もさを。といえば、SNSでの動画投稿が話題となり、Billboard JAPANチャートにおいてストリーミング累計1億再生を突破した「ぎゅっと。」で人気を博したアーティスト。女性目線のピュアラブソングでカップルや恋する女子たちの魅了し、顔出しをせずに活動していることでも知られている。

そんなもさを。が、昨年12月に発売したアルバム『こいのうた』を引っ提げ、ついに1stワンマンライブを開催。一体どんな内容になるのか想像つかないぶん、それは意外性からくる驚きと約束を果たされたような満足感の両方を提供されるライブとなった。

一曲目の「きらきら」から放たれたのは紛れもないもさを。の歌声であり、想像していなかった視覚と聴覚のコントラストがライブの醍醐味をさらに強くしていたのも事実だった。
例えば、どんなときでも相手への想いを痛感してしまう気持ちを描いた「1分1秒」も、いつもの繊細さに包容力がプラスされたように感じる。

「はじめまして、もさを。です」

落ち着いたトーンで話す声は、歌う時より少し低く、鼻にかかった甘さがある。あまり多くは語らず、呼びかけに対して「ありがとう。ここにいるからね」と笑う。もさを。の話し方は、そこから続いた「恋色」「会いたい」の楽曲に描かれた、ごく普遍的ながら淡い色の光を放つ景色をとてもリアルに感じさせた。

至極のラブソングを続けたあとは、本日最初の失恋ソング「桜恋」を披露。想いを告げずに別れの日を迎える歌詞のせつなさと、感情の強さを表すもさを。のファルセットに、観客は身動きすらとれなくなっていった。

「いつも支えてくれて、応援してくれる一人ひとりに感謝を伝えたいと思って有観客ライブを開催することを決意しました。僕が歌をうたう意味のひとつに、みんなの存在が大きいです。あなたがいなかったら、僕が歌を歌い続ける理由もありませんでした。今日は本当に来てくれてありがとうございます」

感謝の言葉ですら、もさを。というフィルターを通ると、まるで好きな人への告白のように特別な熱を持ち、奥ゆかしく感じるのが不思議だ。本人いわく「マイク1本で歌えるアーティストになりたいという目標に向かうため」、この日はギターを弾きながら歌う曲、ハンドマイクで歌う曲と交互に聴かせていく。

そして、どんな形であろうと変わらないのが、絶大なヒーリング効果を持つ声。まるでフルートの音色のように軽く滑らかな歌声は、横揺れリズムが楽しい「ギフト」、ほんのり常夏アレンジの「サイダー」とテンポアップした曲でも、やっぱり優しかった。

ステージ横の壁いっぱいにもさを。の影を映し、モノトーンの映画を見ているような気分にさせる「好きが溢れていたの」をしっとり聞かせた後は、手拍子を誘い、客席との一体感を強めてラストを目指す。「いいね、その調子で踊っていこう! あっという間でしたが、みんなと過ごした空間、ここ(胸)に抱きしめて持ち帰ります。それではみんな踊りましょう」客席では、ほぼ全員の両手が曲に合わせて左右に揺れる。

ハレルヤ」「カラメル」とビートが強くなるにつれ、もさを。の歌い方は自由度を増し、感情を抑えることなく放たれていく。彼のようなアーティストこそ、生演奏と有観客のステージにしか現れない声を持っているだと思う。

観客からの「大好き!」に「ありがとう」と答えると、客席からため息交じりの歓声があがった。本編ラストの「冬のプレゼント」は、鈴の音色に似たサウンドが外の寒さを思わせたものの、その中心にいる歌声はいつもより熱かった。

アンコールでは、5月に東京・大阪・名古屋での追加公演があること、ここでドラマ「美しい彼」(シーズン2)のエンディング主題歌に決まった新曲を初披露するなどを伝え、その新曲「キンモクセイ」と大人気ナンバー「ぎゅっと。」を披露。まるで1対1の誰かに届けるかのように丁寧に、一言一音にこだわって聞かせる。特別な時間であっても、自分の表現の形に妥協しない。おそらくそれが、もさを。の音楽人としてのルールなのだと思う。

とにかく、すべてにまっすぐな人なのだ。歌詞ひとつとっても、使う言葉に余計な比喩はなく、状況説明に駆け引きも不要。好きな度合いを示すために、何かを犠牲にする必要もない。だからこそ、もさを。本人から放たれる歌のあまりのまぶしさに、たまらずキュンとなった。そう、もさを。の歌はここからがヤバいのだ。

その世界に触れた人が一度でも自分のときめきに気づいたら、そこから怒涛のキュンキュン連鎖がはじまってしまう。終演後、会場の外に出たら、渋谷の街灯すらキラキラ美しく見えてきた。こうしてもさを。の“恋歌”の沼にハマっていくのだと実感した。

Text:川上きくえ Photo:Viola Kam (V'z Twinkle)

<公演情報>
もさを。1st ワンマンライブ「こいのうた」

1月29日(日) Shibuya WWW

セットリスト

1. きらきら
2. 1秒1秒
3. 恋色
4. 会いたい
5. 桜恋
6. ギフト
7. サイダー
8. 好き溢れていたの
9. ハレルヤ
10. カラメル
11.冬のプレゼント
En1. キンモクセイ
En2. ぎゅっと。

<ライブ情報>
ワンマンライブ追加公演決定
LIVE TOUR『こいのうた』

5月9日(火) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
5月15日(月) 大阪・心斎橋JANUS
5月16日(火) 愛知・名古屋SPADE BOX

2月5日(日) 23:59まで先行受付実施中
https://w.pia.jp/s/mosawo23sof/

<リリース情報>
もさを。ファーストアルバム『こいのうた』

発売中
価格:3,300円
配信リンク:
https://mosawo.lnk.to/Koinouta

【収録内容】
01. ぎゅっと。
02. ハレルヤ
03. 恋色
04. 桜恋
05. 好きが溢れていたの
06. 1分1秒
07. きらきら
08. ラクガキ
09. もう一度 feat.asmi
10. 涙雪
11. カラメル
12. 会いたい
13. サイダー
14. 冬のプレゼント
15. ギフト
16. ワスレモノ ※CDのみのボーナストラック

関連リンク

もさを。Twitter:
https://twitter.com/m0saw0

もさを。