NHK連続テレビ小説舞いあがれ!」で、主人公・舞(福原遥)の兄で投資家の悠人(横山裕)にインサイダー取引疑惑が浮上して、大ピンチを迎えている。

投資で損失が膨らんでいた悠人は、「目を付けていた」という企業の株が急騰して、一気に26億円の損失を取り戻した。しかし、その後、テレビでインサイダー取引疑惑が報じられ、母めぐみが経営する町工場「IWAKURA」にも取材陣が押し寄せていた。

2月6日の放送では、家族からの電話にも出なかった悠人が、大雨の公園をさまよいながら倒れてしまうシーンもあり、SNSでは心配の声も上がっている。

インサイダー取引とはどのようなものか。どんなペナルティがあるのか。今井俊裕弁護士に聞いた。

●5年以下の懲役刑や500万円以下の罰金刑、さらに課徴金も

インサイダー取引とは、内部者取引ともいわれるように、企業の内部にいる者が、ある会社の株価に影響を与える重要な事実を知ったときに、その事実が他の投資家一般に公表される前に不正な利益を得る目的で株式等を売買することです。

これは金融商品取引法で禁止されており、違反すれば5年以下の懲役刑や500万円以下の罰金刑のどちらか一方、又は悪質ならば双方が科されます。その不正取引者を雇用していた会社には5億円以下の罰金刑が科されることもあり得ます。

さらに得た不正な利益相当額が課徴金として課されます。これは罰金とは別の制裁であり、罰金刑とは別に課されます。

株式が投資家一般によって取引されている上場株式市場では、その株式を発行している会社に関する情報それ自体によって、当該株価は変動します。

まだある特定の企業と合併はしていなくても、例えば将来ある企業と合併することにした、などという情報がプレスリリースされると、その会社の株価は程度の差はあれ通常は大きく変動します。

●社内関係者でなくても、内部者から情報を知った人は規制を受ける

合併する、などという会社の意思決定に関する情報だけではなく、他にも例えば、既に公表した経常利益を下方修正する、といった決算に関する情報もあります。それ以外でも広く一般的に投資家の判断に影響を与えるような情報も含まれます。

例えば、商品の産地偽装や長年に渡って工業製品の検査データの改ざんを行っていた、などという情報です。このような重要な事実が、会社から公表されるよりも前に、その会社の役員や従業員などの内部者、あるいはそういった内部者からその情報を打ち明けられた友人・知人や家族といった情報受領者も、インサイダー取引規制を受けます。

規制の幅はさらに広く、仮にそういった情報の内容を打ち明けずとも、単に、「この会社の株、将来上がるから買っておいたらいいよ」などというような単なる推奨であっても、それが内部者としてインサイダー情報を知った上で推奨したのであれば、その推奨した者も規制の対象になります。

このような不正なインサイダー取引の調査の為に、日本証券業協会の自主規制法人は日々、株の売買取引を審査しています。重要な事実が公表されるよりも前に不自然な売買がなかったか、証券会社から投資家の属性などの資料も提出させて審査しています。

さらに政府機関である証券取引等監視委員会も、日々目を光らせていますし、情報のたれ込み、つまり内部告発等も幅広く受け付けています。

【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html

「舞いあがれ!」悠人にインサイダー疑惑、どんな罪? 大雨の公園で倒れ、SNSで心配の声