米アマゾン・ドット・コムの航空貨物事業「Amazon Air(アマゾンエアー)」が、貨物輸送を減らす計画だと米CNBC2月7日までに報じた。Amazon Airの運行事業者である米航空貨物会社エア・トランスポート・サービシズ・グループ(ATSG)が明らかにした。経済見通しの悪化に対応するためだという。

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運行便数と飛行時間削減

 ATSGによると、現在同社がアマゾンリース提供しているボーイング767-200貨物機のうち5機が2023年5~9月に契約満了となるが、アマゾンは契約を更新しない意向だという。他の4機については引き続き24年までリース調達する。

 ATSGは、Amazon Airの大部分の運行を手がけている。ATSGの顧客には独物流大手DHLもあるが、アマゾンとDHLはともに、今後の運行便数を減らし1機あたりの飛行時間も減らす予定だとATSGは説明している。

 ATSGによると、アマゾンとDHLは、陸・空の輸送や物流ネットワークを調整中だという。これにより、23年前半の米国における経済成長の減速と、消費支出の低下に対応するという。

 航空貨物運賃の指標となるTACインデックスによると、運賃は23年1月30日までの1年間で33.5%下落した。

 また、国際航空運送協会(IATA)によると、22年11月の航空貨物輸送量は前年同月比で14.2%減少し、輸送能力は同1.9%減少した。一方で、新型コロナウイルス禍からの回復で旅客需要は持ち直しているという。

アマゾンCEO、コスト削減に向け事業見直し

 こうした中、アマゾンでは、アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)指揮の下、コスト削減に向けた事業見直しを進めている。同氏は23年1月4日、計画見直しに伴う人員削減規模が1万8000人超になると明らかにした。

 アマゾンは、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)に伴う電子商取引(EC)とクラウドサービスの需要増で事業を急拡大してきた。従業員数を2年間で2倍に増やし、発送センターや仕分けセンター、宅配ステーションなどの物流ネットワークも2年でほぼ2倍に拡大した。

 だがその後巣ごもり需要が一服すると、成長は鈍化した。同社の22年1~3月期の売上高は前年同期比同7%増の1164億4400万ドル。1~3月期として過去最高を更新したものの、伸び率は過去10年間で最も低い水準となった。純損益は38億4400万ドルの赤字で、15年1~3月期以来7年ぶりの最終赤字に転落した。

 続く22年4~6月期も20億2800万ドルの赤字だった。22年7~9月期は純利益が28億7200万ドルとなり、3四半期ぶりに黒字化。22年10~12月期は純利益が2億7800万ドルで、引き続き黒字だったものの、22年の年間赤字額は27億2200万ドル(約3600億円)に上った。

拡大戦略で専用機100機

 米ブルームバーグによるとアマゾンは現在、リースと自社購入分合わせて専用機「Amazon Air」を約100機運用している。だが、最近はその余剰貨物輸送スペースを他社に貸し出すことを検討している。ハワイアラスカからの復路便にパイナップルサーモンを積載して輸送するサービスを計画しているという。事業成長が鈍化する中、貨物機の余剰スペースを利用し、収益性を高めたい考えだとブルームバーグは報じている。

 アマゾンが航空貨物事業のAmazon Airを始めたのは16年だった。21年8月には、米ケンタッキー州の航空貨物施設が完成し、業務を開始した。21年1月には、ボーイングの中型旅客機「767-300」計11機をカナダウエストジェット航空と米デルタ航空から購入した。現在はATSGのほか、米アトラス・エア・ワールドワイド・ホールディングスなどがAmazon Airの運行事業者となっている。

 20年には、コロナ禍を背景に米格安航空会社LCC)のサン・カントリー航空とも提携。「ボーイング737-800」を貨物機に改造してアマゾンの荷物を運んでいる。

 アマゾンは米ゼネラル・エレクトリック(GE)の航空機リース部門であるGEキャピタル・アビエーション・サービシズ(GECAS)とも提携し、機材をリース調達している。

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(写真:AP/アフロ)