
地球外文明の捜索は、地球外知的生命探査「SETI」の優秀な研究者によって行われているが、今のところその成果はほとんどあがっていない。
カナダのSETI研究者らは、人間では埒が明かないので、もうAI(人工知能)にやらせちゃおうと考えた。
彼らが開発したAIに、480時間を超える観測データを分析させたところ、これまでのアルゴリズムが見落としていた興味深い8つのシグナルが発見されたと、『Nature Astronomy』(2023年1月30日付)で報告されている。
宇宙から地球へとどく電波には、さまざまな情報が含まれている。だが気をつけないと、本当は地球で放たれた電波なのに、宇宙からのものと勘違いしてしまうこともある。
SETI(地球外知的生命探査)の研究者が探しているのは、宇宙からやってくる「狭帯域ドップラードリフティング信号」だ。つまり、動いていて、特定の周波数の範囲におさまっているシグナルである。
困ったことに、こうしたシグナルが時間や距離によってどう変化するのか、あまりよくわかっていない。
よくわからないものを、地球の電波という雑音の中から見分けねばならないのだ。それは森の中の未知の木を探すようなもので、人間にはとにかく骨が折れる作業だ。
そこでカナダ、トロント大学のピーター・マー氏らは、それをAIにやらせることにした。専用のニューラルネットワークを作り、SETIが集めたデータから、一番重要と思われる特徴を探させることにしたのだ。
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AIが奇妙な8つのシグナルを検出
宇宙からのシグナル検出にアルゴリズムが使用されることならある。だが、新しいAIはそうしたものに比べ2倍も速いだけでなく、ある重要な特徴がある。
それは、アルゴリズムが人間の命令通りにしか働かないのに対して、AIなら常識にとらわれない思考ができることだ。
この特徴は地球外文明の電波を探すのなら特に重要だ。というのも、地球外文明の電波がどのようなものかはっきりとはわからないからだ。
そしてAIを導入した成果はすでにあがっている。
2016年以降、820の星を480時間にわたって観測した望遠鏡のデータでAIに機械学習させたところ、従来のアルゴリズムが見逃していた8つの注目すべきシグナルが特定されたのだ。
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はたしてそのシグナルは地球外文明からのメッセージか?
はたして8つのシグナルは、本当に地球外文明からとどいた電波なのだろうか? それらの検証はまだこれからだ。
そして仮に、それが地球外のものである確証が得られたとしても、その発生源がどのような技術なのかすぐにわかるわけではない。
SETI関係者の理想としては、そうしたシグナルに技術的な情報が隠されていたり、地球外文明のテクノシグネチャー(地球外文明の証拠)だったりすることだろう。
だが当事者であるマー氏は「それを期待しているわけではありません」と、あくまで慎重な姿勢を見せている。
References:AI is helping us search for intelligent alien life – and we’ve found 8 strange new signals / AI Has Found Potential Alien 'Technosignatures' Hidden in Radio Signals From Space / written by hiroching / edited by / parumo

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