルピーヌは、売り上げの5割近くを国内市場へ依存している。そのフランス政府は、他国と比べても自動車の環境規制に厳しい。一部のスポーツモデルには、CO2の排出量が多いため約4万ユーロ(約568万円)という高額な税金、ペナルティが掛けられている。

一方で、小柄で軽量なA110 Rは燃費にも優れるため、約3000ユーロ(約43万円)で済むという。決して小さな額とはいえないものの、ライバルとの競争力を強める違いなことは間違いない。

アルピーヌのターゲット層は、体感できる性能の向上や、スタイリング的な差別化には喜んで追加費用を支払う一方で、税金が増えることには否定的だったらしい。同社でA110の開発を指揮する、ザビエル・ソマー氏が認めている。

「この事実を、われわれは理解していました。A110 Sにも搭載しているパワートレインを登用した理由です」

アルピーヌはターボブーストを高めるのではなく、ボディを軽量化し、グリップ力やダウンフォースを高め、空気抵抗を削るという方向性をとった。A110らしい、独自性の強いポジショニングに仕上がったといえるだろう。

カーボン製ボディキットで武装

その成果は、英国価格8万9990ポンド(約1439万円)を正当化するものだろうか。これまでのA110でベストと呼べるだろうか。2022年にわれわれを驚かせてくれた、ポルシェ718ケイマン GT4 RSと同様に。

先に答えへ触れてしまうと、A110 Rには若干の疑問が残った。とはいえ、718ケイマン GT4 RSとの比較は、正しいものとはいえない。アルピーヌは、可能な限りの結果を導いている。ポルシェ級の分厚い支持層がないとしても、販売にはプラスへ働くはずだ。

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アルピーヌA110 R(欧州仕様)

A110 Rの容姿は、フロントスプリッターとボンネット、エンジンカバー、サイドスカート、リアディフューザーなど、軽量なカーボンファイバー製ボディキットで武装されている。リアデッキには、小さくないカーボン製のリアウイングも与えられている。

足もとを引き締めるホイールも、専用のカーボン製がおごられる。A110 Rに施された軽量化対策は全体で34kgに及ぶが、その3割以上をこのホイールで稼いでいる。ディスク面のデザインにも配慮され、ボディサイドの気流を最適化する役目も果たすそうだ。

その反面、押出成形されるアルミニウム製シャシーは、A110 Sからの変更はないという。特に強化もなされていない。

サスペンションには、圧縮・伸張それぞれ20段階に減衰力を手動で調整できる、ZF社製の車高調システムが組まれている。メインスプリングとヘルパースプリングというセットアップも含めて、A110シリーズとしては初採用になるとのこと。

ガラス製エンジンカバーもカーボンに

アルピーヌの工場を旅立つ時点では、A110 S比で車高は10%低く設定されている。スプリングレートは10%硬い。アンチロールバーも同様に引き締められているが、増加したダウンフォースを考慮し、リア側の変更値の方が大きいという。

ブレーキは、A110 Sと同じブレンボ社製の逸品。サーキットを走り込んでも効果的に冷やせるよう、冷却ダクトは新設計になっている。タイヤは定番といえる、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履く。

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アルピーヌA110 R(欧州仕様)

インテリアも観察していこう。ドアを開いて真っ先に視界へ飛び込んでくるのが、サベルト社製のシングルシェル・カーボン・バケットシート。これで5kgの軽量化へ貢献している。

見た目より乗り降りしやすく、立ち上がったサイドサポートもタイトすぎない。シリアスな6点ハーネスで身体は固定されるが、ストラップとバックルの位置が巧妙で、装着は難しくなかった。

シートに座り後ろを振り返ると、1.8L直列4気筒エンジンは目視できない。ガラス製のエンジンベイ・パーティションは存在しない。後方視界を確保していた、外側のガラス・エンジンカバーも、軽いカーボン製へ置き換えられた。

フロントガラス上のバックミラーも省かれている。公道での運転に、影響が出ていることは否定できないだろう。A110 Rではサイドミラー以外、後ろが見えないのだから。

この続きは後編にて。


磨かれたコーナリングスピード アルピーヌA110 Rへ試乗 エンジンはSと同じ300ps 前編