大胆なイメチェンに成功した際は「ビフォーアフター」に注目が集まりがちだが、これは人間に限った話ではない。

以前ツイッター上では、思わず我が目を疑う「CD-Rの衝撃的なイメチェン」が話題となっていたのをご存知だろうか…。

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■このCD-R、何かがおかしい…

今回注目したいのは、ツイッターユーザー・yishiiさんが投稿した1件のツイート

こちらの投稿には「CD-Rに書き込んだ音楽聴いてたらいきなり無音になって、??? って思いながらCD取り出したら透明のズルムケになってるんやけど」と綴られており、一読しただけでは状況がよく理解できない。

CD-R

そこで、ツイートに添えられた写真を見ると…ツイート本文にあるようにコーディング部分がベロリと剥がれ、見事な「透明」になったCD-Rの姿が確認できたのだ。


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■「劣化するとは聞いてたが…」

「こんなことある!?」と、見た者の気持ちを代弁するかのような叫びで締められたツイートは大きな反響を呼び、投稿から数日で8,000件以上ものRTを記録するほど。

他のツイッターユーザーからは「初めて見た…」「プレイヤーの内部が心配になる」「経年劣化でこんな風になるの!?」「劣化するとは聞いていたけれど、予想の斜め上だった」「手持ちのCDがこうなったら…怖すぎる」など、驚きの声が多数寄せられていた。

発見時の様子について、ツイート投稿主・yishiiさんは「普段通り音楽を聴いていたのですが、突然無音となったので曲の冒頭に戻る操作をするも無音の状態が続き、取り出したら写真のような状態になっていました」と振り返る。

なおCD-Rは約10年前に購入し、傷などない美品状態で保管していたもので、メーカーは不明。投稿の半月ほど前に音楽データを保存し、件の出来事が発生するまでは問題なく再生できていたようだ。

CD-R

恐らく大惨事となっている「プレイヤーの中身」も気がかりだが、それ以上に興味をひかれるのは「CD-Rの身に何が起こったか?」という点。こちらについてプロの意見を聞くと、驚きの事実が明らかになったのだ。


■日本の環境、CD-Rに過酷すぎる…

CD-Rに造詣の深い企業「ソニー株式会社」に事情を説明し、取材を打診したところ…2023年時点で同社は既にCD-Rの生産を終了していることが判明。件のCD-Rのメーカーが不明という背景もあり、残念ながらコメントを得られなかった。

そこで「現在もCD-Rを販売(生産)している企業」複数社にコンタクトをとったところ、東京台東区に本社を構える企業「ジャパンディスク」が取材を快諾してくれたのだ。

早速、CD-Rに起こった事象を確認しようと意気込んだが…改めて考えると、身近にあったCD、CD-Rの構造について、詳しいことを何ひとつ知らない事実に気付かされる。

そのため、本題に入る前にCD-Rの「特徴」を確認することに。まずは一般的な「寿命」について尋ねると、ジャパンディスクからは「生産メーカーにより、大きな違いがあると思われます」という回答が。

「日本製の物は品質が良く、海外製は良くないと言われておりましたが、海外製の中にも日本レベルの品質の物はありました。メーカーにより評価が異なる場合もありますが、一般的な耐久促進試験では50年以上と言われています」との補足も得られたのだが…CDが誕生した1982年からまだ50年が経過していないため、実際の評価はなんとも言い難いところだ。

CD-R

CD-Rの寿命を縮める一番の要因はこの「製造品質の悪さ」で、次点が「保管状況の悪さ」だという。

ジャパンディスクは「熱、紫外線(直射日光)、湿気などによるものです」と例を挙げつつ、「一般の家庭内環境であれば大きな問題はないと思いますが、例えば夏場に自動車の車内に置きっぱなしするなどは良くありません」と、具体的なケースを説明していた。

今回話題となったケースとは異なるが、もちろん読み取り面の傷や、指紋等の汚れが著しい場合も、読み取りエラーが発生する。ちなみに湿気の多い時期が長い日本の環境は、CD-Rの寿命に不利に影響すると考えられるそうだ。

■今回CD-Rの身に起こったのは…

続いてはCD-Rの「構造」について尋ねると、ディスクの厚さは1.2mmで、ポリカーボネートの基板の上に色素(シアニン他)、反射膜(銀合金)、保護膜(アクリル)、受理層印刷(アクリル系?)と呼ばれる要素が連なっていることが判明。

この「受理層」と呼ばれる部分が今回大いに注目を集めた「ホワイトレーベル」の要素で、ジャパンディスクは「インクジェットプリンターで印刷できるよう、下地をシルク印刷したものです」とも説明している。

CD-R

これらの構造を前提とし、ジャパンディスクは「今回話題となったCD-Rに起こった現象ですが、ポリカーボネートは吸水性があるため、湿気による水分が基板面や端面から侵入して反射膜を侵し、反射膜が錆びて浮き上がり、基板から色素、反射膜、保護膜、受理層印刷が剥離したものと思われます」との分析コメントを寄せてくれたのだ。

水分の侵入経路としては「基盤面」や「端面」以外に「印刷面」も考えられるそうで、「印刷時に使用されるインクジェットプリンターは水性インクですので、受理層は吸水性が良くないとインクを弾いてしまいます。受理層からの水分侵入を保護膜が防ぎますが、メーカーにより性能はまちまちであるため、複数箇所から水分が侵入するケースも起こり得ます」と補足している。

CD-Rにとって水分は大敵なことから、「長期保存を考えた場合、インクジェット対応ホワイトレーベルの商品よりも、メーカーオリジナル印刷された商品の方が、印刷面からの水分侵入については安全かもしれません」とのコメントも得られた。

その他の原因としては「粗悪品による各層の接着強度の低下」も考えられるとのこと。


■「CD-Rだからこそ」の利点も

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…と、ここまでの内容を受けて「音楽サブスク全盛期の時代に前出のハンデを考慮しながら、CD-Rで音楽を聴くことに意味があるのだろうか…?」と、首を傾げた人も少なくないはず。

しかし当然CD-Rには、人々に長年愛されてきた様々な理由があるのだ。ジャパンディスクは「当社のガラスCD-R(現在は生産休止、夏頃の販売開始を予定)など、高音質タイプのCD-Rでは元のCDよりも音が良くなることがあります」「また音楽用途の他にデータ保存があり、CD-RおよびDVD-Rでは、ディスクアットワンスと呼ばれる方法で一度書込みをしたら、上書き保存ができません。そのため、データの改ざんや誤消去の防止になります」と、具体例を説明する。

また「CD」は全世界共通の規格であり、世界中どこでも再生可能な点も大きな強み。全世界に流通した「CDプレイヤーの台数」を想像したことはあるだろうか。

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「今後もCD-Rを愛用していく」という人は、ぜひCD-Rの長所だけでなく弱点をも理解し、末長く付き合ってみてほしい。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

突如無音になったCDプレイヤー、出てきた物体に目を疑う 「怖すぎる…」と驚きの声