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 体の色を瞬時に変えることができるイカの皮膚から着想を得た「液体窓」が開発された。この窓は、窓から差し込む太陽光を細かく調節し、部屋の明るさや温度を変えることができるという。

 すでに電流で透明度を調節するスマート窓ならすでにある。だがイカ式液体窓は、ただ室内に入る光を調節するだけでなく、その波長や強さといったところまで細かくコントロールできる。

 このイカした特徴を利用すれば、太陽光で室内を明るく照らしながら、熱だけ遮断するなんてことができる。その省エネ効果は大きく、建物の冷暖房や照明のエネルギーを半分にできてしまうそうだ。

 

【画像】 擬態の名手、イカの皮膚に着想を得た「液体窓」

 カナダトロント大学の研究チームが開発した「液体窓」は、イカのようにパッと色が変化させる生物ヒントに作られたものだ。

 液体窓といっても、本当に液体なわけではない。透明なプラスチックシートを重ねた構造になっており、そのスキマに液体を流せるようになっているのだ。

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カの皮膚をヒントに開発された「液体窓」。部屋に入る光を細かく調節し、大幅な省エネを実現できる / image credit:Raphael Kay, Adrian So

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太陽光を細かく調節することで室内の明るさや温度を変化

 部屋に入ってくる光を調節するには、液体に色素や粒子などを混ぜて、いらない光をカットしてやればいい。

 通す光の種類を変えたシートを何枚も重ねておけば、それらを組み合わせることで、室内に入ってくる光の強さや波長などを細かく調節することができる。

 だから部屋を外の光で明るく照らしながら、熱だけ遮断するなんてこともできる。

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イカの色の変化は、色素要素と構造要素の多層構造内の協調的な作動を用いて実現されている / image credit:トロント大学

光熱費が50%削減できる可能性

 コンピューターモデルで液体窓の省エネ効果を調べてみたところ、近赤外線(つまり目に見えない光だ)の透過率を調節する層が1つあるだけで、冷暖房や照明のエネルギーを年に約25%省エネできることがわかったという。

 さらに可視光を調節する層もくわえれば、省エネ率は50%にもなる。

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 トロント大学のラファエル・カイ氏は、「建物は室内の冷暖房や照明のためにたくさんのエネルギーを使っています。建物に入る太陽エネルギーの量・種類・方向を戦略的に調節できれば、光熱費を大幅に削減できるのです」と、プレスリリースで述べている。

 この研究は『PNAS』(2023年1月30日付)に掲載された。

References:Liquid windows’ inspired by squid skin could help buildings save energy / Squid skin-inspired liquid windows help buildings save on energy costs / written by hiroching / edited by / parumo

 
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イカの皮膚に着想を得た「液体窓」で建物の光熱費を大幅に削減