口コミで取り上げられる「評判のいいスタッフ」はどんな人でしょうか。スタッフとディスカッションをしながら理想のスタッフ像を明確にしていきましょう。コンサルタントの成田直人氏が著書『お客様を「集める」から「集まる」へ 口コミだけで繁盛店を作る究極の集客術』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

理想のスタッフ像を明確にする

■口コミにつながる理想的なスタッフ像を明確にする

口コミ集客に欠かせない口コミ投稿ですが、「誰」が投稿を依頼するかといえばスタッフです。口コミ投稿は残念ながらシステム化することに限界があります。

対面で依頼をするのが一番の投稿率になるため、初動で一日も早く1000件を目指すためには人の力が欠かせません。

では、どんなスタッフから依頼をされたらお客様は口コミ投稿をしてくださるのか、を考えることが大切です。

商品知識・接客力・業務知識のレベルはどこを目指すのか、ペルソナのお客様との雑談をするためにもどんな情報(例えばビジネス誌を読むなど)を網羅しておくと最適なのかなど、理想とする販売員像を明確にします。これは各セクションで作成をします。

良質な口コミ(口コミ集に基づく)が集まる店を作るために必要な理想的なスタッフはどのようなスタッフでしょうか。

自動車販売店であれば、

①セールス ②事務職(パート) ③整備担当 ④保険担当

と分けることができそうです。

「各セクションで働く人がどこを目指せばいいのか?」をペルソナ同様明確にしていくとよいでしょう。

お客様からこれまでにどんなことを聞かれて「この知識はあった方がよいよね」や、「接客は提案力も大事だけど質問力や頷きながら聞く傾聴力が重要だよね」といった具合にディスカッションを重ねていきながら理想像を明確にしましょう。

そして明確になったら毎月の成長シートと照らし合わせながら、「商品知識」「接客技術」「業務知識」に関連する項目を取り入れるとよいでしょう。

具体的にクライアント内で明確にした販売員の理想像を紹介します。

・どんなマニアックなお客様が来店しても上をいく商品知識で迎える ・身だしなみは常に清潔に保つ(チェック項目あり) ・言葉遣いは接客マナーハンドブックを完全記憶する ・質問力を高めるためにコーチングの資格もしくは3ヶ月に1冊はコーチングの本を読む ・お客様の話を聞く姿勢を徹底するためNLP(神経言語プログラミング)の本を1冊読み習得する ・基礎業務はマスターをして1秒でも長く店頭に立つ

このように「どのレベルを目指すのか」を明確にすることで、スタッフに目標とするべき基準が生まれるので学習しやすくなります。

「もっと勉強しろ!」「もっと知識を身につけろ!」と言われても、「なぜやる必要があるのか」が明確にならなければやる気が出ないし、何をしたらいいのかがわからないと手のつけようがありません。

基準を言語化するのも店長や店舗経営者の役割と言えます。ぜひスタッフとディスカッションをしながら理想のスタッフ像を明確にしていきましょう。

「理想のスタッフ」の作り方、鍛え方

■理想のスタッフに近づく3ヶ月トレーニングテーマを決める

口コミ1000件への道は正直言って険しいです。クライアントを見ても1年以内に1000件を達成した店舗はまだ一つもありません。

基本的には1年以上かかることを前提に取り組むことを検討してください。

1年半後〜2年後に口コミ1000件が集まっている理想的な状態を作るためにも、スタッフの年間能力開発テーマを決めることをおすすめします。

毎月、目の前の顧客ストレスを解消するために仕組みを強化したり、スタッフの成長目標を決めたりすることは大切です。

しかし、あっという間に1年は経ってしまうので、長期的視点に立ったトレーニング標を決めることで、最短で口コミ1000件突破を狙いましょう。

1年かけて理想の販売員を目指すために目先の課題に取り組むのとは別に、1年間を4つの期間(1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月)に分けて成長テーマを決めましょう。

・商品知識(重要な知識から順に) ・質問力 ・説明力 ・傾聴力 ・雑談ネタ ・接客マナー用語 ・身だしなみ ・タイムマネジメント ・PDCA思考術 ・継続力 ・モチベーション ・コミットメント

第1期:商品知識 第2期:傾聴力 第3期:接客マナー用語 第4期:タイムマネジメント

このように3ヶ月間集中して開発する能力(テーマ)を明確にすることで、あっという間に過ぎ去る1年の中で理想の販売員に近づく確かなプランニングになります。

成長シートの項目を3ヶ月間固定して取り組んでいきましょう。

理想の販売員に近づくための努力とはいえ苦手項目も各スタッフの中にはあると思います。

本人が「傾聴力苦手なんですよね」と言われた際に、「だから伸ばすんだよ!」という指摘ではなく、「どうして苦手なの?」と聞くようにしてください。

強制力を持たせて取り組むのはせっかくのトレーニングを台無しにします。親に勉強しなさい、と言われたらやる気がなくなるのと同じです。自主性を高めながらトレーニングに臨んでほしいので苦手な理由を聞きましょう。

そして、人の話を聞くことの重要性(聞く力が身につくと潜在ニーズを引き出すことにつながる、顧客も商品説明ばかりだと売り込まれたと思ってしまう)について話しましょう。

最後に、苦手なことは努力次第で強みに必ず変わる、と伝えてプランニングのサポートをしてください。

あとは、トレーニング実施しながら常にサポートをして、できていないことばかりではなくできたことを褒めてあげましょう。そうすることで本人は成功体験を積めて苦手が得意に変わるきっかけを掴むことができます。

成田 直人 ジャパンブルーコンサルティング株式会社代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)