〈居住者以外立入禁止〉

 玄関前にそう掲げられた3階建ての一軒家。観葉植物が並ぶ中、スキンヘッドの男は、5つの部屋で9人の“妻”と生活をしていた。

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宇宙人に食べられる」と脅して性的関係を要求

 警視庁が東京・東大和市の元占い師・渋谷博仁(74)と元妻で飲食店店員・渋谷千秋(43)を準強制性交等未遂容疑で逮捕したのは、2月7日のことだった。

「渋谷らは昨年12月12日、10代の女性を占いと称して自宅に招き、『あなたは近々死ぬ。宇宙人に連れ去られ、皮を剥がされ食べられる。私と性交するしかない』などと囁き、性的関係を要求。女性が被害を訴え、事態が発覚した。渋谷にとって、千秋は2003年12月5日に籍を入れ、10日後に離婚した9番目の“妻”。渋谷は自宅で、女性9人、子供3人と生活していたのです」(社会部記者)

 この“一夫多妻男”は一体、どんな人物なのか。私立大を卒業後、アルバイトを転々とし、臨床検査会社に7年ほど勤務。1999年、約25年連れ添った最初の妻と離婚してから暴走が始まる。翌00年4月頃、自宅で占いを始め、若い女性を次々と自宅に招くようになったのだ。

 午前4時頃になると、ろうそくが灯った室内で女性たちは呪文を唱えていたという。彼女たちはいかにして、渋谷に洗脳されていったのか。共同生活を送っていた女性の母親は当時、小誌の取材にこう答えていた。

「渋谷から『霊がついている』と言われ、除霊のために共同生活を始めた。『私は自衛隊幹部。周りにはスパイがいる。ここを出ていけば、殺されたりする』と言われ、身も心も支配されていったようです」

 渋谷は短期間で結婚と離婚を繰り返し、女性たちに「渋谷姓」と不動産を与えた。04年時点では、8人の女性に8等分ずつ自宅の土地が贈与されていた。

 ある高齢夫婦が近隣住民の家に駆け込んだのは、05年夏頃。「娘が共同生活をしている」と聞き、奪還に訪れたという。

「娘さんの手を取って連れ帰ろうとしたら、スプレーを吹き付けられたそう。眼を押さえながら『眼に何かをかけられたので、洗面所を貸して下さい!』と言っていた。警察に相談したが、娘さんに『好きでここに居るんだから帰らない』と抵抗され、泣く泣く帰っていった」(近隣住民)

「夢の中で『もてる呪文』を獲得」

 渋谷はこの頃、報道陣にこう嘯いていた。

「夢の中で『もてる呪文』を獲得し、占いにきた女性に試したら続々と女性が集まった。10人に6、7人は成功する。愛は分配している。私は狭心症で虚弱体質なので働いている女性に金を出してもらっている」

 捜査のメスが入ったのは、その直後だった。05年10月、渋谷は20歳の女性に共同生活に加わるよう強要。逃げようとする彼女を「人に話したら命が危ない」などと脅し、06年1月に脅迫容疑で逮捕されたのだ。自宅から押収されたのは、高圧電流銃や「ザ・殺人術」「催眠術師になりたい」と題された書籍だった。

「26歳女性への強要未遂容疑で再逮捕され、06年5月、有罪判決を受けた。当時渋谷と暮らしていたのは、女性11人と女児1人でした」(前出・記者)

 一度目の逮捕から約17年――。渋谷は、残った9人の“妻”と息を潜めるように暮らしていた。

「彼女たちは皆メガネをかけていて地味。パンツスタイルで電動自転車に乗り、朝7時に出て、夕方5時に帰ってくる規則正しい生活を送っていた。小学生の子供は、車で学校に通っていました」(別の住民)

 今も“妻”たちは、渋谷の帰宅を待っているという。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年2月16日号)

逮捕された渋谷博仁(日テレニュースより)