還暦トレーニーはモトが取れない料理は作らない。つまり自分で作った方が圧倒的に美味しくかつ失敗がなく、絶対に安くなければ手は出さない。還暦から筋トレを始めた城アラキ氏が著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)で解説します。

激安で美味しいサラダチキンの作り方

■コンビニのサラチキは高い!

「コンビニのサラチキなんて高くて買えない」と言ったら「ケチ!」と呆れられたが、これは本音だ。コンビニのサラチキ=サラダチキンは100gで200円以上もする。その上、世間はアレが「シットリしてジューシーで美味しい」なんて喜んでいる。

食べる物がない災害時の非常食とか、外出先での緊急タンパク質補給というなら諦めもしよう。確かに100gで20g程度のタンパク質が摂れる。何度か外出時に食べたが大概は後悔した。アレを美味しいと言われると、そりゃいくらなんでも青少年の味覚は大丈夫かと心配になる。

多分、肉に圧を加えて無理矢理調味液を染みこませているのだろうが(サラチキ屋さん、間違っていたらゴメン)、その調味液がケミカルで耐えられない。肉の中心部までしっかり加熱しなければならないという食品衛生上の問題もあるのだろうが、加熱し過ぎで、あれじゃシットリどころかパサパサに感じてしまう。

「ヒマなオヤジの料理自慢かぁ〜」と思うかもしれないが、それは違う。私、こう見えてモトが取れない料理は作らない。つまり自分で作った方が圧倒的に美味しくかつ失敗がなく、絶対に安くなければ手は出さない。

まず、原価だ。コストコとか肉のハナマサなどの食肉大手スーパーなどで安く買えば国産鶏胸肉は1枚(250〜300g)が100〜150円程度で買える。原価だけ考えてもコンビニ・サラチキの半分以下だ。セールのタイミングならもっと安いはずだ。それだけなら手は出さない。手作りすれば材料原価半分以下のものなんて世間には山ほどある。

問題は味と手間だ。これで味が同じならやはり買う。あるいは手間がとてもかかるとか、プロのテクニックが必要というなら、やはり買う。しかしサラダチキンはそんな世界とは無縁だ。お湯を沸かすことができる幼稚園児なら、確実に間違いなく、市販品より美味しいものができる。

さて、最初に用意するのが「塩麹」だ。「えっ、何だそれ?」と料理無縁の男子(女子も)なら言うかもしれないが、麹に食塩と水を加え、しばらく置くとでき上がる発酵調味料だ。市販品もあるが、乾燥麹と塩さえスーパーで買ってくれば簡単に、なおかつ勝手にでき上がる。そして何より、手作りなら安いからたっぷり気にせず使える。

■塩麹を作る

用意するもの──乾燥米麹200g(たいがい200gワンパックで販売されている)、食塩(普通の塩でいいが岩塩ではなく海水塩を使用)70g、水200㏄。

・材料を合わせる──ボウルのなかに塩と麹を入れ、揉みほぐす。これを器に入れたら200gの水を入れる。麹の種類によって水加減は少し変わるが、分量は塩+麹がヒタヒタに浸かるくらいでいい。

・混ぜる──これを夏場なら冷蔵庫に入れ(それ以外の季節なら出しっぱなしでOK)日に1度上下を返すように混ぜる。

・完成──1週間ほどすると、麹の粒が潰れ全体にトロトロになる。これで完成。

麹のかすかな甘みとコクに塩味が加わって意外に複雑な味わいになっているはずだ。鶏胸肉の漬け込み以外にも、残り野菜を袋に入れて塩麹を加えれば、簡単に漬物もできる。鶏肉だけではなく、牛肉、豚肉でも同じように利用できる。

漬け込むことで肉は柔らかくなり、麹のコクとかすかな塩味もつくので、その後の味付けはいらない(私は鶏胸肉の漬け込みには、塩麹と同時にチューブのおろしニンニクも少々加えて味を少し複雑にしておくことが多い)。還暦トレーニーにとって塩麹が嬉しいのは、普通に塩で味を付けるより、塩分も少なくなるので減塩効果もあることだ。

■鶏肉の準備

まとめ買いした鶏胸肉の皮を取り、フォークでブスブスと肉を刺す。これは味を染みこみやすくするためで、面倒なら省いてもいい。ここに塩麹を表裏に塗る。

やはり面倒なら鶏胸肉をビニール袋に放り込み、その上から塩麹を落としてもいい。私の場合は鶏胸肉1枚につき、塩麹は大さじ1杯。ビニール袋1枚に鶏胸肉2枚を入れるので塩麹も大さじ2杯だ。袋の上から鶏胸肉を揉んで塩麹をなじませる。

すぐに食べる1回分は冷蔵室に、残りはまとめて冷凍してしまう。鶏胸肉2枚を2〜3日で食べるので、冷凍したものを食べるときは前日に冷蔵庫に入れ、一晩かけて解凍しておく。

「茹でるか?蒸すか?」調理方法は2通り

■世界一簡単で柔らかい、しっとりサラダチキンの作り方

「サラダチキン」を作るための調理方法は2通りある。「茹でる」か「蒸す」かだ。「蒸し器なんて見たこともない」というかもしれないが、今どきは「100均」でも売っている(写真の蒸籠は横浜中華街のものだからもう少しお高いが、性能は変わらない。要は沸騰した鍋の上に重ね、蒸気を当てるだけ)。

「茹でる」と「蒸す」。どちらにもメリットがある。

①鶏胸肉「茹でる」タイプ──いちばんの利点は簡単なことだ。鍋に鶏胸肉がかぶる程度の水を張って沸騰させる。お湯が沸騰したら塩麹がついたままの鶏胸肉をドボンと入れる。お湯はいったん沸騰をやめておさまる。

このお湯が再沸騰したら(多分1分くらいだ)火を止め、蓋をして30分放置。これで完成。

鶏胸肉を調理する上でのいちばんのポイントは、火を通し過ぎないこと。火が通っているか心配なら肉のいちばん厚い部分を少々カットして味見。真ん中に赤身が残っていなければ大丈夫。鶏胸肉は、冷凍でなければ冷蔵庫から出したばかりでもOK。

私は、ついでにこのお湯でブロッコリーも茹でてしまう。鶏胸肉を引き上げた残りのお湯で1分半から2分ほど茹で、これでブロッコリーも完成。私は気にしないが、このときに溶け出した塩麹がブロッコリーにまとわりつくのがやや問題ではある。また茹でるとどうしても水っぽくなるのは次の「蒸す」にかなわないところ。とはいえいちばん簡単だ。

②鶏胸肉「蒸し」タイプ──蒸籠に鶏胸肉を置く。写真では2段蒸籠を使ってブロッコリーも同時に蒸しているが、1段しかなければ鶏胸肉と一緒に蒸してしまう手もある。ただし、鶏胸肉は蒸し時間15分程度、ブロッコリーは2分程度の蒸し上がりなので、時間差を計算して鶏胸肉の後からブロッコリーを加えるのが少々面倒ではある。

だがこの「蒸す」メリットは、なんといってもブロッコリーが色よく仕上がり、栄養も逃げないこと。鶏胸肉の方も茹でるより少し固め、それこそハムのような食感の仕上がりになる。何よりいいのは、蒸籠をそのまま食卓に運んで食器にもなることだ。

③塩麹鶏胸肉を他の調理に使うコツ

薄切りにして普通の、たとえば野菜と一緒に炒めるときのためのポイントを2点だけ。

ひとつは鶏胸肉の切り方だ。鶏胸肉をよく見ると、真ん中に縦の線があり、これにそって葉脈のように筋が外に広がっている。まず真ん中から二等分したら、この筋を断ち切る方向で包丁を入れる。

もうひとつはこうやって薄切りにした鶏胸肉に、調理前に片栗粉をまぶすこと。ただ茹でてしゃぶしゃぶ風にしても、カリッと表面を焼き上げても、肉が保湿され柔らかさが残る。

城 アラキ 漫画原作家

(※写真はイメージです/PIXTA)