
人生100年時代。50歳ですら道半ばという長い余生は、喜ばしいどころか、不安でしかないという読者諸兄も多いことだろう。しかし、「お金」「健康」「孤独」といった世間に蔓延している老後不安は本当に正しいのだろうか? ウソに隠された誰も教えてくれない真実を解き明かす。
「お年寄りが増えすぎて老人ホームに入れない!」というのは本当なのだろうか? 実はこれも間違った認識なのだ。なぜこのような集計が発表されたのか、専門家に話を聞いてきた。
◆「とりあえず申し込んだだけ」の人もカウントされていた
’13年に厚生労働省が待機人数53万人と発表し、当時は「数年待ち」とも報じられた特別養護老人ホーム。だが、社会福祉学者の結城康博氏はこの数のカラクリを次のように説明する。
「ここまで多いのは、同じ人が複数の施設に申し込んでもそれぞれ1人としてカウントされたため。この点を改善して集計した’19年の統計では29万人に減っています。ただし、こちらもとりあえず申し込んだけど、実際には入居しないケースが大変多く、実数はもっと少ないのです」
◆満床とは程遠いというデータもある
実際に、’17年にみずほ情報総研が発表した「特養老人ホームの開設状況に関する調査研究」によると、ユニット型個室と呼ばれる比較的新しい施設の利用率が62.4%、従来型個室や4人部屋の多床室が67.8%と満床には程遠いとのデータもある。
「施設の数が増え、空き待ち問題はかなり解消されました。年金受給額によって異なるものの月5万~9万円で入れる多床型はその安さから人気ですが、待って半年以内、場所さえ選ばなければもっと早く入れます。東京都でも八王子などの西部は比較的余裕があります」
◆介護費用500万円…実はこれも間違い
ただし、老人ホームに限らず、在宅でも介護費用は本人や家族にとって大きな負担。その金額は一般的に500万円とも言われているが、これも実態とは少し異なるようだ。
「これはウソではないですが、そこそこいい介護サービスを受けた場合の話です。できるところまで在宅で頑張って、ダメになったら特養に入る。これだけでも費用を抑えられます。入居相談に行く場合は、地域包括支援センターか、施設からマージンを取らない有料相談所がオススメですね」
高い入居一時金を支払ってからでは、遅い。損をする前に確認してみよう。
【社会福祉学者 結城康博氏】
淑徳大学社会福祉学部教授。介護職としての長い現場経験を持つ。著書に『介護人材が集まる職場づくり』(ミネルヴァ書房)など
取材・文/週刊SPA!編集部

コメント