ラーメン屋の店員にラーメンの入った器をひっくり返されて、腕と脇腹をやけどしたーー。そんな不運なトラブルに遭遇した客から、弁護士ドットコムに相談が寄せられています。

相談者によると、やけどは軽度のものと診断されましたが、数日経っても赤い痕が消えませんでした。しかも、スマートフォンとワイヤレスイヤホンにもスープがかかり、一時的に充電できなくなったり、イヤホンの片耳がほとんど聞こえなくなったりしたそうです。

店は全面的に非を認めていますが、治療費、クリーニング代、迷惑料として1万円をレターパックで一方的に送ってきて、「足しにしてください」と伝えるだけでした。

相談者は店の一方的なやり方に納得のいかないようですが、どうすればいいのでしょうか。櫻井俊宏弁護士に聞きました。

●店員に過失があれば「不法行為」となる

今回のケースの場合、店員に過失があれば不法行為(民法709条)が成立します。また、店員の業務上の不法行為については、店も使用者責任を負うので、店員とともに賠償の責任を負う必要があります。

店側が一方的に1万円を送ってきたとしても、店と被害者の間で示談が成立したわけではないので、被害者である客は、あらためて相当な範囲の損害賠償を請求することができます。

やけどの治療のために通院が必要な場合、治療費に加え、たとえば通院期間に応じて、交通事故慰謝料の裁判基準を参考に、通院慰謝料として20〜50万円程度の慰謝料を請求できる可能性があります。

他方、通院を必要とせずに治った場合、やけどを負ったことに対する慰謝料が発生することになります。軽度であってもやけどがある以上、1万円でおさまる話ではなく、数万円は慰謝料が認められると思います。

スマートフォンやイヤホンの賠償請求もできますが、請求額は、修理費相当額と時価のいずれか安い方に限られ、購入時の金額を請求できるわけではありません。

いずれにしろ、ラーメン屋側に不誠実な対応があった場合、SNSで拡散され、閉店まで追い込まれるケースも見受けられます。このようなトラブルがあった場合は、さらなるトラブルの激化とならないように、誠実に対応するべきでしょう。

【取材協力弁護士】
櫻井 俊宏(さくらい・としひろ)弁護士
交通事故、相続・離婚問題等を得意としている千代田区青梅市の弁護士法人アズバーズ代表弁護士。応援団出身であり、中央大学の法律顧問(法実務カウンセル)を担当している。「弁護士 ラーメン」と検索すると自身のラーメンブログが一番上に出てくる程のラーメン通。
事務所名:弁護士法人アズバーズ
事務所URL:http://as-birds.com

ラーメン店員が器をひっくり返し、客が腕をやけどする大惨事 店「1万円で何とかして」