飲食店での迷惑行為をおさめた動画が相次ぎSNSで拡散し、企業側が対応に追われる事態となっている。

1月以降に話題となった事例を一部、紹介する。

・他人の注文を横取りして食べる(はま寿司
・卓上の醤油差しの注ぎ口や湯呑みをなめる(スシロー
ドリンクバーの飲み口から直接飲む、店内で火遊び(カラオケまねきねこ
・天かすを共用のスプーンで食べる(資さんうどん
・共用の紅生姜をかきこんで食べる(吉野家

一例だが、こうした行為はSNSで拡散するだけでなく、NHKなど大手メディアも扱う異例の事態となった。ネットでは迷惑行為に対する批判の声が高まり、企業側は謝罪を拒否し、警察への相談を明言するなど、厳しい姿勢を示しているのも特徴的だ。

2月7日には、野村哲郎農林水産相が「食品産業への影響も大きく、非常に残念。警察には厳正に対処してほしい」と述べ、事態は広がりをみせている。

店の経営にもつながる行為だけに、今後も店が迷惑行為に対して強い姿勢を示すのも当然だ。一連の騒動を弁護士はどうみるのか。自身もホルモン屋を経営する石崎冬貴弁護士に話を聞いた。

●石崎弁護士「メディアリテラシーの問題と不可分」

相手が個人であることを考えると、仮に多額の損害賠償請求が認められたとしても、回収できる見込みはありません。店側が強い態度を示しているのは、金銭面以外の目的で行っているといえます。

大手の場合、株主から説明を求められますし、小規模個店と違って、対面で顧客に説明する機会もありません。「厳しく対応している」という広報を出すことによって、顧客に安心感を与えるという意味があると思います。

もちろん、お店としては絶対に許せない「テロ行為」ですから、感情的にも理解はできます。

今回、投稿が相次いで発覚したことから、大きな騒動になっていますが、このような話は昔から絶対にあったはずです。実際、SNSが普及した10年ほど前から、定期的にこのような話題が巷を賑わせます。今はSNSで個人が世界に対して発信でき、その結果として一度拡散してしまえば止まりません。

極端な話、同じ迷惑行為であっても、店のスタッフにその場で見つかっただけなら、ここまで大ごとにはならなかったと思います。世間が認知してしまったから、模倣犯も出るし、それに対する警告や対策も必要になっています。この問題は、メディアリテラシーの問題と不可分だと思います。

【取材協力弁護士】
石崎 冬貴(いしざき・ふゆき)弁護士
東京弁護士会所属。一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。自身でも焼肉店(新丸子「ホルモンマニア」)を経営しながら、飲食業界の法律問題を専門的に取り扱い、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。著書に「なぜ、一年で飲食店はつぶれるのか」「飲食店の危機管理【対策マニュアル】BOOK」(いずれも旭屋出版)「飲食店経営のトラブル相談Q&A―基礎知識から具体的解決策まで」(民事法研究会)などがある。
事務所名:法律事務所フードロイヤーズ
事務所URL:https://food-lawyer.net/

なぜいま飲食店の迷惑行為が続々と発生するのか 飲食専門弁護士が考察