進む高速道路の老朽化に対し、NEXCO3社が新たな「更新計画」をまとめました。いわば構造物の造り替えに相当するものですが、なかには、山を切り開いた「切土区間」の土工の更新も。山陽道では、これにより風景が一変する箇所があります。

開通から25年だが… 山陽道で土工部の「更新」

NEXCO3社(東日本・中日本・西日本)は2023年1月31日、新たな「更新計画」の概略を発表しました。2015年より「高速道路リニューアルプロジェクト」と称し、老朽化した高速道路構造物の“造り替え”に相当する大規模更新が進められていますが、その追加区間として約500kmを選定。概算事業費は約1兆円となっています。

橋梁構造物や舗装の路盤の更新などがメインであるものの、なかには、盛土や切土といった土工の更新箇所もあります。このうち切土は、山を削り取り、平らな地盤面や法面(側面)を形成した箇所ですが、今後の更新事業によって、風景が一変する区間も出てきました。

それは、山陽道「木見支線」の三木JCT~神戸西IC間、木津地区(神戸市西区)の切土区間です。神戸淡路鳴門道明石海峡大橋方面)と新名神をつなぐルート上に位置しています。

ここは、道路上にカルバート(函型のコンクリート構造物)を設置し、その上に大規模な盛土をします。いわば、山を切り開いたところを、再び「山」にするというもので、クルマはそこをトンネル(カルバート)でくぐるようになります。地図で見る限り、長さとしては300m強といったところ。

三木JCT~神戸西IC間は1998(平成10)年に開通しており、今回の発表で例示された代表的な更新区間のなかでも、かなり新しい部類に入ります。ここまでの抜本的な構造変更が、なぜ必要なのでしょうか。

山を山で止める!?

今回の盛土は、崩れてこようとする山を押さえる「押え盛土」と呼ばれるもの。NEXCO西日本関係者は「“山”で“山”を止める」と話します。

三木JCT~神戸西IC間は建設当時から、切土のり面に変状が発生し、地すべり対策工を実施して開通したといいます。しかし、その後も「変状が止まらない状況」だそうです。

これまでも変状の発生の都度、補強対策を実施しており、斜面に杭を打って地すべりを防止するグラウンドアンカーは約540本、地すべり抑止杭は約110本もうち込まれています。それでも変状は収まらず、のり面の小段のコンクリートが浮き上がったり、アンカーが破断したりしているとのこと。実際2018年7月の西日本豪雨では、真っ先に事前通行規制を開始し、その後に土砂災害が起こっています。

地下水や降雨の影響により、地山の強度が低下しており、今後もさらに地すべりが進行すると想定されるため、抜本的な対策を検討。その結果が「“山”で“山”を止める」という工法だそうです。

近年は豪雨被害が激甚化し、高速道路ののり面が崩れる事態も多発していますが、「ここ(三木JCT~神戸西IC)は特殊」と関係者は口を揃えました。もともと神戸層群という断層に位置し、地層が斜面と同一方向に流れる「流れ盤」など、地すべりを起こしやすい地質が分布しているそうです。

とはいえ、NEXCO3社のなかでも西日本管内は台風が通過するケースも多く、大雨の影響でしばしば通行止めなどが発生しています。構造物の老朽化だけでなく、それが構築されている地山といった“自然”の変化への対応も、今後さらに表面化していく可能性があります。

山陽道 三木JCT~神戸西IC間の切土区間(画像:Google)。