人類の究極のタブー、人間が人間を食べる「カニバリズム」――。2011年9月24日ニコニコ生放送「ニコニコ ナショナル ジオグラフィック チャンネル ~人・文化 カルチャー編~」ではそのカニバリズムに迫った「食人種の真実:カニバリズム」が放送された。作家で探検家のピアーズ・ギボン氏は、かつてニューギニア島の奥地において行われていたというカニバリズムの真実に迫った。カニバリズムの根底には、呪術信仰からくる「魔法使い」に対する報復があったという。

 カニバリズムの習慣は、限られた地域だけにあったものではないようだ。たとえば、イギリスにあるゴフ洞窟で見つかった1万4000年前の動物の骨には、食べるために道具を使って肉を削り落とした痕跡があるが、同じ場所には人骨もあり、同様の削り跡が見つかっているという。

 一方で最も新しいカニバリズムの記録は、ニューギニア島のとある部族のものだという。カニバリズムは今なお行われているのだろうか。ギボン氏はニューギニア島を訪れ、1969年まで外国人の立ち入りが禁止されていたという奥地に踏み入り、「ビアミ族」という部族と会う。

 20世紀半ば、この地を統治していたオーストラリアの探検隊が行った調査によると、ニューギニア島の奥地は「文化のタイムカプセル」ともいうべき状態で、カニバリズムの風習が残っていたという。ここには今もなお、呪術の力や精霊の存在を信じる部族が暮らしている。彼らは「魔法使い」とされる人物を襲撃し、竹のナイフでさばき食べていたという。当時を知る住民によると、殺害する対象を選んでいたのは、部族の歌を歌うときの"ソングリーダー"でもある長老だ。長老は「魔法使い」の居場所を突き止め、戦いに出る者を決める権限を持っていた。長老は言う。

「私は2人の人間の肉を食べたことがある。ひとりは男で、もうひとりは女だった。味は変わらない。よその村が仲間の女をさらって食べたから、復讐のためやつらの女をさらって食べた。男は魔法使いだったから食べた」

 つまり、ここではカニバリズムの根底に呪術信仰があり、「魔法使いが人を殺したから仇をとった」といったような報復がその理由であったようだ。「飢えをしのぐために食べたことは?」との問いに対しては、長老はこれを否定した。また現在、ビアミ族はキリスト教徒となっており、人間を食べることはないという。

 だが、当時を知るお年寄りたちに取材したギボン氏はこう語った。

「奇妙なことに、ここで数週間過ごすうちにカニバリズムがだんだん普通のことのように思えてきた。もし私がここで生まれ育っていたら、彼らと同じように人の肉を食べたと思う」

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]長老ティディカワの話から視聴 - 会員登録が必要
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(尾前孝之)

カニバリズムの風習があったビアミ族