アメリカのマサチューセッツ州で、自分の臓器や骨髄を提供した受刑者は、刑期を最大1年短縮してもらえる法案が提出されたそうだ。
現在アメリカのほとんどの州では、一部の例外をのぞき、受刑者は自分の臓器を提供することができない。
この法案が可決されれば、臓器と自由を交換できる初の制度となる。最大1年とはいえ、受刑者は臓器で時間を買えるようになるのだ。
当然のことながらこの法案に関しては倫理的な観点においても物議をかもしている。
マサチューセッツ州議会に提出された法案「HD 3822」は、刑務所に服役する受刑者が、自分の骨髄や臓器を提供すれば、それと引き換えに刑期を60~365日短くしてもらえるというものだ。
大胆な法案で、さすがアメリカと思わされるが、この法案が可決される見込みは低いそうだ。それどころか、国の法律に違反している可能性すらあるという。
というのもアメリカの連邦法は、「価値ある対価」と引き換えに人間の移植用臓器を与えることも、もらうことも禁止しているからだ。
そして今回の法案の場合、刑期の短縮が「価値ある対価」とみなされる可能性は高い。
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この法案の提出に際して、州の矯正当局に問い合わせは一切なかったとのことだ。
臓器と刑期を引き換えにすることの問題点
このような臓器提供法案には、倫理的に検討すべき点がいくつもあるだろう。例えば、受刑者が刑期の短縮を提案されたとき、はたして冷静に物事を考えられるだろうか?
また受刑者はHIV・肝炎・結核といった病気にかかっている割合が高いという問題もある。そうした臓器は移植用としては不適切で、思わぬ健康被害を引き起こす恐れがある。
そもそも刑罰の主な目的の1つは「更生」であることも忘れてはならない。
服役期間は、裁判とその後の更生具合によって決められる。社会にとっても受刑者にとっても大事な服役期間を金や臓器で買えるというのは、司法制度の基本理念に反している。
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移植用の臓器不足を解消するための苦肉の策と説明
この法案を提出したカルロス・ゴンサレス州議員とジュディス・A・ガルシア州議員は、アメリカをはじめ移植用の臓器不足は深刻であり、法案はこれに対応するためのものと、その意義を説明する。
ちなみに昨年、テキサス州の死刑囚が、弁護士を通じて、腎臓を1つを提供する代わりに死刑執行の延期を要請した。この訴えは、刑事司法局により拒否され、死刑執行は予定通り行われることとなった。
なお日本でも刑罰の目的が「犯罪の予防」と「犯罪者の更生」であることは、アメリカと変わらない。
もしも同じような法案が日本でも提案されたとしたら、みんなは賛成だろうか? 反対だろうか?
References:Massachusetts Bill Proposes Prisoners Could Trade Organs For Less Prison Time | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
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