「ジャンボ機」はなぜここまで人を引き付けるのでしょうか…。

最初は短かった「2階席」

2003年2月1日(現地時間)、「ジャンボ機(ジャンボ・ジェット)」の相性で親しまれた飛行機ボーイング747の最終号機が顧客に引き渡されました。半世紀以上も続いた「ジャンボ機」製造の歴史が、これで幕を閉じました。実は「ジャンボ機」、その特徴的な外観こそそのままですが、製造初号機から最終号機までのあいだに、さまざまな大きな進化を遂げています。

747-100」として知られている、ボーイング747の初期タイプは1968年9月に初号機がロールアウト(完成公開)。翌2月9日に初飛行し、1970年1月21日に、アメリカの航空会社、パン・アメリカン航空のニューヨークロンドン線で就航しました。

この機の全長は70.6m、全幅は59.6m。2階席の前後幅も短く、コックピットには、ふたりのパイロットに加え、その後ろにエンジンなどの操作、監視の専任要員である航空機関士が乗り込み、3人で飛行機を飛ばしていました。こういったスタイルは-100の性能向上型である747-200にも引き継がれることになります。

「ジャンボ機」の外観が大きく変わったのが、1982年に完成した747-300です。実はこの機のデビュー前、747-100の胴体短縮タイプである「747SP」の開発で、図らずも2階席が主翼の付け根ギリギリまであったほうが空気抵抗が少なく、性能の向上が期待できることがわかりました。

そのため、客席数向上と効率アップが図られたのが、747-300でした。ここでは、それまでの747シリーズにくらべ、2階席が約7m延長されています。そしてこの747-300の開発は、そののちの「ジャンボ機」の大ヒットを支える旅客機の誕生へと繋がりました。

ハイテク時代「ジャンボ機」はどう変遷?

「ジャンボ機」こと747シリーズでもっとも売れたサブタイプが、1988年にロールアウトした747-400です。外観上の特徴は主翼先端が立ち上がった機構「ウイングレット」で、その大きさは1.8mにもなるそう。また、この機のコクピットは、航空機関士を要さず、パイロットふたりだけでフライトができるように進化しています。そのことから「ハイテクジャンボ」とも呼ばれました。

また、747-400の客室は、従来の「ジャンボ機」とくらべ、ひとりあたりおよそ2倍の容積を積める手荷物収納スペースが導入されたほか、トイレも従来は水を消毒のうえ、都度再利用する循環式だったのが、現在ではスタンダードになっているバキューム式のものを採用。エコでより清潔なものとなりました。このサブタイプは、派生型を含めると700機以上の売り上げを記録しています。

そして2010年、「ジャンボ機」の最後のサブタイプ、747-8が初飛行します。この機のコクピットは、747-400のパイロットがそのまま操縦できるよう同じスタイルのものを導入、その一方で客室は照明にLEDを採用しているほか、手荷物の収納スペースをさらに大きくするなどの改修がされています。

ただ一方で、全長が70.66mだったそれまでの「ジャンボ機」とくらべて、747-8の全長は76.25mと一層大型化。それまでの「ジャンボ機」と比べても大きな設計変更が施されました。また、このサブタイプは、貨物機として開発がスタートしたのち、旅客機タイプが完成するという珍しいバックグラウンドをもつ民間機です。747最終号機「N863GT」も、アメリカの貨物専用航空会社、アトラス航空向けの貨物専用機でした。

ボーイングによると、これまで製造された747の数は1574機。シリーズ累計でこれまで1億1800万時間以上空を飛び、2300万回近くフライトしたとのことです。

ボーイング747最終号機「N863GT」(画像:ボーイング)。