伝説のロックバンド「THE FOOLS」のボーカル・伊藤耕さん(当時62歳)が、服役中に亡くなったのは、刑務所などで適切な処置をしてもらえなかったからだとして、伊藤さんの妻が国に約4321万円の損害賠償をもとめた訴訟は2月7日、東京地裁で和解が成立した。原告側によると、口外禁止条項はなく、ほぼ満額の賠償金が国側から支払われるという。

覚せい剤取締法違反などの罪で、月形刑務所北海道月形町)に服役していた伊藤さんは2017年10月15日から、腹痛と嘔吐を訴えて、町立病院に搬送されたが、腹部の触診と痛み止めの投与だけで刑務所に戻された。その後も転倒を繰り返し、16日深夜に搬送されたが、17日未明に亡くなった。

伊藤さんの死因について、死体検案書には「肝硬変からくる肝細胞がん破裂(推定)、出血性ショック」と記載されていたが、不信感を抱いた伊藤さんの妻が、北海道大死因究明センターで、遺体を解剖してもらったところ、「回腸絞扼性イレウス(腸閉塞)による出血性ショック」だったことがわかった。

伊藤さんの妻は2019年10月、国と月形町を相手取り、国家賠償訴訟を東京地裁に起こした。原告代理人によると、口頭弁論を経て、弁論準備手続きに入り、2022年3月に月形町と和解(解決金50万円)。監視カメラの動画提出などもあって、裁判所から「国の有責前提の和解」を検討するよう示されていたという。

伝説的ミュージシャンの獄中死、遺族側の「勝利的」和解成立…国が「満額」の賠償金