高崎線では、籠原駅より北の駅では電車のドアが自動では開きません。創作物で過度描写され、ネタにされることも。一体なぜ籠原からなのでしょうか。

ドアが開かなくなるのは決して怪奇現象ではない

2017年にドラマ化、2018年にはアニメ化された井田ヒロトさん原作のマンガ『お前はまだグンマを知らない』では、高崎線に乗っていた主人公が、群馬県に入る手前、埼玉県熊谷市にある籠原駅を過ぎると、電車のドアがなぜか開かなくなり恐怖する様子が描かれています。この描写、かなり誇張が入っているものの、完全にウソではありません。

とはいっても、完全に開かなくなる訳ではなく、自動では開かなくなります。籠原駅から高崎駅までの区間は、ドア横のボタンを押してドアを開ける「半自動」方式になっています。以前はボタン式でなく手で引き戸のようにドアを開ける車両も存在していましたが、2023年現在は見かけることはなくなりました。

地方の鉄道車両で、特に寒冷地の場合、こうした方式になるケースが多いようです。たとえば中央線宇都宮線なども特定の駅から半自動化します。高崎線籠原駅を管理するJR東日本高崎支社によると、省エネなども兼ね、車内の温度管理のために通年で行っているとのこと。コロナ禍ではドアの開閉による車内換気の効果についても注目されましたが、それは窓開けや空調による対策が理解を得られてきていると判断し、快適な車内環境を作るために半自動扱いを継続しているそうです。

では、なぜ「籠原駅より北」が半自動ドアになるのでしょうか。それは、利用客数が関係しています。利用状況を鑑みて、半自動化しても、問題なくスムーズに乗り降りができる駅の境目が籠原駅になっているようです。

籠原駅には車両基地が併設されており、東京方面から15両でやってきた電車は、ここで前方5両が切り離されます。前述した『お前はまだグンマを知らない』では、知らずに居眠りして起きると、車両には誰もおらず車掌さんに移動するように促されることを、これまた恐怖体験としてギャグにしています。

高崎線のドア開閉スイッチ(斎藤雅道撮影)。