家庭料理に欠かせない野菜の一つ「ピーマン」。夏に旬を迎える野菜ですが、スーパーでは通年購入でき、1年中食卓を彩ってくれる野菜です。ところで、みなさんはピーマンの中にある白い「わた」と、そこについている「種」をどうしていますか。調理法やメニューにもよると思いますが、大きく「取り除いて捨てる」人と「食べる」人に分かれるのではないでしょうか。

 ネット上では、「全部食べます」「わたも種もおいしい」「栄養があるらしいから食べる」という人と、「食べるという発想がなかった」「わたが苦いから捨てている」「食感が好きじゃないから食べない」という人に分かれるようです。

 ピーマンの「わた」と「種」は食べるのか、それとも捨てるのか、どうするのがよいのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

皮の部分よりも、わたや種の方が苦い

Q.そもそも、「ピーマン」とはどんな野菜ですか。

岸さん「ピーマンはナス科トウガラシ属に分類される植物で、パプリカししとうなどと同じ仲間です。緑色のピーマンは未熟な状態で収穫されたもので、これを木で完熟させると『赤ピーマン』となり、ビタミンCやカロテンの量が倍増する他、甘みも強くなります。店頭には一年中並んでいますが、露地栽培の場合、旬は6~8月ごろです。

幅広い料理に使われる野菜ですが、特に肉や油との相性がよく、チンジャオロースピーマンの肉詰めなどが定番料理ですね。緑のピーマンには独特の青臭い香りと苦みがあり、好みが分かれる部分でもあります。子どもが苦手とする野菜の代表格でもありますが、近年では、子ども向けに苦みの少ない品種も開発されています。また切り方でも、繊維を断ち切る『横切り』より『縦切り』にした方が、苦みや青臭さを和らげることができます」

Q.ピーマンを切ると出てくる「わた」と「種」には、どんな栄養素が含まれているのですか。

岸さん「ピーマンのわたや種には、ビタミン類(CやA、B群)やカリウムなどが含まれています。また、ピーマンの苦みや青臭さの原因の一つでもある香り成分『ピラジン』は、わたや種に多く含まれており、その量は皮(実)の10倍です。そのため、主に食べる部分であるピーマンの皮(実)の部分よりも、わたや種の方が苦いといえます。なお、ピラジンには血流改善の効果があるといわれており、冷え性の改善や動脈硬化予防、育毛の効果なども期待されています。

ちなみに、皮(実)の部分にもビタミンCやA、B群、カリウム、食物繊維など、種と同じような種類の栄養素が含まれており、特にビタミンCが多いです。また、ビタミンPの一種である『ヘスペリジン』も含みます。これには抗酸化力があり、ビタミンCの酸化を防ぎ、毛細血管の強化や血圧を下げる働きもあります。

ビタミンCは本来、熱で壊れやすい栄養素ですが、ビタミンPが熱から守ることで壊れにくくなるため、ピーマンは加熱してもビタミンCをしっかり摂取することができる野菜といえます」

Q.ピーマンのわたと種について、「食べる」人と「食べない(捨てる)」という人に分かれるようですが、ずばり、この部分は本来どうするのがよいのでしょうか。

岸さん「わたと種の部分を使わない場合は、見栄えや食感がよくなり、独特の苦みも抑えられるので、よりおいしく食べられます。食感が気にならず、ピラジンなどの栄養成分をより多く摂取したい場合は、加熱調理して丸ごと食べると、効率的に栄養成分を摂取できます。どちらがよいということではなく、用途や好みに応じて、使用法や調理法を使い分けるとよいのではないでしょうか。

わたや種を食べたからといって、栄養の効果が顕著に出るわけではありませんが、何となくいつも取り除いていて、『わたや種も食べられる』こと自体を知らない人もいると思います。調理次第でおいしく食べることができ、栄養価もアップするので、ぜひチャレンジしてみてほしいです」

Q.ピーマンのわたと種をおいしく食べるための調理法や、注意点を教えてください。

岸さん「まず、ピーマンを選ぶ際は、皮にハリがあり、傷や穴がなく、ヘタが黒ずんでいない新鮮なものを選びましょう。ピーマンの表面に小さな穴が開いていたり、傷みがあったりする場合、まれに実の中に虫が入ることがあるため、食べる際には種の部分もよく確認しましょう。

わたと種も含めて丸ごと食べるときには、細かい土やほこりを落とすために、ヘタ部分は注意してしっかり洗ってから使いましょう。ちなみに、ヘタの部分も食べられます。なお、ピーマンは鮮度が落ちると種が黒くなることがあるので、その場合は廃棄してもよいかと思います。

わたと種をおいしく食べるための方法としては、洗った新鮮なピーマンをしんなりするまで丸ごと炒め、調味料を加えてくたくたになるまで煮る調理法があります。全体がやわらかくなり、わたや種、ヘタにもしっかり味がつきますし、種の食感も邪魔にならず、むしろプチプチとしたいいアクセントになるので、お勧めです。また、定番の『ピーマンの肉詰め』も、わたと種を取らずに使うことで、肉だねとピーマンがしっかりと密着し、はがれにくくなります」

オトナンサー編集部

ピーマンの「わた」と「種」どうしてる?