京都観光に便利な「バス1日券」を市交通局が廃止する方針です。値上げされてきたものの、それでも便利な1日券。廃止に対し市民からは、賛成と反対、双方の声が寄せられているようです。

京都観光の神アイテム「バス1日券」廃止へ

京都市交通局が「バス1日券」について、2023年秋に販売を停止し、2024春に廃止する方針を固めました。これ1枚あれば市内の観光の移動はほとんど賄える、といえるほど使える範囲も広く、便利なアイテムであったことから、廃止には市内外から意見が寄せられているようです。

バス1日券はもともと500円でしたが、2018年に600円へ値上げ。これは、インバウンド需要でバスが混雑し市民が乗れない状況だったことから、地下鉄への利用分散を図る狙いがありました。その後、コロナ禍で観光客が減り、経営状況が一気に悪化したことから、2021年には700円へ値上げされています。

一方、近年は京都バス西日本ジェイアールバスといった民間事業者と運賃体系の共通化などを進め、バス1日券が使える(大人)230円の均一運賃区間が大きく拡大するなど、利便性が高まっていました。

そうしたなかでバス1日券の廃止を決めた主な理由を、京都市交通局 企画調査課は次のように話します。

「水際対策の緩和などで観光客が増えており、この秋(2022年秋)もバスがだいぶ混雑しました。来年度の秋はさらに混雑が予想されることから、抜本的対策として廃止を決めました」

交通局はバス1日券を廃止し、1100円の地下鉄・バス1日券を利用してもらい、効率的な観光を促すとしています。その主眼は経営の観点というより「混雑対策」にあるといいますが、増発など様々な対策をともなうバスの混雑を減らすことは、経営改善にもつながります。

「市民も(バス1日券を)使っていたのに」「お客目線でなく上から目線だ」。利用者からは、こうした反対意見がある一方、「よくぞやめてくれた」「あの時(コロナ前)の混雑がトラウマ」という声もあるということです。

廃止するとバスも増収!? 実際どれほど使われていたのか

では、バス1日券はどれほど、どう使われていたのでしょうか。京都市交通局 企画調査課に、コロナ前における各種1日券の年間売上を聞きました。

・バス1日券:約330万枚
地下鉄1日券:約120万枚
・バス・地下鉄1日券:約70万枚

ちなみに、バス1日券の市民利用は約1割で、残り9割は観光客の利用だそうです。

バス1日券の廃止が経営にどう影響するのかも聞きました。まず地下鉄事業については、バス・地下鉄1日券への利用転換もあり、2.9億円の増収を見込んでいるといいます。

それに対しバス事業は、「たしかにお客様は減るでしょう」としつつも、むしろ1000万円程度の増収が見込まれるそう。というのも、700円のバス1日券で4~5回乗る人が多く、これが1回230円の都度利用なら、920円~1150円になるからです。

バスの混雑対策もさらに進めます。現在、混雑期には岡崎方面から京都駅へ向かっているバス利用者を対象に、東西線東山駅地下鉄に乗り換えてもらい、そのぶん京都駅までの地下鉄運賃を無料にすることで、最も混雑する東大路通の区間の利用分散を図る取り組みを行っていますが、これを金閣寺方面でも適用できないか検討しているそうです。

また、バスの運賃箱も、両替方式から“お釣り”方式へ変更するとのこと。たとえば1000円札を入れた場合、同額が小銭で出てくるのではなく、運賃230円を差し引いた770円分が戻ってくる方式にすることで、運賃収受をスムーズにするといいます。

ちなみに、コロナ前はバス1日券と同額(600円)だった地下鉄1日券も意外と売れていた、と思うかもしれませんが、これは多くが地下鉄東西線宇治市方面に住む人の利用だったそうです。というのも、たとえば六地蔵駅から京都市街まで往復利用した場合、1日券の方が安かったからだそう。これを見直し、現在は800円に値上げしています。

京都市営バス5号系統岩倉行き。2016年に均一運賃区間が広がり、全区間をバス1日券で乗れるようになった(画像:Phuong Nguyen Duy/123RF)。