かつて世界有数の航空機メーカーとして君臨した旧ソ連ロシアの「ツポレフ」。同社が1999年2月8日に初飛行に成功させた旅客機が「Tu-334」です。この機は2機のみの製造で実用化されなかったものの、斬新なコンセプトを持っていました。

堅実な胴体に斬新エンジンを積む…という発想

かつて世界有数の航空機メーカーとして君臨した旧ソ連ロシアの「ツポレフ」。同社が、1999年2月8日に初飛行に成功させた旅客機が「Tu-334」です。この機は2機のみの製造で実用化はされなかったものの、斬新なコンセプトを持っていました。

Tu-334は全長、全幅ともに約30mの大きさをもち、約100人の乗客を乗せることができます。航続距離2000~3000km程度の短い路線むけに製造されたモデルで、エンジン2基を胴体後部に配した「リアジェット」のスタイルを持つのが特徴です。

この機は、800機以上の売り上げを記録したツポレフのジェット旅客機「Tu-134」の後継モデルとして、ソ連時代の1980年代後半に開発がスタート。胴体設計は開発コストと時間を削減するため、Tu-134の後発モデルで、機体サイズが大きい「Tu-204」のデザインが生かされています。

そして、Tu-334のもっとも斬新な特徴といえるのが、搭載エンジン。まず初めに、現代のジェット旅客機ではスタンダードな「ターボファン・エンジン」搭載機をデビューさせたのち、ゆくゆくは機体のベースデザインはほぼそのままに、「プロップファン・エンジン」という異なるタイプのエンジンを搭載したサブタイプを展開させる予定だったのです。

キモの「プロップファン・エンジン」、どんなもの?

将来的にTu-334に搭載される予定だった「プロップファン・エンジン」は、現代のプロペラ旅客機で一般的な「ターボプロップ・エンジン」の発展型で、同軸でつながった二重のプロペラが、相互に逆方向にまわる「二重反転プロペラ」を備えたデザインが特徴です。ターボプロップ(プロペラ旅客機)より高速飛行が可能で、ターボ・ファン(ジェット旅客機)より燃費効率が良い「いいとこ取りのエンジン」として、一時期旅客機にも採用すべく研究が進んでいました。

初期タイプ、つまり一般的なジェット旅客機のスタイルをもつ「Tu-334」は、ソ連崩壊などの影響をうけ、開発まで10年以上の時間を要したものの、初飛行に成功。飛行時間は約30分だったものの、乗員からは、機体の安定性や離着陸特性の面で高い評価を得ていたと記録されています。

その後Tu-334は、ロシアの型式証明を2003年に取得しました。当時は同機は7社から確定注文を経ており、一時は、約100の航空会社が同機の導入を検討していたとされています。そうようななか、ロシアの航空機メーカーに大きな転換点が訪れます。

ロシアでは、航空機メーカーが結集し「統一航空機製造」として作られた旅客機スホーイ・スーパージェット100」が、本格的な実用化にむけ進められました。「スホーイ・スーパージェット100」はちょうどキャパシティやスペックがTu-334と競合するものでした。そうして2009年、Tu-334のプロジェクト自体がとん挫してしまったのです。製造された2機はターボファン版で、ついに、プロップファン搭載版の実機が作られることはありませんでした。

ツポレフ「Tu-334」(画像:Public Domain/ZiminVasiliy)。