金融庁が定める証券会社への指針「最良執行方針」が今年1月、改正されたことはご存じですか? それにより投資家が「より価格を重視」した取引ができるように証券会社は環境整備を行なう必要性が出てきました。

そこで、ダルマ・キャピタルとジャパンネクスト証券のトップらによるYouTubeライブ「最良執行方針改正による株式市場への影響 ~PTSのシェア拡大とHFTの戦略について~」では、これからの株式市場はどう変わっていくのか? 展望と戦略が語られました。

「最良執行方針改正による株式市場への影響 ~PTSのシェア拡大とHFTの戦略について~」(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=Q5S2U1ghL5M[リンク]

登壇者は、私設取引システム(Proprietary Trading System=以下、PTS)の運営を主軸に金融サービスを展開するジャパンネクスト証券 代表取締役CEOの山田正勝氏と、高速取引行為(High Frequency Trade=以、HFT)と呼ばれる金融商品取引を専業にしている唯一の国内法人ダルマ・キャピタル 代表取締役Founder塩谷明達氏。進行役には、経済アナリストで日本金融経済研究所代表理事の馬渕磨理子氏。

まず、投資家でなければまず耳にすることのない「PTS」「HFT」を知っておかなければ理解は進みませんので、その説明から。

「PTS」とは、東京証券取引所(東証)など特定の取引所以外でも有価証券を売買できる私設取引システムのことです。東証の取引時間(9時から昼休みをはさんで15時まで)以外の朝や夕方、夜にも取引ができます。日本では、ジャパンネクスト証券を含む専業3社がPTSを運営しており「3社でのシェアは10%超」(山田氏)ということです。ここでは、「SOR(Smart Order Routing=スマート・オーダー・ルーティング)」という、複数の取引施設から最良の価格を提示する取引を自動的に選択し注文を出しています。技術の急速な進歩と利便性の向上や手数料低下の努力で「投資家に早く、安く、優れた取引を!」提供することがモットーだと山田氏は胸を張ります。

「HFT」とは、極めて短い時間にコンピューターで自動的な株価のやり取り行うシステムのことで、高速取引や高頻度取引と呼ばれます。日本で取引を行うHFT業者は昨年12月現在52社あり、「日本法人はダルマ・キャピタルのみ」(塩谷氏)。勝ち負けを大量に繰り返す発注によって確率値を収束させ、1日単位では負けない取引だと特徴を話してくれました。最近参入した東京金融取引所では「年明けからの数字を見ていただければ分かると思うのですが、bid ask(売り買い)の価格差が大きく縮まりまして、マーケットメーカーとして市場に貢献できているのでは」と、塩谷氏。

より「価格」が重視された今回の「最良執行方針」の改正について、山田氏は「個人投資家の発注が増えることが予想され、政府の資産所得倍増プランにも合致する」と歓迎する一方で、移行期間とされている1年間で指針に従ったSORの導入やシステムの改修が必要になるなど、証券会社にとっては対応待ったなしの状況となることを明かします。そのうえで新たな市場間競争の幕開けの年になると予想。「以前のように、座ってお客さんがやってくるのを待つ時代では、もうありえない」と話します。

今後の事業戦略としては、「日本株の夜のマーケットを充実させたい。現在、23時59分まで開いているが、もう少し延長したい。また、大阪の国際金融都市化にも貢献したい」(山田氏)。「国内の金融市場を成熟させていく意味において、国際金融都市構想の一環として福岡証券取引所のお手伝いをしていけたら」(塩谷氏)と、投資家目線で「最良」な株式市場づくりを目指していきます。

金融庁の「最良執行方針」の改正で株式市場は何が変わるのか? 金融トップ2人が明かす戦略