西暦800年から約250年間、西ヨーロッパ沿海部を侵略したスカンジナビア、バルト海沿岸地域の武装集団「バイキング(ヴァイキング)」だが、彼らが海を渡り、イギリスへやってきたとき、馬や犬などを持ち込んでいたことが、残された骨の分析からわかった。
これまで、武器を持ってイギリスに攻め込んできたバイキングが、農村から大量に動物を略奪していったと考えられており、彼らの暴力的な面ばかりが強調されていた。
だが新たな証拠によると、彼らは動物たちと密接な関係を築き、一緒に荒海を航海していたことがわかったのだ。
【画像】 バイキングの埋葬地から一緒に埋められた動物の骨を発見
イギリス、ダービーシア州ヒース・ウッドにあるスカンジナビアのバイキング埋葬地から、9世紀の骨が見つかった。
ここには、火葬された動物と人間の骨が一緒に埋葬されていた。
このことは、これら動物たちが特別な意味をもった存在で、人間と同じ火葬用の薪で荼毘にふされたことを意味している。
こう語るのは、ダラム大学とブリュッセル自由大学の研究者テッシ・ローフェルマン氏だ。
ヒース・ウッドで見つかった、火葬された馬の骨の破片 / image credit:Tessi Loffelmann
バイキングは動物たちを愛するペットとして扱っていた可能性
「動物たちは、単に経済的な目的のためというより、バイキングの仲間、つまりペット、愛玩動物として扱われていたようです」ローフェルマンは言う。
「なんだかとても心温まる話です。これは、バイキングにとって動物たちがいかに重要な存在であったかを、私たちが過小評価していたことを示しています」
馬や犬たちは、バイキングと共にロングボートに乗って、北海を航海した。その旅は、何週間もかかったことだろう。
「当時の馬は、現在よりも小型だったので、船で旅するのに多少は適していたかもしれませんが、それでも濡れたりして居心地は良くなかったでしょう」
バイキングがイギリスに動物を持ち込んだ証拠
発掘調査を共同指揮した、ヨーク大学のジュリアン・リチャーズ教授は、
バイユーのタペストリー(1066年のノルマンディー公ギヨーム2世によるイングランド征服の物語を伝える刺繍画)には、ノルマン騎兵隊が馬を船から降ろしている場面が描かれていますが、その200年前にバイキングの戦士がイギリスに馬を運んでいた最初の科学的証拠といえます
北欧神話や13世紀のサガには、バイキングの生活の中で動物たちが重要な役割を担っていたことが記されている。
ダービーシア州のスカンジナビアの埋葬地を発掘する科学者たち / image credit:Tessi Loffelmann
イギリス唯一のスカンジナビアの大規模な火葬場であるヒース・ウッドで、ブタの骨も発見されたが、これは生きていたブタの骨ではなく、北方から持ち込まれたトークン、またはゲームの駒のようなものだった可能性がある。
残されていた動物の骨のストロンチウムを分析することで、動物たちがスカンジナビアからやってきたことがはっきりした。
ストロンチウムは、岩、土壌、水に自然に存在し、植物に取り込まれる。動物がその植物を食べると、その個体の骨や歯となる。
考古学者のキャット・ジャルマンは、火葬された骨に対してこの分析技術を使うことは、とてもエキサイティングだったと語る。バイキングの埋葬は、火葬が多かったから
だ。
「この研究は、まったく新しい証拠への道を切り開いたことになります」
この発見は『Plos One』誌に発表された。
追記:(2023/02/08)本文を一部訂正して再送します。
References:Vikings brought their animals to England, research suggests | Archaeology | The Guardian / written by konohazuku / edited by / parumo
コメント