東急が北海道で運行する豪華列車「THE ROYAL EXPRESS ~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」。2023年は道北にも向かいます。企画者も「非常識」というこのツアーもすでに[ls]いつかは「函館方面プラン」も実現!?4年目ですが、なぜここまで続けることができたのでしょうか。

前代未聞 関東の観光列車が「北海道を周遊」

北海道クルーズ列車「THE ROYAL EXPRESS ~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」。2023年夏も運行が決定し、2月6日から予約開始となります。

この列車は、普段は伊豆方面へ運行されている「THE ROYAL EXPRESS」を、夏季に北海道へ車両ごと運び込み、気動車や電源車を連結して走らせるもの。ベースとなる車両は「リゾート21」の愛称がある伊豆急行2100系を改装したもので、車内は木材や伝統工芸をふんだんに取り入れた上質な車内空間に仕上がっています。

鉄道車両をバラして遠隔地へ運びだし、別会社の線路を数日間に渡って「走り回る」という前代未聞の企画は、JR北海道JR貨物、国と自治体などとの綿密な調整と協力により実現し、すでに4年目を迎えました。2月1日、プレス向けに行われた試乗会では、東急のプロジェクトリーダーである松田高広さんも、デザインを手がけた水戸岡鋭治さんも、口をそろえて「企画時の『非常識』がいまや『常識』になりつつあります」と感慨深げでした。

今年はさらに新たな試みとして、道北へ初進出します。「HOKKAIDO 日本最北端の旅」は札幌を起点に、宗谷本線を北上して稚内方面へ向かいます。それに合わせて担当シェフも新たに招き、札幌の「AGRISCAPE」吉田夏織シェフらが車内の食事を担当します。プレス試乗会では同シェフによる「ポワローネギと黒豚のテリーヌ」が振舞われました。

ちなみに「THE ROYAL EXPRESS」が到達するのは終点・稚内駅の一歩手前、南稚内駅。そこから宗谷岬方面へバス移動となります。これは稚内駅がホーム1本・線路1本・行き止まりの必要最小限の施設しかなく、客車列車が折り返しできない構造のため。ただ、宿泊するホテルは稚内駅目の前の「サフィールホテル稚内」なので、「日本最北端の駅・稚内駅にやってきた!」という体験は可能とのことです。

思いが育てた企画 根底は「東急ブランド」

THE ROYAL EXPRESS ~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」が企画されたきっかけは、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震で被災した北海道を元気にするため。鉄道を通じ、地域の人々と全国の旅行客との交流を深めることで、観光振興と地域活性化につなげていきたいという思いがあります。

4年目となる現在も、その思いは変わっていないとのこと。それが、もともと電気やガス、まちづくりなどインフラへ多角的に携わってきた東急が培ってきた「社会に貢献する鉄道会社」というブランドであると東急の松田さんは話します。4年間の運行経験を通して、伊豆方面ツアーと北海道クルーズトレインという毛色の違う企画の担当者が、お互いにノウハウをフィードバックできているという感触もあるとのこと。

北海道の雄大な自然による"非日常鉄道体験"の虜になった人は多く、リピート率は30%にも達するそうです。参加者は全国にわたり、申込の倍率は約3倍。年齢層は70代が中心とのことです。

ただ、コロナ禍による入国制限をうけ、当初から外国人旅行客は皆無です。入国緩和にともない「日本の大自然」に惹かれてくるインバウンド需要の増加が見込まれ、この列車を利用する人も増えるかもしれません。松田さんは、かつて伊豆方面で「全員外国人」のツアーが敢行されたことがあり、スタッフチーム全体で乗り切った経験があるため、対応には自信があるといいます。

では、未踏の地である「道南」函館方面へ運行する計画はあるのでしょうか。東急の松田さんは「行きたいという思いはあります。『日本最北端の旅』を始めたばかりということで、まだ具体的な話はありません」とのこと。いっぽうで、「北海道東西南北どこに行っても、そこにしかない人々とのふれあいや風景が体験できる素晴らしい場所。そこへお客さんをつなげていきたい。列車やバスを駆使して、今後もいろいろなことをやっていきたいです」と話しました。

「THE ROYAL EXPRESS」(乗りものニュース編集部撮影)。