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 アメリカ・テネシー州の非営利団体が運営する保護区では、保護した野生の鳥にリハビリを施して、再び自然へ解放する活動をしている。

 その保護区に、ペットショップから救済された1羽のムナジロガラスが暮らしている。

 世話役として働くスタッフの女性は、その年老いた飛べないカラスがとても聡明で社交的であること以外に、自分のことを鳥ではなく小さな人間と思っていることに気付いたという。

【画像】 保護区で暮らす年老いた飛べないカラス

This crow seems convinced he's a tiny human

 テネシー州にある非営利団体『アメリカン・イーグル財団』は、ワシなどの猛禽類や野生の鳥を救済し、リハビリをさせて自然へと還す活動を保護区で行っている。

 スタッフのメイシー・エヴァレットさんは、この保護区で自分がカラスと特別な絆を持つことになるとは思ってもいなかった。

 アフリカを原産とするムナジロガラスのタックは、ペットショップから救済された17歳のシニアガラスだ。

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ムナジロガラスの平均寿命は20歳なので、タックはもういい年をしたおじいちゃんです。

この保護区には、75羽の解放不可能な鳥が暮らしていますが、タックもその1羽です。

人間の世話の下で生まれたタックは、野生に解放しても生き延びることができません。

また、タックは翼と両脚がひどい関節炎で、少しなら歩くことはできますが、飛ぶことができないんです。(メイシーさん)

交流の過程でタックの聡明さを知る

 タックは、保護区にやってきた当初は怯えがちで、担当になったメイシーさんにもすぐには懐こうとしなかったという。

 だが、メイシーさんは時間をかけてタックとの距離を縮めていった。その過程で、タックはとても聡明で、社交的であることに気付いた。

タックは、複数の言葉をすぐに真似し始めました。特別な訓練をする必要はなく、タックはただ毎日私たちが使う言葉を自然に覚えていったんです。

 「ハロー」とメイシーさんが言うと、タックも女性の声真似で「ハロー」と言う。

タックは、保護区の訪問者が女性だと、紳士的な態度で「ハロー」って挨拶するんですよ(笑)

最近は、時々ウシガエルの鳴き真似もしています。(メイシーさん)
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 メイシーさんによると、周りから気を引きたい時にはいつも「What?(なに)」と口にするそうだ。

 カラスは非常に聡明であることが知られているように、タックもやはりかなり知能が高かったようだ。やがて、メイシーさんはタックに物体認識の訓練も行うようになった。

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 タックのお気に入りの小さなおもちゃをいくつか床に置き、その中からおもちゃのタイヤに触れるよう頼むと、タックは間違えることなくタイヤに近付き、くちばしで触れた。

 タイヤの位置を変えても、タックはすんなりとタスクをこなした。

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image credit: youtube

 日々の交流で、タックの聡明さやユニークな性格にとても心惹かれて、タックが大好きになったメイシーさんは、タックにそっくりな手作りのイヤリングまで手に入れ、いつも身に着けているという。

タックは自分を小さな人間だと思っている!?

 メイシーさんは、タックについてこのように話している。

保護区のほとんどの鳥は、私たち世話人が触れたり撫でたりするのを嫌がります。

ほとんどは野生に還す鳥なので、私たちも触れません。でも、タックは例外でした。頭を撫でさせてくれるのは、保護区の中でタックだけです。

タックは、なぜか他の鳥とは交流を持とうとしません。私たち人間とのみ、社交的な態度を見せるんです。

タックは、自分を小さな人間だと思っているところがあるようです。

タックと出会い、世話をする機会に恵まれたことをとても嬉しく思っています。

 時間をかけてタックの信頼が得られるよう努めてきたメイシーさんだけに、交流のなかで生まれたタックとの絆がここまで強くなったことに、大きな喜びを感じているようだ。

 ただ、メイシーさんの仕事は、他のスタッフ同様あくまでも野生の鳥にリハビリをして、自然へと還すことだ。

 メイシーさんは自然保護の大切さを、このように説いている。

野生生物を保護するという仕事は、プロに限ったことではありません。

どんな小さな行動でも、自然を救うことができるのです。
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References:Clever Pied Crow Thinks He’s More Human Than Bird/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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自分を小さい人間だと思っている飛べないカラスと絆を育む女性の物語