◆「競馬あるあるレース名で知識を増やす

 競馬を長くやっていると、意外と地名や地理に詳しくなったりします。摩周湖特別、阿寒湖特別洞爺湖特別などを通じて北海道の湖を覚えたり、あるいは瀬波温泉特別、岩室温泉特別、月岡温泉特別といったレース名を通じて新潟の温泉に妙に詳しくなったり。

 というわけで、今回のテーマレースJRAの特別レースにはそれぞれ名前がつけられています。このレース名が意外と面白く、例えばかつて1年の終わりに「尾張ステークス」が行われていたりと、案外遊び心があります。そこで今回は数あるJRAの特別レースの中でも、特に読み方が難しい「難読レース」を取り上げてみたいと思います。

 題して「難読レースベスト5」。あなたはいくつ読めるでしょうか? 全部読めたら相当な博識か、あるいは競馬通かもしれませんよ。

◆情緒を感じるレース

第5位 東風ステークス

 まずは「東風」ステークスです。ひがしかぜ、とうふう、とんぷう…と読みたくなりますが、正解は

「こち」です。

 東風ステークスは20世紀から変わらず行われている中山芝1600mのオープン競走で、過去の勝ち馬にはG1馬ショウモダンや、最近は種牡馬としても活躍を見せているグレーターロンドンの名前もあります。

 東風とは文字通り東から吹く風で、春の季語。百人一首

「東風吹かばにほひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」でも広く知られているようです。

◆4位は地名として有名な「東雲」

第4位 東雲賞

 続いては、「東雲」賞です。

 地名としては比較的よく使われているので、なじみのある方も多いかもしれません。

「しののめ」と読みます。

 東雲は東京都江東区の地名として今でも使われていますが、かつては全国各地に同名の町村が存在していました。半世紀以上も前になりますが、東雲村は秋田県山梨県京都府に存在したようですし、東雲町や、東雲という地区の名前は現在でもいくつか残っています。

 競馬ファンにはなじみ深い府中市が東京だけでなく広島にもあるように、東雲という地名も全国各地に点在していた歴史があるのです。

 ちなみに東雲の本来の意味は「夜明けの空が東方から徐々に明るんでゆく頃」を表現する、情緒ある古語です。

静岡県西部の旧国名「遠州灘」

第3位 遠江ステークス

 続いては、「遠江」ステークスです。

 これは知らないとほぼ読むことができない、超難読レース正解は

「とおとうみ」ステークス

 とおとうみ=遠江は、現在の静岡県西部の旧国名。遠州灘ステークスというレースが今でも行われていますが、この遠州の遠の字は遠江の遠でもあります。その昔、都に近い琵琶湖(近淡海)に対し、浜名湖を遠淡海(とおつおうみ)と表記したことが、その名前の由来のようです。

 最初は全く読めなかったのですが、確かにパソコンに打ち込むと変換されます。読み方を調べたことで一つ賢くなれた気がしたレースでした。なお、今年の遠江ステークスを制したドンフランキーは、今後も注目の4歳のダート馬です。

◆名は体を表す!?  3歳ダート界屈指の出世レースも難読

第2位 鳳雛ステークス

 さて、残るは2つですが、第2位は競馬ファンにもお馴染みかもしれません、「鳳雛」ステークスです。3歳ダート路線の重要な一戦で、昨年はチャンピオンズCでも3着に好走したハピが制した出世レース正解は

「ほうすう」ステークス

 こちらも知らないとなかなか読めないかもしれません。かくいう私もこの読み方は競馬で覚えました。三国志に詳しい方ならそちらを通じてご存じの方もいるでしょうか。

 ちなみに言葉としての意味は、「伝説上の霊鳥である鳳凰の雛のことで、転じて、将来がたいへん有望な若者を指す言葉」だそうです。鳳雛ステークスは3歳限定のリステッドで、実際に出世レースですから、まさに名は体を表す一戦といえるでしょう。

◆超難読のあの山は、登山の難易度も高い!?

第1位 燧ヶ岳特別

 それでは、いよいよ第1位です。難読レース第1位は…「燧ケ岳特別」です。

 実は競馬における「山岳シリーズ」は難読レースが多くあります。槍ヶ岳=やりがたけ、くらいならまだいいのですが、かつて施行されていた「賤ヶ岳(=しずがたけ)特別」もかなりの難読レースでした。難読過ぎてあまり続かなかったのかは定かではありませんが、現存する中で「燧ヶ岳特別」はまさにラスボス的な存在です。正解は

「ひうちがたけ」特別

 燧ヶ岳は会津地方にある火山で、標高2,356m。これは北海道を含む東北以北では、国内最高峰とのこと。山頂は「尾瀬の展望台」とも呼ばれるほど抜群の眺望を誇るようで、今回本稿を書くにあたり調べてみると、まさに大自然&絶景です。

 もっとも、上級者向けの山のようですから、気軽に辿り着けるような場所ではないのでご注意ください。登山も命がけですからね。なお、昨年の燧ヶ岳特別の勝ち馬は、ナムアミダブツでした。

 以上、独断で選ぶ難読レースベスト5でした。もしすべて読めた方がいたら、もはや競馬漢字検定1級合格! といってもいいでしょう。

 馬券を買って当たった外れた以外にも楽しみ方があるのが競馬のすばらしさ。なお、レース名の由来はJRAのホームページでも公開されています。是非、気になった際はチェックしてみてはいかがでしょうか。

文/TARO

TARO】
競馬予想ブログとしては屈指の人気を誇る『TAROの競馬』を主宰する気鋭の競馬予想家。12月5日に最新刊『馬券力の正体 収支の8割は予想力以外で決まる』(オーパーツ・パブリッシング)が発売になった。著書は他に『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』(ガイドワークス)、『回収率を上げる競馬脳の作り方』『回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』(扶桑社)が発売中。

2022年の鳳雛ステークスを制したのはハピ。チャンピオンズカップでも3着に入り、2023年の飛躍が大いに期待されている一頭だ。